被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

郵便受けの確認は欠かさずに!

クレジットカードが届くのを待っていたら、いつの間にか不正利用された

 2019年、東京都に住む女性がクレジットカードを契約したものの、いくら待っても届かないので確認したところ、すでに受け取り済みの扱いになっていました。そして、クレジットカードは家電量販店などで約50万円の買い物に不正に利用されるというトラブルがありました。

 クレジットカードを発行する際、クレジット会社に申し込みをして審査を受け、問題がなければクレジットカードが送られてきます。その際、間違いなく本人が受け取れるように、郵便受けなどに投函することはありません。とはいえ、クレジットカードは申し込んでからいつ届くのか明確に分からないので、昼間は出勤している人などは受け取れないことも多いでしょう。家にいない場合は不在票が残されますが、再配達依頼をしたり、不在票を持参して窓口で受け取ることができます。

 ここに目を付けた犯罪者は不在票を盗み、偽造の身分証明書を作って窓口に行き、クレジットカードを手に入れる手口を思いつきました。簡易書留で郵送された場合は配偶者などを装って受け取ってしまうのです。

 割り箸に両面テープを貼って、郵便受けから郵便物を盗むという昭和の時代から存在する手口が使われやすいですが、今でも被害は発生しています。

 よりにもよって自分がクレジットカードを申し込んだタイミングを狙われるわけはない、と考える人もいるでしょう。その通り、犯罪者は特定の人を狙っているわけではありません。集合住宅などでチラシを投函する人を装い、片っ端から郵便受けを漁っているのです。100軒でも1000軒でもチェックし、1枚でも使えるクレジットカードが手に入れば儲けものというわけです。

郵便受けを狙った手口でクレジットカードが不正に利用される恐れがあります(写真はイメージです)

クレカ不正入手後、宅配ボックスを利用して通販の商品を受け取り

 郵便受けを漁られるのは、クレジットカードを発行するときだけではありません。クレジットカードを不正に入手した犯人は通販で換金性の高い商品を購入します。しかし、自分の家に配達させては、被害届が出されたときにすぐに逮捕されてしまいます。

 そこで、宅配ボックスが設置され、郵便受けの不在票を盗めそうなマンションも利用するのです。住民が働きに出ているような時間帯を指定して購入した商品を配送させ、その時間帯に郵便受けから不在票を盗み出して、宅配ボックスの番号と設定された暗証番号を確認して商品を手に入れるのです。

 2021年6月、東京・大森警察署は、通販で8万5000円の電子部品を購入してマンションに配送し、宅配ボックスを悪用していた男を逮捕しました。容疑者の自宅からは不在票が900枚も見つかりました。

 郵便受けには個人情報が集ります。電気やガスの領収書から取引している銀行や証券会社、家族構成、職業など、いろいろなことがわかります。これらの情報を集め、銀行口座を勝手に開設し、クレジットカードまで不正に取得したケースもあります。

 これらの被害を回避するには、郵便受けは必ずカギがかかった状態にすることはもちろん、中身を覗かれないようにガードを付けることも有効です。そして、手軽な上に効果が大きいのが、毎日チェックして郵便物を取り出すことです。きちんとしていると隙がないと見られますし、郵便物がたまっていればルーズで盗みやすいと判断されます。また、郵便受けの近くに監視カメラを付けるのも効果があるでしょう。

 クレジットカードを発行した後は、積極的に郵便受けをチェックするようにしましょう。最近は昔のように数週間もかからず、翌日~3営業日くらいで発行するところも増えています。

 今回はリアルな防犯対策ですが、ネット詐欺の一部に組み込まれることもあるので覚えておいてください。まずは、郵便受けを常に空っぽにするところから始めましょう。

あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。

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