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Facebook日本語版誕生から10年――個人データ不正利用事件を受けてフェイスブックジャパンはどう向き合うのか

 Facebook日本語版の提供開始から10年目を迎えるにあたり、フェイスブックジャパンがプレス向けのラウンドテーブルを実施した。英ケンブリッジ・アナリティカによるFacebookの個人データ不正利用事件を受けて、同社は「安心・安全なプラットフォーム作りを目指す」ということを繰り返し強調していた。

個人データ不正利用事件に対してFacebookが取り組む施策

 フェイスブックジャパン代表取締役の長谷川晋氏は、世界中で騒ぎになった今回の騒動は、英ケンブリッジ・アナリティカや一アプリの問題だけでなく、Facebookにおけるユーザーデータの取り扱い方法の見直し、信頼できるプラットフォーム作りが今後の課題になると述べる。

 Facebookをはじめ、同社のプラットフォームの不正利用を防ぐために、1)個人情報へのアクセスが許可されていたアプリの利用実態の調査、2)データ不正利用の影響を受けたユーザーへの通知、3)過去3カ月以内にアクセスの無いアプリユーザーの情報へのアクセス無効化、4)アプリがリクエストできるFacebookログインデータの制限(名前・プロフィール写真、メールアドレスのみ)、5)アプリ設定確認の推奨呼び掛け、6)脆弱性の発見・報告への報奨金制度適用――などを実施してきた。

 また、プライバシーセンターの新設、データに関するポリシー規約の明確化、モバイルからMessengerでのコミュニティ規定違反の報告機能を実装。直近の5月15日には、ユーザーに表示された規定違反コンテンツの件数、Facebookが削除したコンテンツの件数などを明らかにした「コミュニティ規定施行レポート」も公開している。

 今後数カ月以内には、Facebookに情報を共有しているウェブサイトやアプリを確認して情報を消去できる「履歴のクリア」機能を実装する予定だという。

「履歴のクリア」機能が今後数カ月以内に実装される予定

中長期的な視点で取り組み、プラットフォームの活性化へ

 5月16日、文房具専門店である伊東屋がFacebookの個人データ活用方法に賛同できないとして、同社のFacebookページを閉鎖したが(5月16日付関連記事『「個人データの活用方法に賛同できない」伊東屋がFacebookページの終了を発表』参照)、これは他社のFacebookページの運営に影響する可能性のある出来事だった。

 こうした動向について、長谷川氏は日本のユーザーと広告主に対しての影響は注視していくものの、個々の事象より中長期的な視点で問題解決に取り組むことが重要だとしている。同氏は、ユーザーが安心して使える環境になることでプラットフォームが活性化し、その結果、日本における企業や広告主に対してもより貢献できるという。

 「コミュニティ作りを応援し、人がより身近になる世界を実現するのがFacebookのミッション。その実現のためには、ユーザーデータをきちんとしたかたちで扱うことが必要だと思っている。これだけでなく、ほかにもさまざまなことに取り組むのでご理解、ご注目いただきたい」とコメントした。

フェイスブックジャパン代表取締役の長谷川晋氏

 日本ではFacebookのほかにも、Instagram、Messenger、WhatsApp、Workplaceといった“ファミリーアプリ”を提供してきた。

 米Facebookのハヴィエ・オリヴァン氏(バイスプレジデントグロース)は、これらのファミリーアプリが安全に運営され、社会的に良い影響を与えられるようなプラットフォームとして運営されるための取り組みを強化するとしている。

 「すべてのアプリはビジネスユーザーが顧客と強固に繋がるためのプロダクトになる。今後もファミリーアプリを増やしていき、日本ならびに世界に対して我々のサービスを展開していくことを楽しみにしている。」

米Facebookのハヴィエ・オリヴァン氏(バイスプレジデントグロース)

今後10年に向け日本での取り組みをさらに強化、東京オフィス移転も

 日本語版Facebookがリリースされたのは2008年5月19日。これまで、サービス自体の翻訳だけにとどまらず、日本の絵文字から発想を得たという「超いいね!」ボタンなどのリアクション機能や、災害時安否確認機能を持つ「災害支援ハブ」など日本発の機能も実装してきた。

 また、Facebookのプラットフォームを活用し、人と人との繋がりやコミュニティ作りを応援するための取り組み、経済面では地方活性化や訪日観光客の増加への貢献、社会面では震災復興コミュニティへの支援や働き方改革を後押ししてきた。

コミュニティ、テクノロジーの活用で人・経済・社会の活性化を目指す

 こうした取り組みは今後も引き続き行うとしているが、より体制を強化するためのキャパシティ拡大が必要だという。そこで、今後10年の日本での成長を見据え、2020年下半期には東京オフィスを虎ノ門ヒルズビジネスタワー(仮称)に移転することが決まった。

 「これは日本に対してコミットし、しっかりと取り組むことの覚悟の表れ」と長谷川氏は述べる。

2020年下半期には東京オフィスを虎ノ門ヒルズビジネスタワー(仮称)へ移転

 「日本の人々、社会、経済に対する貢献ができるような組織になるべく、オフィスの体制も整備していく。まだ日本に貢献できていることは1%も終わっていない。今後できる99%以上のことを見据えて取り組んでいきたい」と意気込みを語った。