インタビュー

「MUFGコイン」は今年どう進化した? 「CEATEC JAPAN 2018」のMUFGブースには“情報銀行”も登場

奨学金や家電連携も「MUFGコイン」で、移動ATMや「VR株取引」も展示予定

 「CEATEC JAPAN」が2016年に“CPS/IoT Exhibition”へと位置付けを変えてから、今年で3年目を迎える。そのなかで、CPS/IoT Exhibitionの“ショーケース”ともいえる役割を果たしている展示エリアが「IoTタウン」である。そのIoTタウンが初めて設置された2016年から3年連続で出展しているのが、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)だ。

 最新テクノロジーを活用することで、金融機関が、金融サービスの枠にとどまらない取り組みを開始。社会課題の解決など積極的に取り組んでいる展示内容が多くの来場者の関心を集めてきた。特に、昨年の「CEATEC JAPAN 2017」では、デジタル通貨の「MUFGコイン」を初公開。ブロックチェーン技術の実装事例としても注目を集めたのは記憶に新しい。

 毎年話題となるMUFGの展示は、今年の「CEATEC JAPAN 2018」ではどうなるのか。株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループの藤井達人氏(デジタル企画部次長)をはじめ、株式会社三菱UFJ銀行の小出俊介氏(デジタル企画部事業開発グループ調査役)、三菱UFJ信託銀行株式会社の齊藤達哉氏(経営企画部Fintech推進室調査役補)、そして、MUFGの100%子会社であるJapan Digital Design株式会社の岩野秀朗氏(イノベーションラボ次長)に話を聞いた。

「MUFGコイン」の展示でブロックチェーンを身近に、「MUFG APIs」や「AI外貨預金サービス」にも来場者から大きな関心

――MUFGは、昨年の「CEATEC JAPAN 2017」に、2年連続で出展をしました。どんな成果がありましたか。

株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループの藤井達人氏(デジタル企画部次長)

藤井氏:
 昨年のCEATEC JAPANでは、“Society 5.0”による超スマート社会の実現に向けて、金融サービスを提供するMUFGが、どんな役割を果たすのかをお見せできたと思っています。1年目は、準備する時間が短かったこともあって、人型ロボット「NAO」など、とりあえず展示できるものを集めた感じでしたが(笑)、2年目となった昨年は、目的を持ったかたちで展示をすることができました。

 なかでも、初めて外部に公開した「MUFGコイン」は、紙面上でしか語られていなかったものを実際に動かしたという点で話題を集めましたし、超スマート社会に向けた決済インフラの1つとして、そのコンセプトや方向性を示すことができました。ちょうど、ブロックチェーンに対する関心が高まっていた時期でもあり、その点からも、多数の来場者に興味を持っていただいたといえます。

 来場者のなかには、「ブロックチェーンという言葉は知っているが、どう役立つのかが分からない」といった声や、「具体的にどう実装していくことができるのか」といった声が上がるなかで、MUFGコインの展示を見て「日常にどう役立つのかを理解できた」という声をずいぶんいただきました。

 ブロックチェーンは、低コストでシステム構築ができること、スマートコントラクトによって、さまざまな処理ができることが特徴です。こうしたブロックチェーンの特徴とともに、MUFGコインの可能性を感じていただけたといえます。

株式会社三菱UFJ銀行の小出俊介氏(デジタル企画部事業開発グループ調査役)

小出氏:
 MUFGコインの展示では、「ダンベルを持ち上げ、その回数によってコインが貯まり、貯まったコインを使って自動販売機でミネラルウォーターを購入できる」という仕組みをお見せしました。スポーツジムで、目標を達成するとコインを得られたり、それを使って決済できたりするシーンを想定したわけです。

 この決済にブロックチェーンを活用したことで、ブロックチェーンが身近な技術であること、簡単に使える技術であることを理解していただきました。

 自動販売機の仕組みは、約2週間で制作したのですが、想定以上の反響がありました。実際に動くシーンを見たことで、決済サービスとして検討したいという声もいただきました。

