インタビュー

NTT Comのテレワーク事情、現場の社員が語る

「従業員7000名の8割」がテレワーク、リモート会議は「月間150000回」へと10倍増、「オンライン昼食会」も

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府は4月7日に緊急事態宣言を発令、さらに4月11日には安倍晋三首相が新型コロナウイルス感染症対策本部での議論を踏まえ、「オフィスでの仕事は原則として、自宅で行えるようにする。どうしても出勤が必要な場合でも、出勤者を最低7割は減らす」ように要請している。ただ、本当にテレワークでオフィスと同様に仕事ができるのか、不安を感じている人も少なくないのではないだろうか。

 そこで今回、一般社団法人日本テレワーク協会が主催する「第19回テレワーク推進賞」で優秀賞を受賞したNTTコミュニケーションズ株式会社(NTT Com)に、テレワークの実態についてインタビューを行った。対応していただいたのは、同社の大坪敬生氏(ビジネスソリューション本部ソリューションサービス部第二マネージドソリューション部門第八グループ主査)と末安巧氏(経営企画部広報室主査)である。

今回の取材はMicrosoft Teamsを利用して行った。画面の左が大坪敬生氏、右が末安巧氏

7000名の従業員の約8割がテレワークを行うNTT Com

――すでに多くの企業が新型コロナウイルスへの対策としてテレワークを行っていますが、NTT Comではどういった状況でしょうか。

末安氏:
 NTT Comでは、セキュアに業務ができる環境を構築するためのソリューションとして「セキュアドPC」を提供しており、これを自社でも導入することで、以前からリモートでも業務をできる環境を整えていました。

 ただ、従来は在宅勤務ができる回数を週2回、月8回までに制限していたのですが、新型コロナウイルスが発生したあと、2月17日から当面の間、上限を撤廃しています。また、従業員は原則として在宅勤務となっており、多くの従業員がほぼ出社せずに業務を行っています。

 4月10日時点では、NTT Com単体の従業員7000名のうち約80%が毎日テレワークで働いているという状況です。

大坪氏:
 私自身はNTT Comとしての新型コロナウイルス対策が始まる前から、月に2回ほどテレワークを実施していました。しかし2月ごろからは本格的にテレワークに切り替えています。現状ではオフィスに出社することはないですね。

――テレワークのメリットとして感じているのはどういったことでしょうか。

大坪氏:
 よくある話ですが、まず通勤時間がなくなるので大幅にプライベートの時間が増えることですね。家族との時間が増え、コミュニケーションの機会も多くなりました。また、資料作成など集中力を要する業務にはテレワークは非常に適しているため、業務内容にもよると思いますが、生産性が上がることもメリットだと感じています。

――逆にテレワークのデメリットは何でしょうか。

大坪氏:
 まず運動量が減るという点ですかね(笑)。オフィスであれば歩いたり動いたりしますし、通勤でも歩くことになりますが、それらがなくなるということですよね。

 コミュニケーションの絶対数が減ることもデメリットです。オフィスであれば、社内の人間などとの予期せぬ出会いってありますよね。そこからなんとなく会話するといったことがあると思いますが、テレワークではそれがありません。

 そこで意識しているのが、オンラインでのコミュニケーションです。NTT ComではMicrosoftの社内SNSである「Yammer」を利用していて、仕事や業務に直接関係ない人たちとコミュニケーションする場になっているので、それを使っています。また、「ONLINE JOURNAL」という社内報があり、記事に対してコメントできるようになっているんですね。それで記事を読んで、何か気付いたことがあれば書き込むようにしています。

末安氏:
 大坪から運動不足という話がありましたが、同様の声は社内のほかの従業員からも上がっていました。そこでNTT Comのラグビー部であるシャイニングアークスのメンバーが、平日の15時にラジオ体操など身体を動かす動画を配信し、従業員の運動を促す取り組みを行っています。この動画は、一般の方でもYouTubeの「NTTコミュニケーションズ ShiningArcs」チャンネルで見られるので、ぜひチェックしてみてください。

NTT Comのラグビー部であるシャイニングアークスでは、「Arcs-Break(アークスが贈る健康体操)」として自宅でできる簡単なストレッチをYouTubeで配信している

