Internet Explorer 9の開発状況の一部が公開される


 米Microsoftは18日、ロサンゼルスで開催中の開発者向けセミナー「Microsoft Professional Developers Conference 2009」において、Internet Explorer(IE) 9の開発状況を発表。その概要を同日、IEのゼネラルマネージャーを務めるDean Hachamovitch氏が公式ブログで明らかにした。

 それによると、IE9では現在、主に3つの領域で開発が進められているという。1)パフォーマンスの改良、2)標準規格への準拠、3)ハードウェアアクセラレーションを使ったグラフィックスの描画、である。

 まずパフォーマンスに関して言えば、IEはFirefox、Chrome、Safariに比べて大きく後れを取っていることは知られている。同社もこのことを認め、IE9ではほぼ互角といえるまでに改良が進んだことを明らかにした。

 同社はJavaScriptのメジャーなベンチマークテストである「Sun Spider」の結果を公表し、IE9が開発初期段階にあるにもかかわらず、Firefox 3.6ベータ、Chrome 4ベータ、WebKitナイトリービルドと比較しても、肉薄していることをアピール。同社では、ネイティブコードの生成など、様々な手法を駆使してこの結果を得たとしている。

 しかしその一方で、JavaScriptの速度だけにとらわれることへの注意も促している。Hachamovitch氏は、標準的なニュースサイトやWebアプリケーションである「Excel Web App」など4つのサイトで、レンダリング、レイアウト、CSSパーシング、HTMLパーシング、JavaScriptなど、ページを構成する様々な要素がどれぐらいの時間を要しているかを計測した結果をグラフで公開した。これを見ると、ページによって時間を要する部分が大きく異なっていることがわかる。

 そのため、JavaScriptのパフォーマンスで差が少なくなればなるほど、ページを構成している他の要素の描画にかかる時間が、ブラウザ全体のパフォーマンスに大きな影響を与えると考えられ、それらのパフォーマンス向上に努めるとしている。

 IE9で開発を進めている2番目の点として、標準規格への準拠が挙げられる。

 IE9でも、引き続き標準規格への準拠を強化していきたい考えで、そのために最新の標準規格を実装すると同時に、その機能をテストする検証ソフトの開発にも力を入れる。正確なテストを開発しなければ、正確な実装をすることができず、結果としてサイト開発が難しくなるからだ。

 同社では、現時点のIE9ビルドで、Web標準への準拠度を測る指標として有名な「Acid3」テストが32点であるとのテスト結果も公開した。同社では、以前からAcid3テストが簡単で役に立つテストの一手法であることは認めながらも、テスト方法に問題が含まれていることも指摘していた。

 3番目の点として、グラフィックスのハードウエアアクセラレーションが挙げられる。

 IE9では、グラフィックスやテキストの描画のために、DirectXの使用を発表した。その手始めとして、グラフィックスとテキストのレンダリングにDirect2DとDirectWriteを使用することを明らかにした。これはDirectXに含まれているAPIの一つで、Windows 7/Vistaに搭載されている。

 このことによって、グラフィックスとテキストの描画はCPUではなく、グラフィックスカードが行うことができ、CPUリソースを減らしながら、グラフィックスをより高速に美しく描くことができるようになった。

 例えば、文字をスムーズに拡大した際のギザギザがなくなり、綺麗な曲線が描けるようになる。またテキスト文章を拡大した際の文字間隔の描画が柔軟にできるようになり、より見やすい文章を表示できるようになるとしている。


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(青木 大我 taiga@scientist.com)

2009/11/19 12:35