藤井氏:
 一方で、じぶん銀行の「AI外貨預金サービス」も注目を集めましたね。

 これは、AIが外貨を購入するタイミングを提案してくれるサービスで、自分で買うタイミングが分からなくても、外貨投資ができるという点が注目を集めました。投資をする際の最初のハードルは、「いつ買ったらいいのかが分からない」という点です。買う時期が悪いと、結果として、塩漬けになってしまう。AIがそれを解決してくれるのは、これまでにないサービスであり、来場者にもFintechの新たな価値を知ってもらえたのではないでしょうか。

 また、オープンAPIである「MUFG APIs」の展示も多くの来場者に見ていただきました。MUFG APIsコーナーのパンフレットがすごい勢いで減っていたのは、いい意味での驚きでした。「銀行API」に関心持っていただき、「こんなことをやっているんだ」「こんなに事例が出ているんだ」という声のほか、MUFG APIsを自社のサービスに組み込みたいというご提案もいただきました。

 さらに、店舗での新たな顧客対応のかたちとして、デジタルテクノロジーを活用した「3Dコンシェルジュ」の展示も来場者には新鮮だったようです。店舗を訪れても、3Dコンシェルジュと会話してみたいという人が意外にも多いことが分かりました。

 店舗を持たないデジタルバンクに対して、MUFGは、店舗は大事にしています。むしろ我々の強みになるとさえ捉えています。ただ、店舗を維持するにはコストの課題があります。デジタルを活用することで、店舗の維持コストを抑えることができ、しかも、お客様の利便性を損なわない対応やサービスを提供できる可能性を感じました。CEATEC JAPANでは、そうした可能性についてもヒントを得たり、会話を通じて、反応を得ることができる点は大きなメリットです。

 昨年は、具体的なソリューション展示を中心にしたことで、来場者に理解を深めてもらえたのではないかという手応えがありました。また、CEATEC JAPANでの展示を見て、その後、共創に向けた話し合いを始めた例もありました。新たなものを展示して、その反応を見るのに、CEATEC JAPANは適した場所だといえます。また、マイルストーンとして、そこに向けて何か作ってみようというドライバーにもなっています。昨年の展示では、それを改めて実感しました。

「MUFGコイン」で何ができるのかユースケース化、家電との連携や奨学金プラットフォームとしても

――今年の「CEATEC JAPAN 2018」の展示はどうなりますか。

藤井氏:
 1年目、2年目は何を出そうかと苦労していましたが、3年目となる今年は出すものが多くて、取捨選択しているほどです(笑)。

 取捨選択した結果、MUFGコインは今年も展示しますし、“情報銀行”の取り組みもお見せします。さらに、昨年展示を行ったじぶん銀行のAI外貨預金サービスの展示もパワーアップする予定です。展示スペースは、2倍にしていますが、MUFGの展示が半分のスペースとなり、残り半分は、100%子会社であるJapan Digital Designが展示を行います。

――主要な展示を1つずつ教えて下さい。まず、MUFGコインですが、これはどんな展示になりますか。

小出氏:
 今年は、MUFGコインを使って何ができるのかということをもっと具体的に訴求したいと考えており、MUFGコインがサービスとしてどう使われるのかをユースケース化し、実際に動くものとしてデモストレーションを行えるようにします。

 具体的には、2018年3月に行ったハッカソンで生まれたサービスをブラッシュアップして展示することになります。例えば、IoTという観点では、電源と家電、MUFGコインをつないで、家電を使うと課金するデモストレーションを予定しています。また、奨学金をMUFGコインでプラットフォーム化するといった展示も行います。MUFGコインを用いて、ここから生まれるデータを、奨学金を出資する企業側と共有。それをもとに、企業と学生のマッチングにつなげるという提案です。MUFGコインを活用することで、いままでは想定できなかったようなマッチングができる一例になります。

 これらの展示は、MUFG以外の企業とのパートナーシップによって実現するものばかりで、しかも、具体的な事業化を見据えた内容になっています。

――MUFGコインは現在、実用化に向けてどんな段階にありますか。

小出氏:
 MUFGコインは、2017年5月から社内で試行を開始し、約1500人の利用にまで拡大しました。しかし、次のステップを見据えて、現在はこの試行も終了しています。

