テレワーク百景

第2回:沖縄県

花粉から逃れ「2月の沖縄」でテレワーク、現地滞在のノウハウ全部見せます

 筆者は年に数回、日本の各地に遠征しつつ、昼間は観光、夜はホテルで作業というワークスタイルを繰り返している。もともとは仕事をしながら同時に旅行をするための工夫だったが、春先は「花粉から逃れられる」という利点もあり、2月に沖縄、3月に北海道で仕事を行うのが、習慣として近年はすっかり定着している。

 「数週間単位でホテルで仕事」というスタイルはやや独特ではあるものの、いわゆるリモートワーク/テレワークとは、ノウハウとして共有できるところは多いと考えられる。今回はそんな筆者のワークスタイルと、毎年2月に訪れる沖縄という場所について、どこがテレワークに向いているか(あるいは向いていないか)を紹介する。

3月上旬現在、新型コロナウイルスの影響により、リモートワーク/テレワークについては“在宅勤務”による導入ニーズが拡大しています。一方、本記事で紹介するのは、観光などを兼ねた旅行先・長期滞在先でのリモートワーク/テレワークの実践例です。来年の花粉シーズン対策などに参考にしていただければ幸いです。

なお、沖縄でのテレワークに関しては、内閣府でも観光・産業振興施策の1つとして推進しており、観光や過ごしやすい気候などに加え、花粉症が少ないこともアピールしています。

そもそもなぜ「2月の沖縄」?

 もともと筆者が2月に沖縄に通うようになったのは、プロ野球のキャンプを見るという目的があってのものだ。プロ野球は2月になると、多くの球団が気候の温暖な沖縄でキャンプインし、紅白戦や練習試合、オープン戦を行ったのち、3月になると場所を本土に移して残りのオープン戦を消化、そしてシーズンが開幕するという流れになっている。

 昭和から平成にかけては、キャンプ地は沖縄だけでなく、オーストラリアやアメリカで行われることも多かったが、近年は多くの球団が沖縄に集結するようになり、練習試合の数も格段に増えた。シーズンを待ちきれないプロ野球ファンにとっても、この時期のキャンプ訪問、および練習試合やオープン戦の観戦は、一大イベントとして定着している。

 キャンプ地には、選手にサインをもらう目的で来ているファンも多いが、筆者の目的はもっぱら練習試合の観戦で、練習試合が連日のように行われるようになる2月中旬に沖縄に渡り、車であちこち移動しながら試合を観戦し、夜はホテルで仕事を行うルーチンをこなしている。2月下旬になって練習試合が減り、キャンプも打ち上げの時期に入ると、そろそろ引き上げようという頃合いになってくる。

那覇空港に掲げられている横断幕。毎年、沖縄入りするときにこれを目にするのがお決まりになっている

 ところで冒頭にも書いたように、この時期に沖縄を訪れることには、もう1つ見逃せないメリットがある。それは花粉から逃れられることだ。東京では例年だいたい2月中旬に差し掛かると、筆者は花粉が原因とみられる、体のだるさや眠気を感じられるようになる。しかし沖縄ではそれが全くないため、高いパフォーマンスで仕事をこなすのに適している。

 現地で作業環境を構築するのは手間もかかるが、東京からの片道航空券は1万円を切ることも多く、また、食費などのコストもかかりにくいので、いったん環境を構築し、2~3週間という長い期間にわたって滞在するにはもってこいだ。今年は新型コロナウイルスの影響でマスクを着用していたが、例年であればマスクも全く不要というのは、実にありがたい。

ここ10年ほどは、球場の新設やリニューアルも相次いでいる。これは北海道日本ハムファイターズが今春キャンプから使用するタピックスタジアム名護
横浜DeNAベイスターズが使用するアトムホームスタジアム宜野湾。今年から電光掲示板が新設されたほか、隣接エリアに室内練習場(多目的運動場)も新築された

作業用のディスプレイは「現地で買って、現地で売る」

 筆者は自宅では、ノートPCを核にマルチディスプレイ環境を構築しており、メインのノートさえあればどこでも自宅と同じ環境で作業が行える。とはいえ約2~3週間にもわたって同じ施設で作業を行うならば、もう少し環境の充実は図りたいところ。そうしたことから、毎回必ず用意しているのが外部ディスプレイだ。

 その調達方法はというと「現地で買って、現地で売る」というものだ。以前は現地宛てにディスプレイを発送していたが、なにせ都内から沖縄に宅配便で送り、さらにそれを送り返すとなると、往復で5000円程度かかってしまう。梱包の手間もかかるし、破損や故障も心配だ。また、使用中のディスプレイを取り外して送るとなると、その前後の期間、自宅での作業が一時的に行えなくなるという問題もある。

