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無線LANルーターの設定がはじめてでもOK! RT-N66Uを設定しよう

 パソコンはもちろんのこと、スマートフォンやタブレット、テレビ、ゲーム機など、家中の機器をワイヤレスで快適にインターネットに接続できる無線LANルーター。しかし、はじめての人にとっては、その接続や設定が不安でなかなか導入に踏み切れないという人も多いことでしょう。そこでここでは、ASUSの「RT-N66U」を例に無線LANルーターの接続方法や設定方法を詳しく解説します。

無線LANルーターを導入しよう

 無線LANルーターの導入、もしくは入れ替えを考えているなら、今はちょうど良いタイミングと言えそうです。

 残念ながら消費税アップのタイミングにはもう間がありませんが、ここ数年、長らく調整が続けられてきた「IEEE 802.11ac」と呼ばれる新しい無線LANの規格がようやく正式に策定され、市場で販売される各メーカーの製品も正式な規格に対応するようになりました。

 IEEE 802.11acの特徴は、何と言ってもその速度です。実際の通信速度は製品によっても違いますが、最高で1300Mbpsと従来の規格となるIEEE 802.11n(450Mbps)の約3倍、さらに前のIEEE 802.11a/g(54Mbps)との比較では、実に約24倍も高速な規格となっています。

 スマートフォンの一部の機種でもすでにIEEE 802.11acに対応した製品が登場しており、最大で433Mbpsでの通信ができるようになっています。サイズの大きなアプリ、映画や音楽などをダウンロードしたり、撮影した写真を大量にアップロードするといった場合、通信事業者の回線では、速度が遅かったり、転送量の制限を気にしながら使わなければなりません。

 しかし、高速な通信速度に対応した無線LANルーターが自宅にあれば、快適かつ制限を気にすることなく、さまざまな機器を使えることになります。

ASUSのIEEE 802.11n対応無線LANルーター「RT-N66U」。新生活を機に高速な無線LANルーターへのリプレイスを検討してみよう

 もちろん、最新のIEEE 802.11ac対応無線LANルーターは、予算的に厳しいという場合もあるでしょう。そうした場合は、IEEE 802.11nに対応した製品を選ぶという手もあります。無線LANは、2.4GHzと5GHzという大きく分けて2つの周波数帯域で利用することができますが、もともと帯域が狭い上に機器が増えすぎてしまった2.4GHz帯は、もはや混雑し過ぎて、快適に通信することができません。

 しかし、最近のIEEE 802.11n対応製品は2.4GHz/5GHzの両方に対応しているため、混雑している2.4GHz帯を避け、空いている5GHz帯で無線LANを快適に使うことができるようになっています。

 この春こそ、ハイエンドユーザーにとっては高速なIEEE 802.11ac対応機を入手する、一般的なユーザーにとっては2.4/5GHz両対応のリーズナブルなIEEE 802.11n機を導入する絶好のタイミングと言えるでしょう。

機能が2重にならないように無線LANルーターをつなごう

 とは言え、実際に購入するとなると、ネックになるのが接続や設定です。もちろん、つなぐだけ、電源を入れるだけで使えるケースもありますが、回線環境や接続機器は家庭によってケースバイケースであることが多いうえ、無線LANルーターに搭載されているいろいろな機能を活用しようとすると、単純に設定できない場合もあります。

 では、どのように接続すればいいのでしょうか? ASUSのIEEE802.11n対応無線LANルーター「RT-N66U」を例に、いくつかの構成を考えてみましょう。

 上図は、光ファイバーなどの回線を契約した場合に標準で提供される通信機器(ONU/ルータ)に対して、RT-N66Uをどのように接続すればいいのかを4つのパターンに分類したものです。

 最近では回線事業社によって提供される通信機器もルーター機能が搭載されていることが多いため、無線LANルーターをそのまま導入すると、ルーター機能が2重に設定されてしまうことになります。

 インターネットに接続して、Webページを見たり、アプリをダウンロードする分には、ルーターの機能が重複しても、ほとんどは問題ありません。

 しかし、ルーターでは「NAT(Network Address Translation)」や「NAPT(Network Address Port Translation)」という仕組みを利用して、インターネット上で利用されるグローバルIPアドレスをLAN内で利用するローカルIPアドレスに変換します(NAPTは同時に通信に利用するポート番号も変換)。ルーターが複数台ある環境を多段NATと呼びますが、こういった多段NATの環境では変換による速度低下が発生したり、外部からのアクセスなど特定の通信がうまくできないことがあります。

 たとえば、ゲーム機を使ってネットワーク経由で対戦したり、家庭内にNASなどの機器を設置してインターネット経由でアクセスするといったことをしたい場合、ルーターの機能が重複すると、うまく動作しない可能性があります。

