イベントレポート

IPv6 Summit in TOKYO 2018

「AbemaTV」がIPv6配信を近く開始、IPv4よりも高速なサービスが提供可能に!?

 インターネット技術者における毎年恒例のカンファレンス「Internet Week 2018」が、11月27日~30日に開催される。これに先立ち26日、併催イベントとして「IPv6 Summit in TOKYO 2018」が一足早く開催された。開会前に行われた報道関係者向けの説明会では、日本のインターネット接続環境におけるIPv6普及率の最新データが報告されたほか、動画サービスの「AbemaTV」がIPv6対応を表明したことなど、コンテンツサービス側の動きも紹介された。また、基調講演では、国内IPTVサービスの草分け「ひかりTV」におけるIPv6への取り組みについても語られた。

(向かって左から)IPv6普及・高度化推進協議会専務理事の江崎浩氏(東京大学大学院情報理工学系研究科教授)、同じく常務理事の中村修氏(慶應義塾大学環境情報学部教授)

「フレッツ 光ネクスト」網のIPv6普及率、54.7%に

 IPv6普及・高度化推進協議会専務理事の江崎浩氏(東京大学大学院情報理工学系研究科教授)によると、NGN(NTT東西の光ファイバー回線「フレッツ 光ネクスト」網)におけるIPv6普及率は、2018年6月に52.8%と半数を超え、同9月では54.7%に達したという。

 また、携帯キャリア3社(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)のモバイルデータ通信サービスにおいても、2016年下期よりIPv6のデフォルト提供が順次進められており、2018年7月1日時点で17.1%に達したと報告。インターネット接続サービスにおけるIPv6対応が着実に進んでいることをアピールした。

 一方、今後はコンテンツサービスにおける対応の進展が期待されている中、動画サービスの「AbemaTV」が2018年12月~2019年1月をめどに、IPv6による動画配信を開始する予定であることが紹介された。先週行われた総務省の委員会において表明があったという。

 動画サービスではハイパフォーマンスなサービスを大量のユーザーに提供することが求められるが、IPv6によるインターネット接続環境に対しては、特にIPoE方式の接続サービスを使った場合にIPv4よりも高速なサービスを提供できるとの側面が認識されつつあるという。日本においては、こうした高速サービスへのニーズに対応するという側面において、コンテンツサービス事業者がIPv6対応に動くインセンティブが存在するという。

「ひかりTV」では、前身の「4thMEDIA」時代からIPv6配信

 「IPv6 Summit in TOKYO 2018」では、株式会社NTTぷらら代表取締役社長の板東浩二氏が「NTTぷららにおけるビジネスとIPv6への取組」と題して基調講演を行った。

株式会社NTTぷらら代表取締役社長の板東浩二氏
「ひかりTV」のサービス概要

 板東氏は、“NGNのキラーサービス”として2008年3月末に登場した「ひかりTV」のテレビ向けサービスについて、その前身である「4thMEDIA」の2004年のサービス開始当初から、NTT東西のフレッツ網に構築されたIPv6の専用網を介して提供されていることを説明。板東氏によると、同社の動画サービスのコンテンツ拡充を目指す中で米国のハリウッドとも交渉した中で、ハリウッド側からの条件の提示された項目の1つとして、クローズドネットワーク内での配信というものがあったという。それを実現するためにNTT東西に構築してもらった専用網が、IPv6だったということだ。

 しかしIPv6を使ったことで、加入者宅内のテレビやチューナーまでNATなしで直接IPv6で配信できるとともに、マルチキャスト配信により放送サービスも効率的に行えるといったメリットがあるという。また、地デジ再送信サービスにおいてはQoSが必要となるが、NGNが備えているIPv6による優先制御により安定して配信できることも指摘した。

 27日に開幕するInternet Week 2018の会場は、ヒューリックホール&ヒューリックカンファレンス(東京都台東区浅草橋)。各セッションへの事前参加申し込みはすでに締め切られているが、空席のあるセッションについては当日の申し込みも可能だ。会場受付にて27日9時より、先着順により受け付ける。

「IPv6 Summit in TOKYO 2018」「Internet Week 2018」の会場、ヒューリックホール(東京都台東区浅草橋)

INTERNET Watchでこれまで掲載した「Internet Week」関連記事のバックナンバー(2009年以降)は、下記ページにまとめている。