 結果的にたどり着いたのが、ディスプレイを現地で調達し、そして東京に戻るタイミングで現地で売却する方法だ。例えば今年の場合、中古品を現地で購入し、それを最終的に同じ店に売却したのだが、購入時価格が8800円、買取価格が5600円だったので、かかったコストは1日あたり300円ちょっとだ。往復送料より安い上、梱包や発送の手間もかからず、破損の心配もないとあって文句なしだ。

宿泊先での作業環境。ディスプレイは現地で購入したBenQの24型「G2420HD」。フルHDかつHDMI端子搭載で8800円
本来であればマルチディスプレイにしたいところだが、優先順位としてはあくまでも大画面を使うことにあるので、今回はノートPCは脇へ追いやっている

 ちなみに現在のやり方にたどり着くまでは試行錯誤の連続で、ある年は現地で購入したあと自宅へ送り返し、別の遠征に使おうとしたのだが、実際にはなかなか使うタイミングが訪れず、1年後にまた沖縄に送る羽目になってしまった。使いもしないディスプレイを1年間放置しておくというのは、はっきり言って無駄である。ということで、現地で売却するのが最適という結論に落ち着いて今に至っている。

 また、現地で購入するのではなく、Amazonで購入して宛先を沖縄にする方法も考えた。送料を節約するには最適だが、なにせ注文から到着まで5~6日かかるので、それを見込んで事前に発注しておかなくてはならず、そうなると何らかの事情で遠征自体が取りやめになった場合に、ディスプレイだけが沖縄に届いてしまうことになる。価格的にもそれほどメリットがなく、現地購入のほうがよいという判断で取りやめになっている。

以前まで新品のディスプレイを調達するのに利用していた、那覇市内のグッドウィル。常にディスプレイの特価品があるので重宝する

荷物は宅配便で現地に送ってしまうスタイル

 このほか、現地での快適なPC作業に欠かせないのは、キーボードとマウス、さらにネットワーク環境だ。キーボードとマウスについては、普段使っているのと同じセットをもう1組用意し、自宅からあらかじめ現地宛に発送して使っている。

 ディスプレイと同様、キーボードやマウスも現地調達にすればよさそうに思えるが、サイズと解像度さえ条件に合致していれば概ねハズレはないディスプレイと違い、キーボードとマウスはたまたま購入した品が手に馴染むとは限らない。パフォーマンスが落ちると元も子もないので、自宅と同じ環境を再現するようにしている。

 話が前後するが、荷物は衣類なども含め、あらかじめ宅配便で現地に送るのが筆者のスタイルだ。手荷物をなるべく軽くしたいこと、また、空港の手荷物検査で取り出す手間を減らすためにも、バッテリーを内蔵しているハードウェアを除き、先に送ってしまうようにしている。宿泊先が宅配便の受け取りを行っていない場合は、現地の宅配便の集荷センターで受領するなど徹底している。

キーボードとマウス(およびハブ)は、自宅で利用しているのと同じセットをもう1組用意し、今回のような遠征時に先に現地に送っている
USB PDに環境を統一したことでノートPC、スマホ、タブレット類の充電は非常に容易になった。ポート数がもう少し多い充電器が登場すれば言うことはない
沖縄の気温上、USB扇風機もあったほうがよいアイテムの1つだ

ホテルのネット回線は、Wi-Fiではなく「有線LAN」が重宝

 もう1つ、重要なのがネットワーク環境だ。滞在先のホテルで作業を行うことから、ホテル据え付けのネットワーク環境を利用することになるが、ホテルが有線LAN環境を備えていれば、なるべくそちらに自前のWi-Fiルーターを接続して使うのが理想だ。

 というのも、ホテル備え付けのWi-Fiを使うとなると、持ち込むデバイス全てにWi-Fi設定をしなくてはいけないからだ。iOSデバイスならば1台でWi-Fiを設定するだけで共有できるが、他のデバイスでは1つ1つにパスワードを入れなくてはならない。筆者の場合、航空機内で使う電子書籍端末を合わせると、Wi-Fiデバイスは5つは携行するので、設定の手間はネックとなる。

 その点、有線LANがあれば、手持ちのデバイスとのWi-Fi設定をあらかじめ済ませたWi-Fiルーターをつなぐだけで、全デバイスが一気にネットワークに接続できるようになる。最近は有線LAN環境を備えないホテルも増えつつあるが、筆者としては宿泊先を決める時の決め手になりうるポイントだ。

宿泊先を選ぶときに避けるべきポイントとは?