 MUFGコインは、自分たちでサービスを作るよりは、プラットフォームとしての位置付けを強めたいと考えています。今回のCEATEC JAPAN 2018で展示するMUFGコインに関する複数のサービスを通じて、「こういう使い方があるのか」ということを知っていただき、来場する企業の方々に、私たちと共創できるヒントを感じてもらえればと思っています。

三菱UFJ信託銀行に求められる“情報銀行”の役割とは?「スマートシューズ」からバイタルデータを収集してデジタル資産化

――三菱UFJ信託銀行では、どんな展示を予定していますか。

三菱UFJ信託銀行株式会社の齊藤達哉氏(経営企画部Fintech推進室調査役補)

齊藤氏:
 三菱UFJ信託銀行の仕事は、お客様の資産をお預かりすることです。そのなかで、これまでの資産とは異なる新たな資産が誕生してきています。それがデジタル資産です。例えば、デジタル通貨はデジタル資産の最たるものですし、デバイスやセンサーから生まれるデータや、それをもとに生成される情報もデジタル資産と捉えることができます。

 そうした時代において三菱UFJ信託銀行は、デジタル資産を価値保存したり、価値移転したりといった役割を担うことになります。ここでは、データなどのデジタル資産と、金銭などの非デジタル資産との価値交換、移転、保存のほか、デジタル資産同士の価値保存、移転もサービスとして提供することになります。いわゆる“情報銀行”としての役割がこれから求められてくるわけです。

 CEATEC JAPAN 2018の展示では、生まれたデータがどうやって個人の資産になるのか、そして、アプリを利用しながら「デジタル資産をどう運用するのか」といったことも体感してもらうことができます。「情報銀行とは何か」という声が多いなかで、個人の目線に立って、データが個人の資産になるとはどういうことなのかを理解してもらえると思います。

 具体的には、スタートアップ企業などが参加するMUFGデジタルアクセラレータのなかで生まれた「スマートシューズ」を活用し、ここで生まれたデータをデジタル資産として捉えたデモストレーションを予定しています。

 ここでは、歩いたり、ランニングをしたりといったバイタルデータをシューズから収集。アプリを通じて企業から、このデータ利用のオファーが届き、利用目的に応じてリターンを得るという仕組みです。フィットネスクラブを例に挙げれば、会員に対して、日常どんな運動をしているのかといった細かいヒアリングを行わなくても状況を理解でき、データをもとに最適なフィトネットプランを提供するといったことができます。

 こうしたデジタル資産の用途はさまざまですが、デジタル資産を持つユーザーへのオファーを考えるのは、データを取得したあとにサービスやリターンを提供する企業になります。

 三菱UFJ信託銀行はプラットフォームを提供し、ユースケースを考えるパートナー企業を支援したいと考えています。今回の展示を通じて、企業に三菱UFJ信託銀行の取り組みに関心を持ってもらうだけでなく、デジタル資産を持つエンドユーザーにも情報銀行の仕組みを理解していただきたいですね。

――これはいつごろの実用化を目指しているのですか。

齊藤氏:
 スマートシューズは現在、1000人の参加者を対象に実証実験を行っています。スマートシューズの利便性の裏付けや、アプリの使い勝手の基準をクリアできれば、2019年度中にはサービスインする予定です。

 三菱UFJ信託銀行では、これまでの実績や仕組みを生かす一方、こうした新たな動きと連動しながら、金融サービスとは違う切り口の提案までを含めて、デジタル資産に関するサービスを提供していきたいですね。

――情報銀行のサービスを利用することで、どんなメリットが生まれますか。

齊藤氏:
 企業と個人のコミュニケーションの摩擦を無くすことにつながると考えています。

 いまは、勝手にデータを取られていたり、それをもとに勝手に広告が配信されたり、個人にとっては心地よいものにはなっていないという現状があります。情報銀行の仕組みを使うことでこうした課題が解決され、企業と個人の関係もスムーズになると考えています。

Japan Digital Designは機動的な「移動ATM」を披露中国人観光客向けの動画投稿サイト「第j站」も展示

――MUFGブースの半分を占めるJapan Digital Designでは、どんな展示を予定していますか。

Japan Digital Design株式会社の岩野秀朗氏(イノベーションラボ次長)

岩野氏:
 Japan Digital Designの展示テーマは「ユーザーの日常を、いまよりちょっと便利にするサービス」です。簡潔であり、一貫性があり、心地よさを提供するものを展示します。

