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損保ジャパンが取り組む「まず電話」からの脱却、Google Chat利用率は90%以上に

Excel→Google スプレッドシート移行で情報共有のスピードアップも

 グーグル・クラウド・ジャパン合同会社(Google Cloud Japan)が16日、「Google Workspace」の活用事例を紹介するプレスセミナーを開催。敷島製パン株式会社(Pasco)、損害保険ジャパン株式会社、生活協同組合コープさっぽろの担当者が登場し、それぞれの活用事例を語った。

「Google Workspace」で拠点間の横連携がスムーズに

 損保ジャパンの事例では、コロナ禍以前から進められていた、Google Workspace活用によるコミュニケーションや情報共有について、損害保険ジャパンの宇津木奈央氏(IT企画部計画推進グループ主任)が解説した。

損害保険ジャパン株式会社の宇津木奈央氏(IT企画部計画推進グループ主任)

 宇津木氏は、「ここ数年、拠点間の横連携がスムーズになっているのを感じている。情報はできるだけシェアしようと呼び掛けて、文化の醸成を進めている」と説明し、その事例を紹介した。

 まず全国共通の事例としては、「Google スプレッドシート」による店舗横断の情報共有がある。「例えば大規模な自然災害が発生したときに全国から社員を派遣するのに、スピードが求められる。メンバー選定や連絡網作成などに、以前はExcelを使っていたが、Google スプレッドシートを使うことで、スピードが格段に上がった。対応の履歴もGoogle スプレッドシートで管理し、メンバーの入れ替えもすぐに反映できる」(宇津木氏)。

 また、「Google Forms」を使って、Google Workspaceについての社内問い合わせを受け付けている。その回答も、スプレッドシートにして「Google サイト」に埋め込んで公開することで、類似の質問を削減できているという。

 一方、各店舗での取り組みとしては、Google サイトにより、目標の進ちょく管理や連絡事項を一元管理している。都度メールで連絡していたのが、メールの量を大幅に削減できたという。

 また、「Google Keep」を使って、タスクの一元管理、ID・パスワードの管理、ホワイトボード代替をしている。例えば、チェックリストでタスク管理するほか、オフィスのホワイトボードで出社時間や休暇予定などを共有するのと同じことをGoogle Keepでしているという。

社内での情報共有の事例

「チャット文化」を作るために社内放送で啓蒙

 続いて宇津木氏は、コロナ禍による在宅ワークで加速した業務改善を3つに分けて説明した。

 1つめはコミュニケーションの改善で、電話・メールから「Google Chat」へ移行した。これにはツールというより「『チャットは遊び』という風潮からの意識改革」「『まず電話』からの脱却」が重要で、「コロナをきっかけに会社としてやるんだというメッセージが必要だった」と宇津木氏は言う。

 そのために、Google Cloud Japanの協力のもと、社内の衛星放送と動画配信を使って1時間番組「Googleに学ぶGoogle Workspaceを活用した働き方」を流した。この番組では、チャットを使うことのメリットの訴求として、会議前にチャットで情報共有して効率化することや、スタンプは既読の意味で気軽に使っていいといったこと、あるいはツールの使い方を説明した。この番組は通常の番組の3倍ぐらいの視聴率を得て、社員から前向きな意見が出たという。「Google Chatの利用率が90%まで上ったが、それにはこの番組があったんじゃないかと思う」と宇津木氏は語った。

 宇津木氏の部署でも、社内システムについての質問について「電話でなくチャットでお願いします」と言っているという。さらに、Google Cloud Platformの「Dialogflow」で簡単なQ&Aのボットを作成している。「例えばパスワードを間違えてロックされてしまった、というときに、イントラへのリンクを飛ばすぐらいの簡単なもの」と宇津木氏。「まだ作ったばかりで月200アクセスぐらいしかないが、ヘルプデスクへの入電が減ることを期待している」。そのほか社内ルールのQ&Aボットも検討していると宇津木氏は語った。

コミュニケーションの改善

 2つめはナレッジ共有で、社内イントラネットから「Google Currents」へ情報共有手段が移ってきている。「社内イントラネットは一方向の情報発信で、承認が必要なため掲載に2営業日ぐらいはかかる。表現も硬い。そこへGoogle Currentsによる情報共有が浸透してきている」と宇津木氏は言う。

 例えば、ツールの使い方が分からないことなども、Google Currentsに気軽にコメントを残してくれるので、精査して情報を補完しているという。

 投稿は1日700件ぐらい。内容は、店のお勧めなど日常のちょっとしたことから、なんでも共有している。Google Currentsにより情報共有のスピードがアップして、「本社の情報発信もこちらに移行していいかなと思っている」と宇津木氏。

 社内でGoogle Workspaceを使ってどんなことをしているか現場に募る「#DXキャンペーン」も実施した。その中でバズって表彰されたのが、Google Formsを使って代理店への送付物を管理する仕組みだ。これまでの電話やメールでのやり取りを置き換えるもので、代理店が必要なタイミングでGoogle Formsで請求できるという。さらに、Google Currents上で有志が作っているコミュニティで意見交換がなされ、例えば「Google Apps Script」で自動返信メールを送る仕組みも追加された。「アイデアがシェアされると、有志でよいものに育てていくという、ということもも根付いてきた」(宇津木氏)。

ナレッジ共有

 3つめは会議・セミナーで、Google MeetやGoogle Forms、「Google ドライブ」を使ってオンラインで開催されるようになった。

 その一環として2020年10月から、オンライン企業内大学の「損保ジャパン大学」を開校した。Google Meetで開催し、参加申し込みもGoogle Formsから。資料はGoogle ドライブで共有し、カレンダーからリンクしておけば参加者も簡単に資料にアクセスできる。受講後のアンケートも、Google Formsを使ってリアルタイムに集計できる。これによって「主催者の業務削減やペーパーレス化につながる」と宇津木氏は語る。

 また、損保ジャパン大学の中でGoogle Workspaceのハンズオンセミナーも開催している。その中で、音声入力機能が非常に好評だという。「動画活用が進んでいるが、聴覚障害の方との意思の疎通が難しい。資料と動画の作り手は、話し言葉を文字に起こす必要があるが、音声入力により事前に話しながら資料を作成できる」と宇津木氏は背景を説明した。

会議・セミナー