 沖縄が他地域に比べて長期滞在に向いているのは、ウィークリーマンションやマンスリーマンションの選択肢が充実していることだ。割安に借りられるのはもちろん、調理器具が用意されており、食材を用意すれば自前で料理もできるのもプラスだ。部屋に洗濯機も据え付けられているので、こまめに洗濯をしていけば、着替えには困らない。

 ただし、こうしたタイプのウィークリーマンションは、賃貸マンションへと業態転換されて消滅するケースが、沖縄においては少なくない。筆者は過去7年で同様の物件を3つ渡り歩いているが、以前の2軒はいずれも業態転換で消滅している。観光客が減ってホテルの需要が少なくなれば、今後もこうしたパターンは増えるはずで、なるべく決まった宿で作業に専念したい場合はやや痛い。

今回筆者が宿泊したウィークリーマンションタイプの物件。築2年と新しい物件だが、キッチンなどが付属して1泊6000~6500円程度
沖縄は洗濯機を室内に設置した物件が多く、コインランドリーなどに比べて小回りがきくほか、費用的にも安上がりで済む
書斎に相当するスペースも用意されていた。やや奥行きがないのが使いづらいが、作業には支障ない
今回の物件はスマートロックを採用。内側にチェーンロックがないのはやや不安だ
メールで受け取ったURLにアクセスして解錠する。このほか暗証番号でも解錠可能だ

 ところで、筆者が沖縄で滞在先を探す場合、まさに「沖縄ならでは」という条件が1つある。それは主要な幹線道路、具体的には国道58号線沿いの物件は、極力選ぶべきではないということだ。その理由は、こうした主要な幹線道路沿いは夜になると暴走族が騒々しく、夜間の作業に支障をきたすということだ。

 筆者は全国ほぼ全ての都道府県で、同様のスタイルで仕事をした経験があるが、沖縄ほど野放しになっている例を知らない。どれだけ築年数が新しく、交通や買い物が便利なホテルでも、主要幹線道路に面した物件は避けるというのが、沖縄でテレワークを繰り返し行ってきた筆者が身に付けた知恵の1つだ。ちなみに「幹線道路に面しているが部屋は逆向き」もNGである。必ず、区画的に1つは奥に入った施設を選ぶのがポイントだ。

 ちなみにホテルではなくカフェでの作業については、沖縄ではあまりメインではない。車移動が主ということもあり、コワーキングを意識して電源を用意しているカフェ自体が少なく、入ってみたら観光客向けのカフェだったということも多い。どうしてもカフェでの作業が必要な場合、ある程度場所に目星をつけておかないと、作業場所難民になりかねない。

ホテル外で筆者がよく利用するのが、宜野湾市内にある「CAFE UNIZON(カフェユニゾン)」。Wi-Fiおよび電源が完備されており作業に向いている。社会人のほか学生の姿もよく見かけるが、基本静かなのもポイント

沖縄の気候はメリットにもデメリットにもなる

 沖縄の温暖な気候は、現地で作業を行うにあたってメリットになるが、デメリットになる場合もある。2月という時期限定になるが、沖縄の気候事情を紹介して本稿の締めにしたい。

 東京ではこの時期、外出にあたってはコートが必須で、多くの場合はマフラーも欠かせないが、沖縄は日中はTシャツ1枚でも行動が可能、ホテルでもせいぜい長袖のシャツがあれば十分だ。衣類がかさばることなく、また、軽装ゆえ洗濯が容易というのは、長期滞在にあたっては大きなメリットだ。

2月の沖縄本島の平均気温は15~17度、最高気温は20度と、概ね東京の秋口程度の気温。ハイビスカスが咲いている姿もあちこちで見かける
日差しは強く、快晴日だと、一日気を抜いただけでこんがり焼けることになる

 もっとも海沿いのエリアでは、強風で体温を奪われることも多いほか(これは主に野球観戦時の問題である)、夜になると気温が下がり、Tシャツ1枚ではガタガタ震えることもある。スコールにもたびたび遭遇するので、フードが付いたウィンドブレーカーを携行するのは欠かせない。万が一を考えると、そこそこの荷物量になることもしばしばで、この点は逆にデメリットと言える。

 特に今年は、筆者が滞在した約2週間は、Tシャツ1枚で車の窓を全開にして走っても寒くない日もあれば、東京にいるのと変わらない服装でマフラーを巻いてもまだ寒く、暖房を入れることを余儀なくされる日もあるという、極端な温度変化に見舞われた。例年に比べても極端な部類で、毎年こうではないのだが、テレワークの滞在先として考えるのであればこの点は、1つのネックとなるだろう。

今年は新型コロナウイルスの影響もあり、那覇市内でもアジア系観光客はほぼ皆無という状況。観光客もマスク姿が目立つ
現地での移動に車は欠かせない。筆者のように現地でディスプレイを購入したり、宅配便の受発送をするとなればなおさらだ

 ただ、(今年は新型コロナウイルスの影響でメリットが失われてしまったものの)花粉とは無縁でマスクが不要なこと、航空券のチケット代はもちろん宿泊費のコストも安いこと、また、同じく花粉の心配をしなくていいこの時期の北海道に比べると食費がかかりにくい点など、長期滞在を前提とするのであれば、メリットも多い。

 ホテルから出ずに室内作業がメインになるならば、前述の気温の上下もあまりクリティカルな問題にならないので、毎年この時期に花粉から逃れるための滞在先を探している人には、選択肢の1つとして検討することをおすすめしたい。