 具体的には5つのサービスを展示しますが、そのうち2つはすでに発表済みのもので、1つはCEATEC JAPAN 2018の開催当日に発表するものです。残りの2つはモックアップの形で展示し、来場者に触っていただきながらフィードバックを得たいと考えています。

 ブース内では、これらのサービスに関するコンセプトムービーも放映し、来場者の理解を深めたいと考えています。

――展示を予定している、発表済みのサービスとはなんですか。

岩野氏:
 1つは「みんかぶ保険」です。

 これは、保険は取っつきにくいと思っていた人に対しても、保険を身近に感じてもらうことを目的にした「ドアノックツール」ともいえるものになります。年齢や家族構成などのプロフィールを選び、保険種類ごとの簡単な質問に答えるだけで、ロボアドバイザーが保障のバランスや加入期間、保険料の目安など、ユーザーに合った保険内容を案内します。難しいと思っていた保険を、一人で簡単にデザインすることができます。

 もう1つは、動画投稿コミュニティサービス「第j站(jStation)」です。

 これは、中国人を対象にした動画投稿サイトで、中国SNS最大手のTencentと連携し、WeChatのミニブログラムを利用してサービスしています。このサービスでは、訪日中国人観光客に対して、中国人の視線から、カイドブックに出ていないような情報を提供し、日本に来る前の旅行プランの立案に役立ててもらったり、実際に日本を訪れたときにもユニークな体験して楽しんでもらうことができるようになります。

 7月20日にリリースしたばかりなので、現時点では数千人規模のユーザーにとどまっており、コンテンツ数も500個程度です。これを多くの人たちに知っていただき、利用を促進したいですね。現在、株式会社KADOKAWAや一般社団法人アニメツーリズム協会などがパートナーとなりコンテンツを拡充していますが、コンテンツを発信するパートナーをさらに増やし、日本の良さや日本の文化を発信していきたい。今回の展示を通じて、コンテンツ配信やサービス連携などで連携できる企業との協業も模索していきます。

藤井氏:
 人気の観光地に多くの人が集まる“オーバーツーリズム”が課題となっていますが、日本には、人気観光地以外にもユニークな場所がたくさんあります。そうしたところにスポットを当てることで、日本にとっても、観光客の分散化や、これまで注目されていなかった観光地に注目を集めることができると思っています。

岩野氏:
 オーバーツーリズムの解決手法は、エリアの分散、時期の分散、時間の分散となります。第j站は、訪日中国人観光客に、もっと違う角度から日本に楽しんでもらうためのツールになるといえます。また、金融サービスを提供するMUFGの立場では、これまでは中国人観光客とのタッチポイントが少なかったといえます。しかし、こうしたサービスを通じて中国人観光客の趣味趣向が理解できるようになりますし、これらのデータから新たな価値を見つけ出したり、新たなビジネスを創出することもできると考えています。

――ちなみに、展示予定の1つである当日発表のサービスについて、何か教えてもらえませんか?

岩野氏:
 そうですね……1つだけお話をしますと(笑)、 移動ATMを展示する予定です。

 これは、実際にキャッシュカードを使って、その場で現金を引き出すことができるのですが、これまでの移動型ATM(店舗がまるごと移動するような大がかりなもの)と違い、ミニバンのバックドアが開くとATMが登場する、といった小規模なものです。普通乗用車にも搭載できるサイズで、しかも、多くの人が使い慣れているATMよりも、若干、引き出しスピードが高速です。

 というのも、近年「キャッシュレス」が叫ばれていますが、一足飛びにキャッシュレスにはなりえません。たとえば、都心で開催されるフェスやフリーマーケットの会場でも「現金のみ」という場合も多く、買いたいものや良いものがあるのにあきらめざるを得ないということが発生しています。移動ATMは、一時的な現金ニーズに対する課題を解決するためのソリューションにもなるわけです。これをCEATEC JAPAN 2018で正式に公開します。

 また、こうしたATMの技術は、インターネットバンキングのユーザーを増やすことにもつながると思っています。三菱UFJ銀行では3000万以上の口座がありますが、こうした口座を持つユーザーに、慣れ親しんだATMのインターフェースを使ってもらうことで、デジタル化に向けて一歩進んでもらえると思っています。これはまた別の機会にお見せしたいですね。

