イベントレポート

アドテック九州

「逆張り」「相互補完」――LINEとTwitterはお互いをどう見てる?

 デジタルマーケティングのカンファレンス「ad:tech Kyushu 2013(アドテック九州)」で5日、Twitter Japanのディレクターを務める味澤将宏氏やLINE取締役の出澤剛氏が登壇。両サービスを活用したマーケティングを展開するグランドデザイン&カンパニー代表取締役社長の小川和也氏、アジャイルメディア・ネットワーク取締役COOの上田怜史氏を交えて、「ソーシャルメディアの最新潮流」と題したパネルディスカッションを行った。

左からアジャイルメディア・ネットワークの上田氏、グランドデザイン&カンパニーの小川氏、LINEの出澤氏、Twitter Japanの味澤氏

 以下、主な発言をまとめる。モデレーターはBBDO J WESTメディア局局長の小柳俊郎氏が務めた。

複数のソーシャルメディアを使い分ける消費者

Twitter Japanの味澤氏

小柳:野村総研が2012年9月に発表した調査によれば、ソーシャルメディアのユニークユーザー数は約2600万人。この数字をTwitterとしてはどのように見ているか。

味澤:Twitterはグローバルのユニークユーザー数は公表しているが、日本は非公表。日本については去年から今年にかけてグローバルの成長率を上回っていて、アクティブユーザー率も高い。

出澤:約2600万人の中にLINEのユーザー数は含まれていない。LINEをソーシャルメディアに含めるかどうかは置いておいて、LINEの国内ユーザーは4500万人に上り、このうち約2300万人が毎日使っている。

小川:ユニークユーザー数は肌感覚でもっと増えている。単体ではなく複数のソーシャルメディアを使っているユーザーも多い。むしろ、1つのソーシャルメディアしか使っていないという人は減っている気がする。

上田:今後もユニークユーザー数は増えるだろう。ユーザーは複数のソーシャルメディアの使い分けをちゃんとしている。そのことを企業側としても理解しなければならない。

米TwitterでLINEに関する報告会が開かれる

LINEの出澤氏

小柳:ソーシャルメディアのプラットフォームについて話を移すが、TwitterはLINEをどう見てるのか。

味澤:いきなり確信めいた話(笑)。Twitterをソーシャルメディアでどのようにくくるかという話もあるが、社内的には「リアルタイムの情報ネットワーク」という位置付け。理由としては、Twitterは知り合いだけの「ソーシャルグラフ」だけではなく、興味でつながる「インタレストグラフ」で構成されているから。

 LINEについては、日本だけでなく海外でも伸びている。私もサンフランシスコのTwitter本社で役員に「LINEってどうなんだ?」と聞かれ、これまでに5回くらいプレゼンしている。LINEのユニークなところは基本機能はSkypeと近いが、日本のユーザーに受け入れられるように作り込み、その結果として他国でも伸びている。

小柳:LINEとしてはTwitterをどう見ている?

出澤:LINEができたのはTwitterとFacebookへの逆張り。コインの表と裏の関係性にある。TwitterとFacebookのおかげでネット上でコミュニケーションが取りやすくなったが、オープンなコミュニケーションの裏側にはクローズドなコミュニケーションもある。LINEは、そういったコミュニケーションがネット上にはないという発想があって作ったもの。LINEユーザーの多くはTwitterを使っているし、Twitterで情報発信するとLINEのユーザーが動くことも実証されていて、相互補完の関係にある。

「次に来る」ソーシャルメディアに振り回されるな

グランドデザイン&カンパニーの小川氏

――小川さんと上田さんはいろいろなプラットフォームを使ってサービスを提供しているが、印象に残っているプラットフォームは?

小川:2009年暮れに『ソーシャルメディアマーケティング』という本を書いたが、その際にはTwitterがメインだった。その後、FacebookやLINEが出てきた。今も話があったが、TwitterとLINEは補完関係にあり、前者はオープン、後者はクローズド。我々は特定のプラットフォームに依存せずに、それぞれの特徴を踏まえたプランニングをしている。

上田:よく「次に何が来る?」と聞かれるが、その質問は本質を突いていない。新しいプラットフォームを「広告媒体」と考えると、新しいものに振り回されてしまいがち。本質はプラットフォームにいる人。ちゃんとブランドについて語ってくれる人がどのプラットフォームで活性化しているかを見るべきだ。

味澤:米国の大手ブランド企業の担当者と会って感じるのは、「ソーシャルマーケティングマネージャー」というポジションが確立していること。彼らは、自分の企業に合うプラットフォームを選ぶのが基本姿勢。九州だから言いますけど、日本の広告代理店は流行りものを追いかけるだけではいけない。

テレビCMと連動するオリジナルスタンプ配布へ

アジャイルメディア・ネットワークの上田氏

小柳:ソーシャルメディアとマスメディアの関係性についてはどう考える?

