被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

それってネット詐欺ですよ!

可愛い子犬とイケメンに注意! コロナ禍で弱った心を狙うネット詐欺が急増中

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の影響で、人との接触や外出する機会が減り、インターネット上で癒やしを求める人も出てきていますが、サイバー犯罪者はそんな隙も見逃しません。今、世界中でコロナ禍で弱った人を狙うネット詐欺が急増しているのです。

 例えば、米国では家にいる時間が長くなったことからペットを飼おうとする人が増えました。そうした人たちを狙った「ペット販売詐欺」では、ネットショップで子犬を購入させる際、餌やケージのほか、航空料金を含めた高額の輸送費も請求してきます。さらには、なぜか「近くの空港に着いたが追加料金を支払わないと空港を出られない」として、追加でお金を請求してきます。もちろん、お金を支払っても子犬は届きません。

 12月1日、米ペンシルバニア州の司法長官は、オンライン小売業者を騙るペット販売詐欺師をはじめ、さまざまなネット詐欺について注意喚起を行いました。もし、ペットを飼うなら地元のシェルターや、販売業者と直接取引するようにアドバイスしています。

 しかし、犯人に直接会いたいと伝えても「COVID-19による制限があるので、会うことはできない」とかわすのです。ペットショップではなく、養子縁組を手配すると申し出て手数料を取らない、と謳うこともあるそうです。しかし、サイバー犯罪者はどこかでお金を儲けなければいけません。典型的な手口としては、出荷した後にペットが体調を崩したので獣医に診せる必要がある、と言ってくるパターンがあります。このケースでは、「ペットが到着したら返金するので、一時的に支払いをしてくれ」と言ってきますが、お金を支払った段階で連絡が途絶えます。そもそも、そのペットは存在しないのですから。

販売サイトに可愛いペットの写真を載せて詐欺を仕掛けることがあります

 イギリスは日本の半分ほどの人口ですが、1日にCOVID-19の感染者が5万人を超え、ロックダウンも3回行われるなど未曾有の事態に直面しています。そしてBBCは、そんなコロナ禍において「ロマンス詐欺」が大幅に増加していると報じました。

 具体的には、医者や軍人のイケメンが、ネット上で熱烈に口説いてくるという詐欺です。主に女性をターゲットにしており、SNSやメールでやり取りし、一定の信頼を得た後に、何らかの理由を付けてお金を振り込ませようとするのです。

 例えば、BBCで紹介した事例では、ウェールズ西部に住む女性が出会い系サイトで出会った男性に恋をしました。彼は将来、世界中を一緒に旅行する話をしてくれたそうです。そして色々な口実でお金を振り込ませました。この件の被害額は不明ですが、英国のロマンス詐欺の被害額は平均1万ポンド、約140万円に上るそうです。

 さらに、彼女は相手から振り込まれたお金を指示通りにヨーロッパ中の口座に振り込む手伝いもしました。これは、「コロナ・マネーミュール」というネット詐欺で、いわゆるマネーロンダリングの一種です。当然のように、彼女の銀行口座は凍結されてしまいます。

 送金し始めてから半年後、相手の写真を検索した彼女は、犯人がネット上の写真を拾って悪用していたことに気付き、崩れ落ちてしまいました。

 これも、コロナ禍で人とのつながりを求める心を狙い撃ちしたひどいネット詐欺の事例と言えます。

 日本ではネット上のみで動物の売買契約を成立させることはできないので、我々DLISにペット販売詐欺の相談はまだありません。しかし、今後は例えば「コロナ禍における緊急措置として、厳重な保護を条件にネット販売が認められました!」などと嘘をつく手口が出てくるかもしれません。ペット販売詐欺を日本で流行らせないためにも、事例を知り、いろいろな人と共有することが重要です。

 ロマンス詐欺も手口を知っておくことが効果的な対策です。犯人と信頼関係ができてしまうと、周りが何を言っても耳を貸さなくなってしまうのです。

 コロナ禍でネット詐欺も増加しているので、これまで無事だった人のところにも詐欺メール・メッセージが届くかもしれません。ぜひ、デジタルリテラシーを高め、被害に遭わないようにしてください。

あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。

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