 このため、基本的には機器自体は2台連なっていても、ルーターとしての機能が重複しないように設定することが重要になります。それでは、各タイプをもう少し詳しく見ていくことにしましょう。

Aタイプ

 Aタイプは、もっとも単純で、しかも手間のかからない方法です。既存のLAN環境にRT-N66Uを接続し、設定画面で動作モードを「アクセスポイントモード」に切り替えます。これでRT-N66Uのルーター機能が無効になり、無線LAN機能だけを提供するアクセスポイントとして動作するため、ルーター機能の重複を避けられます。

 ただし、RT-N66Uをアクセスポイントモードに設定すると、RT-N66Uに搭載されているさまざまな機能が無効になってしまいます。インターネット経由でRT-N66Uに接続したUSBストレージにアクセスする「Cloud Disk」、インターネットからLAN内の機器にアクセスできる「Smart Access」、USBストレージとクラウド上のASUS Webstorageのデータを同期する「Smart Sync」、VPNサーバーなどの機能も無効になります。

 回線環境や標準で提供されるルーターの機種を問わず設定できますが、RT-N66Uのメリットの1つでもある豊富な機能も失ってしまうことになるので、注意が必要です。

1.標準ルーターのLANポートとRT-N66UのLANポートを接続

2.RT-N66Uの設定画面でモードをアクセスポイントモードに切替え

Bタイプ

 Bタイプは、NTT東日本のフレッツ光など、PPPoE接続(IDとパスワードを利用して接続する方式)を利用する環境向けの接続形態です。通常は、回線事業社から提供された標準のルーター(ONU兼ルーター)に、プロバイダーのIDとパスワードを登録しますが、そうではなくRT-N66Uに登録します。

 ただし、そのままでは、回線の手前にある標準のルーターが障害となり、RT-N66UからPPPoEで接続することができません。このため、標準のONU兼ルーターで「PPPoEブリッジ」という機能を利用し(通常は標準で有効になっている)、RT-N66Uから標準のONU兼ルーターを飛び越えてPPPoE接続を確立します。

 PPPoEブリッジによって、標準のONU兼ルーターをスルーして回線に接続されるため、ルーター機能はRT-N66Uのみとなり、多段NATの構成を避けられます。

 この構成を利用するには、前述したように標準のルーターからPPPoEの設定を削除し(削除できない場合はフレッツスクウェア接続などのダミーを登録)、その設定をRT-N66Uに登録する必要があります。

1.標準ルーターの設定画面でPPPoEブリッジを有効を確認

2.PPPoE接続を削除(削除できない場合はダミーを登録)

3.RT-N66UのWANポートと標準ルーターのLANポートを接続

4.RT-N66Uに接続したPCからRT-N66Uの設定画面を表示

5.PPPoE接続でプロバイダーのIDとパスワードを登録

Cタイプ

 Cタイプは、インターネット接続用のWAN側IPアドレスが自動的に付与される(DHCP)回線。もしくは、PPPoE接続の場合でも標準ルーターでPPPoEブリッジが使えなかったり、PPPoE接続用のIDとパスワードがユーザーに公開されないため、RT-N66UでPPPoE接続を利用できない場合の接続形態になります。

 標準ルーターの背後にRT-N66Uを接続し、共にルーターとして稼働させるため、前述した多段NATの構成となってしまいますが、「DMZ(DeMilitarized Zone:非武装地帯)」と呼ばれる機能を利用し、インターネット側からLANに向かって流れてくる通信をすべてRT-N66Uへと転送することで、外部からのアクセスを処理します。

 これにより、RT-N66Uの「Cloud Disk」機能やリモートアクセス機能、LAN内に設置したNASへのリモートアクセスなど、外出先から自宅に向けた通信も問題なく処理できます。

 設定が簡単で、標準のルーターでDMZを設定後、RT-N66UのWANポートにDMZで設定したIPアドレスを固定で指定するたけとなりますが、構成としては前述した多段NATとなるため、速度のロスを避けることはできません。

 また、WAN側に割り当てられるIPアドレスがプライベートIPアドレスとなるため、RT-N66UのDynamicDNSサービスを利用することができないため、後述するAiCloudの機能の一部が制限されます。

1.標準ルーターでDMZを有効化(3で設定するIPアドレスを指定)

2.標準ルーターのLANポートとRT-N66UのWANポートを接続

3.RT-N66UのWAN設定で、1でDMZに指定したIPアドレスを指定(デフォルトゲートウェイとDNSサーバーには標準ルーターのIPアドレスを指定)

Dタイプ

 最後のDタイプは、標準ルーターに「静的ルーティング」と呼ばれる機能が搭載されている場合に利用可能な接続形態となります。

 標準ルーター、RT-N66Uのどちらもルーターとして稼働させますが、RT-N66Uのインターネット接続設定で、「NAT」を無効にすることで、多段NATの構成になることを回避します。つまり、RT-N66UはNATなしのルーター環境として構成することになります。

