マイクロソフト、クラウドサービス「Azure」の国内展開を本格化


執行役 デベロッパー&プラットフォーム統括本部長の大場章弘氏
Windows Azure Platformの構成要素

 マイクロソフト株式会社は2月22日、クラウドコンピューティングプラットフォーム「Microsoft Windows Azure Platform」を国内で本格的に事業展開すると発表した。

 Windows Azure Platformは、クラウドOSの「Windows Azure」とクラウドデータベース「SQL Azure」を核としたクラウドコンピューティングプラットフォーム。同社執行役 デベロッパー&プラットフォーム統括本部長の大場章弘氏は、「Windows Azure Platformは、1月より全世界でサービスを開始し、2月からは課金も開始するなど、日本でも利用可能な状態に入っている。今回、日本市場に対して提供するにあたり、準備が整ったことをアナウンスする」と、国内でも本格的に展開すると発表した。

 Windows Azure Platformの特長は、Windows ServerやSQL Serverなど、企業が自社で運用しているソフトウェアと共通のテクノロジーをベースにしている点。大場氏は、「サーバーソフトのテクノロジーと同じレイヤーでクラウドサービスを提供しているので、同じ機能をソフトとしてもサービスとしても使え、またアーキテクチャ的にも機能拡張しやすい。また、開発者にとっては、.NETに投資したスキルをそのままクラウドにも拡張できるのもメリット」と、既存資産を活用しながらクラウドのメリットを享受できる点を強調した。

 日本市場での展開については、「マイクロソフト日本法人との契約や日本円での決済、ポータルサイトの日本語化など、日本企業が利用しやすい環境を整えている。また、従量課金以外にも、お得に利用できるパック商品も提供する」(大場氏)と、日本企業が利用しやすい環境の整備に取り組んでいると説明。

 開発者に対しては、MSDNオンラインでのWindows Azure Platform関連コンテンツの拡充、ホワイトペーパーの公開などの情報提供を実施。「多くの技術情報の日本語化を進めており、主要なドキュメントに関して日本語化は完了している。また、技術セミナーなどをストリーミング化して公開するといった取り組みも行っていく」(大場氏)と、開発者への情報提供を積極的に行うと述べた。


日本企業が契約しやすい環境を整備開発者に対しては技術情報を公開マイクロソフトの体制も強化
国内でも多くの企業がWindows Azure Platformにコミットすると表明
米Microsoft プラットフォームストラテジー担当 シニアディレクターのティム・オブライエン氏

 具体的な活用シナリオとして、大容量ストレージや非常用バックアップシステムとしての利用、キャンペーンサイトなど一時的なサイトの構築・運用、大規模なコンシューマーサービス、EclipseやJavaとの相互運用性の高さを生かしたオープンソース環境からの利用、SOAを利用した基幹システム拡張、などを挙げている。

 すでに、グーモ株式会社、ソフトバンククリエイティブ株式会社、宝印刷株式会社、株式会社富士通システムソリューションズの4社が、商用サービスのプラットフォームとしてWindows Azure Platformを採用することを表明。そのほか、約50の企業がWindows Azure Platformへのコミットを表明している。

 説明会に出席した、米Microsoft プラットフォームストラテジー担当 シニアディレクターのティム・オブライエン氏は、「われわれは10年以上にわたって、Windows LiveやWindows Updateなどのオンラインサービスを提供している。これらのサービスの規模を見ると、Windows Liveで5億以上のユーザーが利用しているほか、Windows Updateでは毎月2.5億台のPCにサービスを提供している。Windows Updateでは、1PBものデータを配信している」と、オンラインサービスで豊富な経験と実績を持っている点をあらためて強調。

 Windows Azure Platformも、10年以上にわたる実績をベースにして提供されるサービスであると述べた。「マイクロソフトは、Azureを本気でやっていくのかという質問をよく受けるが、中核製品の多くをクラウド向けに進化させる予定だ。次期Office製品のOffice 2010もクラウドに対応した製品になる」と、積極的に取り組む考えであると説明する。

 なお、Exchange OnlineやSharePoint Onlineなど、同社が提供する各種オンラインサービスをAzureベースにする予定があるかどうかについては、「利用者視点で考えるのが重要、利用者にとっては、Azureであるかどうかは関係なく、コストメリットや実現できる機能、SLAといった点が選択する上で重要になる。既存サービスをAzureに移行するかどうかは、ビジネスのメリットがあるかどうかで判断する」と、すべてのサービスをAzure上で稼働させる考えはないと述べた。


関連情報


(福浦 一広)

2010/2/22 19:05