テレワークで変わるコミュニケーションのあり方、「オンラインランチミーティング」も

――今回の取材もMicrosoft Teamsで行わせていただいていますが、こういったウェブ会議やリモート会議の機会はやはり増えたのでしょうか。

大坪氏:
 かなり使っています。すごく助かっていますね。

末安氏:
 実は面白い統計があるんです。一般的にテレワークでコミュニケーションの数は減ると思ってしまいますが、コミュニケーションの方法が変わったというのが正しい解釈かなと思っています。というのは、NTT Comのリモート会議の数の推移を見てみると、2月時点の会議数は1.5万回/月だったのですが、3月になると15万回/月と10倍に増えているんです。こういった数値を見ると、コミュニケーションのあり方そのものが変わっているのではないかと考えています。

大坪氏:
 ウェブ会議であれば会議室の設定がいらず、ロケーションフリーですぐにできるんですよね。プロジェクトでの課題や問題について、「ちょっと打ち合わせしよう」となったときに、会議室を探してスケジュールを押さえる必要がありません。この労力って地味に大きいですよね(笑)。そういった手間がなくなるのは、業務の効率化や生産性の向上につながると思っています。

――ウェブ会議を行うときのルールや取り決めはありますか。

大坪氏:
 会社や部署としてのルールはありませんが、意識していることはいくつかあります。例えば、初めて会う方とコミュニケーションするときは、ビデオを使って顔を合わせるといったことです。相手に顔を見せることで、節度を持って対応できるところはあるのではないでしょうか。

 テキストチャットでは、あまり乱用しないことを意識しています。乱用してしまうと相手の時間を奪ってしまうことになるので、ある程度のマナーは必要だと思います。また、伝えたい内容を簡潔にまとめることも意識しています。

 あと、最近、「オンラインランチミーティング」をちょっとやってみたのですが、これは意外にいいなと思いました。

 オフィスで働いているときでも、チームメンバーや仕事で関わっている人とランチすることはあるじゃないですか。これをテレワークにも採り入れてみようと、ウェブ会議をつないでお互いにランチしながらミーティングするという内容です。こういったかたちでコミュニケーションを確立するのも1つのスタイルかなと考えています。

テレワークでは「環境」「制度」「マインド」が大切

――企業としてテレワークに取り組む上では、どういったことが重要になると考えられますか。

末安氏:
 テレワークのための環境と制度、そしてマインドが大切ではないでしょうか。それらが三位一体となって初めてテレワークができるのではないかと思っています。

大坪氏:
 リモートワークの環境によって、仕事の効率性やストレスってかなり変わってくるのではないかと考えています。環境に起因するテレワークの問題は会社や個人によってまちまちだと思いますが、現在はまだ問題が浮き彫りになっていないように思いますし、社会的にも整理されていないように感じています。

 実は弊社でも、以前はセキュアドPCではなく、シンクライアントを使っていたんです。ただ、シンクライアントはネットワーク環境にすごく依存する仕組みで、当然ながらネットワークに接続されていなければ仕事はできませんし、操作に対するレスポンスも決して良くはありませんでした。

 しかし現在のセキュアドPCはサクサク動きますし、ネットワークに接続できなくてもローカルで作業を行えます。正直なところ、本当に使いやすいので助かっています。

――自宅では家族がいるので、なかなか集中して仕事に取り組めないといった声もよく聞きます。そういった部分で何か工夫されていることはありますか。

大坪氏:
 家族同士で時間割を共有していることでしょうか。この時間は仕事をする、あるいは大切な会議があるということを伝えて、一方で子どもにはこの時間は宿題をやろうと話す。そういった時間割を共有する習慣が生まれると、すごくリモートワークしやすくなるのではないかと思います。

――本日はありがとうございました。

 大坪氏のお話で印象的だったのは、テレワークであれば集中して作業することができるため、生産性が上がるという言葉である。

 現状は新型コロナウイルスへの対策としてテレワークが広まっているが、今後は業務効率の向上やワークライフバランスの改善など、前向きな理由でテレワークが広まるといったことは十分に考えられる。

 また、オンラインランチミーティングもユニークな取り組みだ。現状ではオンライン飲み会がブームとなっているが、テレワークで不足しがちなコミュニケーションを増やす意味で、オンラインランチミーティングを実施してみてはいかがだろうか。