ニュース

Google スプレッドシートはExcelのGoogle版ではなく“情報共有のインフラ”

コープさっぽろのCIOが語る、DXのステップとGoogle Workspaceでの実践例

 グーグル・クラウド・ジャパン合同会社(Google Cloud Japan)が16日、「Google Workspace」の活用事例を紹介するプレスセミナーを開催。敷島製パン株式会社(Pasco)、損害保険ジャパン株式会社、生活協同組合コープさっぽろの担当者が登場し、それぞれの活用事例を語った。

「紙業務をシステム化」するのではなく「まずオンライン化」

 コープさっぽろの事例では、DXのあるべき姿とその実践について、コープさっぽろCIOの長谷川秀樹氏が語った。

 長谷川氏は複数社のCIOを務めており、コープさっぽろは2020年2月から。冒頭で「古い会社でも変われる、という話をしたい」と述べた。

生活協同組合コープさっぽろCIOの長谷川秀樹氏

 長谷川氏はまず、システムサイドから見たDXのステップとして、「STEP 1:テクノロジーインフラを整備する」「STEP 2:コミュニケーションインフラを整備する」「STEP 3:アプリケーションを整備する」の3つを挙げ、「ほとんどの人はコミュニケーションインフラをほったらかしにしてアプリケーションをなんとかしようとしているが、これは間違い」と語った。

システムサイドから見たDXのステップ

 続いて、DXについての「紙業務→システム化」というイメージについて、「それでは、例えばA4の紙をそのままシステム化してしまう」として、間違ったものであると主張。正しくは「紙業務→オンライン業務化→自動化」だとした。

「紙業務→システム化」ではなく「紙業務→オンライン業務化→自動化」

 次は、DXの歴史的に分けた3ステップを提示。2000年代までは会計業務のホスト化、2000~201X年ごろはPCやExcelによる業務システム、2015年ごろからはオンラインで情報を共有するスタイルが登場しているとした。「PCやExcelは分かりやすいが、本当は次の段階に行かなければならない。それを分かるようにできると思っている」と長谷川氏は語る。

オンラインでの情報共有に進むべき

 ここで長谷川氏が強調するのは、営業システムなどの個別業務のシステムを使うのは全労働時間の10%程度であり、残りの90%程度は会議・資料作成・意思決定の「その他の業務」だということだ。「“なんとかシステム”よりまず、90%のところをデジタル化していくことで、生産性向上につながる」(長谷川氏)。

 そのうえで改めて語られたのがDX導入のステップだ。間違ったDXのステップは、(紙業務などの)現行業務をシステム化することであると長谷川氏は主張する。そして正しいステップとして「STEP 1:仕事をオンライン上でするようにする」「STEP 2:オンライン上でやっている仕事をオートメーション化する」というステップを提唱した。

90%程度にあたる会議・資料作成・意思決定の業務をデジタル化することで生産性向上
仕事をオンライン化して自動化する

「ファイルサーバーはすぐさまやめよう」

 では、実際にコープさっぽろではどのようにしているか。Google Workspaceの利用方法として、まずメールやカレンダー、「Google Meet」「Google サイト」を使っている。

 そこで長谷川氏が説くのは、「多くの人は、Google スプレッドシートはExcelのGoogle版だと思っているが、全く違う。Google ドキュメントやGoogle スプレッドシートは“シェアードドキュメンテーションインフラ”だ」ということだ。例えば、長谷川氏は、Google ドキュメントで資料をこれから書くというときからリンクを送って、相手と互いのドキュメントを横目で見ながら自分のドキュメントを作るという。「今までは、資料を作ってからレビューしていた」(長谷川氏)。

 また、会議は口頭とリアルタイムドキュメンテーションの2つのチャンネルで進行するという。「例えば、投資の決済承認のとき、共有ドキュメントを見ながら、この条件なら承認、という必要事項をリアルタイムで議事録に書いて共有する。ドキュメントとでも会話していくかたちで、これは共有ドライブではできない」(長谷川氏)。

「Google ドキュメント」や「Google スプレッドシート」は“シェアードドキュメンテーションインフラ”

 さらに、「ファイルサーバーはすぐさまやめよう」というメッセージも語られた。「インターネットの情報は、リンクや検索から開くもので、フォルダーに分けられているわけではない」と長谷川氏。代わりに、クラウドストレージ(Google ドライブ)を使うことで、会議のカレンダーに資料のリンクを貼り付けておくなど、基本はリンクからドキュメントに飛ぶかたちをとるという。また、検索もできるので「書いている自分のドキュメントは検索で探す」と長谷川氏。

 そのほか、バージョンごとのファイルが作られるのは「メールを送るための風習でばからしい」として、クラウドストレージで同じファイルにアクセスしていれば、バージョンは1つでいいと語った。

「ファイルサーバーはすぐさまやめよう」
「クラウドストレージを使って効率よく」