味澤:Twitterはテレビとの関係性が強い。日本でも昨年後半から顕著なのが、Twitterを「セカンドスクリーン」としてテレビを見るのが浸透しつつある。テレビ局もTwitterを番組に取り入れるのが加速している。その裏側には視聴率低下がある。Twitterを組み合わせることでリアルタイムに見る価値を上げていこうとしているようだ。

 米国ではNielsenと提携し、「ソーシャルTV視聴率」という独自のデータを今秋から提供する。日本ではヤフーがTwitterのデータを活用し、ツイート数が多いテレビ番組を発表している。テレビ局からはWin-Winの関係になれるとよく言われている。

出澤:LINEとしては、テレビ番組の公式アカウントを展開している。公式アカウントは短期間で多くのユーザーと「友だち」になることができ、ある番組は100万人以上の「友だち」に情報が届く。現時点ではメルマガ的な一方的な情報発信だが、1〜2カ月後にはLINEで意見募集できる仕組みを導入する予定だ。ただし、LINEの方針としては、オープンなソーシャルメディアと異なり、個人のやり取りを分析することはない。

 もう1つは、テレビCMと連動したLINEのスタンプも提供する予定だ。我々は4月から、ペットボトル飲料に付いているシリアルコードをLINEで登録するとオリジナルのスタンプがもらえる「LINEマストバイ」という取り組みをやっていて、この仕組みをテレビCMにも応用させる。

Twitterの「逆張り」するのがLINE

モデレーターを務めたBBDO J WESTメディア局局長の小柳俊郎氏

小川:最近目立つのが、ソーシャルメディアへの投稿がマスメディアに取り上げられて拡散するケース。例えば、安倍首相がFacebookのみで発信したことがマスコミに取り上げられると、テレビ局が報じた情報がFacebookでも広がる。元来、ソーシャルメディアとマスメディアは補完関係にある。

味澤:テレビは大量のデータを持っていて、それを整備したのがメタタグ。ソーシャルTV視聴率については、番組のハッシュタグが付いたツイートを収集するだけでなく、「特定の時間帯にこのキーワードをツイートしたらこの番組を見ている」といったように紐付けている。

出澤:LINEはユーザーの投稿を解析しない方針だが、問い合わせが多いのは事実。同様に、やっていないのはAPI解放。すべてにおいてTwitterの逆張りをしているのがLINE(笑)。LINEの公式アカウントは大手で月額300万円ぐらいするが、代理店からは「金をとるのか」といった批判もあった。しかし、LINEがクローズドであるがゆえにノイズがない世界なので、広告効果も高い。

上田:ソーシャルメディアのアカウント開設ブームが一巡して、役割や目的、貢献度が問われ始めている。その中で、活性化しているファンを見つける企業が増えている。例えば、ケンタッキーフライドチキンはFacebookに10万人近くのファンがいる。診断アプリなどを使って活性化しているファンを見つけ、リアルなミーティングに招待して商品開発につなげている。LINEについては、ユーザー体験を損なわない形でAPIを公開してくれれば。

小川:私もそこは思う。

ネット選挙解禁、政治家の使い方次第で有権者がドン引きすることも

小柳:ソーシャルメディアを使う生活者の行動は今後どう変わるかを聞きたい。

味澤:日本でもネット選挙が参院選から始まる。米国では去年、大統領選挙があり、まさにTwitterやFacebookが使われたが、民意を反映することにソーシャルは向いている。特にTwitterでは大統領選挙のディベートがあったときに、リアルタイムでオバマの発言で印象がプラスに変わったなどと分析している。米国はほとんどの政治家がTwitterやFacebookを使っている。情報発信ツールとして使い始めると民意が反映しやすくなるので、日本でも政治家に始めてもらえれば。

出澤:僕はツール1つで世の中が変わらないと思っていて、より効率的で便利になるというくらい。LINEがアカウントを展開しているのは、これまでDMやチラシを送っていたのをLINEでやってみてください、というだけのもの。広告手法として到達率が高いので使ってみてくださいと店舗に提案している。例えば、横浜のハンバーグ屋では約200人にクーポンを配信したら50人が実際に来てくれた。来店率25%というのはなかなかない数字で画期的なことが起きている。

小川:ネット選挙解禁に違和感がある。ソーシャルを勘違いしている向きもある。広報や広告宣伝ができる場所がネットに広がったというのでは、宣伝カーがネットに増えるだけ。例えば、政党がTwitter的な使い方でLINEに投稿するとどうなるかなど、ソーシャルメディアごとにコミュニケーション設定を分けて考えなければ有権者がドン引きする。

(増田 覚)