 この形態は、設定が複雑になるのが欠点です。標準ルーターでは静的ルーティングの登録(RT-N66UのLAN側への通信をRT-N66UのWANに固定したIPアドレスに転送する設定)、RT-N66UではCタイプと同様にWAN側のIPアドレスの固定、そしてNATの無効化の設定が必要になります。

 また、Cタイプと同様にWAN側に割り当てられるIPアドレスがプライベートIPアドレスとなるため、RT-N66UのDynamicDNSサービスを利用することができません。LAN内に設定したNASなどにリモートアクセスするときなど、手動でポートフォワードの設定を登録するときも、標準ルーターに対して、RT-N66UのLAN側のIPアドレスを指定してポートフォワードを設定するなど、若干、設定が特殊になります。

 標準ルーターの中には静的ルーティングの設定ができない機種(NURO光のF660Tなど)もありますが、Cタイプのような多段NATを回避できるのがメリットです。

1.標準ルーターのLANポートとRT-N66UのWANポートを接続

2.RT-N66UのWAN設定でIPアドレスを固定で設定(デフォルトゲートウェイとDNSサーバーには標準ルーターのIPアドレスを指定)

3.標準ルーターの設定画面で静的ルーティングを設定(RT-N66UのLAN側のIPアドレスの範囲宛ての通信をRT-N66UのWAN側IPアドレス宛に転送)

4.RT-N66Uの設定画面にアクセスし、WAN設定でNATを無効化

5.ポートフォワード設定は標準ルーターに登録するが、宛先はRT-N66UのLAN側のIPアドレスになることに注意

PPPoE接続の回線はBタイプ、DHCPでIPアドレスが割り当てられる回線ではDタイプで

 以上、大きく分けて4つのタイプを紹介しました。設定が簡単なのはCタイプですが、多段NATの構成となってしまうのが欠点です。若干、設定に手間はかかりますが、PPPoE接続の回線環境ではBタイプ、DHCPでIPアドレスが割り当てられる回線では、DynamicDNSの機能が使えなくなるもののDタイプで使うといいでしょう。

ASUS製ルーターならではの便利な機能を活用しよう

 インターネット接続の設定ができたら、ASUS製無線LANルーターならではの便利な機能もセットアップしてみましょう。

 先にも少し触れましたが、ASUS製ルーターには外出先から本体に接続したUSBメモリなどのデータを参照できる「Cloud Disk」という機能が搭載されています。この機能を有効にしておくと、自宅のパソコンから保存したデータを外出先のパソコンやスマートフォン、タブレットなどからも参照することができます。

 使い方は簡単です。インターネット接続までセットアップできていれば、以下のような手順で有効にすることができます。

1.RT-N66UにUSBメモリを装着

2.RT-N66Uの設定画面にアクセス

3.「AiCloud」の設定画面で「CloudDisk」をクリックして有効化

4.「WAN」設定画面の「DDNS」タブでDDNSクライアントを有効化

5.外出先のPCなどでDDNSで取得したアドレス(xxxxx.asuscomm.com)にアクセス

6.スマートフォンにアプリをインストールしてアクセス

 ただし、前述したようにAタイプではCloud Diskの機能自体を有効にできません。またBタイプ以外の形態では、WAN側にグローバルIPアドレスが割り当てられないため、手順4以降のDynamicDNSの機能を設定することができません。WAN側のIPアドレスを直接指定してアクセスしたり、インターネット上のDynamicDNSサービスに手動で登録したり、プロバイダーなどがオプションで提供しているDynamicDNSサービスを利用するといいでしょう。

 また、Dタイプの形態では、標準ルーターでポートフォワードの設定が必要になります。Cloud Diskでは、ポート443とポート8082を通信に利用するため、これらのポートの転送先をRT-N66UのIPアドレスに設定しておきましょう(タイプCはDMZの設定をしているため特別な設定は不要)。

Dタイプでは標準ルーター側で、ポートフォワードの設定が必要。RT-N66UのWAN側のIPアドレスを指定して443と8082を転送する

 以上、ASUSの無線LANルーター「RT-N66U」を利用したインターネット接続の方法と「Cloud Disk」という独自機能の設定方法を紹介しました。ここではRT-N66Uを取り上げましたが、ほぼ同じファームウェアが稼働する上位モデルの「RT-AC68U」も、ここで取り上げた方法で設定することができます。

 無線LANルーターは、WPSなどのボタン設定の登場により、無線部分の設定は手軽にできるようになりました。しかし、有線LANの設定は、利用する回線や標準で提供されるルーターの機種によってさまざまです。ここで代表的なケースを取り上げましたので、本コラムを参考に無線LANルーターの導入にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。