――Japan Digital Designでは、今回の展示を通じて、どんな成果を期待していますか。

岩野氏:
 さまざまな業種の企業の方々に、今後の協業につながるような“気付き”を持っていただければと思います。

 Japan Digital Designは2017年10月に設立した企業で、ちょうど1年の節目を迎えます。この間、人の採用を積極化し、現在、約20人のエンジニアにまで拡大しましたし、製品やサービスのリリースについてもほぼ予定通りできたといえます。この1年の成果をお見せしながら、これまでの活動について知っていただき、そこから次の協業を模索する場にしたいと思っています。

MUFGのFintechサービスは、まさに“夜明け前”「CEATEC JAPAN」で触ってもらえる展示に

――Japan Digital Designの展示を含めて、MUFGブースは例年以上に豊富な展示になりそうですね。

藤井氏:

 はい、これまでに説明した以外にも、IoT関連では、Akamai Technologiesと共同発表した、決済処理速度2秒以下、毎秒100万件超の取引を可能とする新型ブロックチェーンを活用した決済手段のコンセプト展示を予定しています。また、カブドットコム証券では、VRを活用して、トレーデイーングステーションを再現するコンテンツも展示します。

 今年は、「今の段階で反応を見てみたい」という将来のサービスも一部ありますが、アイデア段階の展示というよりも、1年後ぐらいにはサービスとして提供できるものや、「私たちの生活にFintechがどう貢献するのか」といった観点で分かりやすいものを中心に展示します。Society 5.0を実現するための新たな技術やサービスを数多くお見せする予定です。

 こうした具体的なサービスをお見せできるようになった背景には、MUFGのデジタル企画部の取り組みが進化してきたことが挙げられます。アイデアや構想として持っていたものや積み上げてきたものを、いよいよ世の中に出していける段階になってきたからです。

 しかも、「この技術は出してみないとどうなるか分からない」ではなく、確信を持って出していけるものが増えています。それは、今までと違い、使うエンドユーザーを意識した検討の進め方になっているからです。ビジネスモデルや収益性の話もどんどん出てきており、我々としてはまさに“夜明け前”のような状況だと感じています。

 今回のCEATEC JAPAN 2018では、それらを実際に展示し、触ったり、使ったりしてもらい、反応を聞き、改善することができるのが楽しみです。

 Japan Digital Designは、自前でエンジニアやデザイナーを抱えており、スピーディーにモノを出していく体制が整っていますが、MUFGのデジタル企画部もクイックに反応を取り込み、試していくことが求められる段階に入ってきましたから、それに向けて体制を作っていきたいと思っています。そうした人材採用もこれからのテーマですね。

 昨年のCEATEC JAPANの開催時には、デジタル企画部の陣容は約60人体制でしたが、いまは100人以上の体制にまで拡大しています。グループのなかからの異動のほか、地銀との連携のなかで出向で参加してもらうといった動きもあります。世の中にサービスを提供するということを前提とした取り組みを、さらに加速させていきます。

――Society 5.0による超スマート社会の実現に向けて、MUFGはどんな取り組みを行っていますか。

藤井氏:
 Society 5.0に対する貢献という点では、まだこれからですね。ただ、準備は着々に進んでいます。

 ブロックチェーンを活用したインフラの構築や、個人ユーザーのデジタル資産の取り扱い、IoTデバイスと決済を連動した仕組みの提案などを行い、これらの実用化に向けてスピード感を持って取り組んでいます。Society 5.0の流れに乗り遅れずにサービスを提供するための準備が整いはじめたといえるでしょう。

 日本には、少子高齢化や過疎化などの課題があります。私たちが取り組んでいる案件のなかには、そうした課題の解決に役立つサービスも数多くあります。ひとつひとつの案件ごとにSociety 5.0を強く意識しているわけではありませんが、これらの取り組みを組み合わせることで、Society 5.0の実現に幅広い観点から貢献できると考えています。CEATEC JAPAN 2018のMUFGの展示の数々を通じて、Society 5.0に貢献する姿を感じていただけるのでないでしょうか。