トヨタ、ヒトとクルマが会話できるSNS「トヨタフレンド」を提供へ

「Salesforce Chatter」を活用。EV/PHVに2012年搭載


トヨタフレンドのロゴマーク
システム概要

 トヨタ自動車株式会社(トヨタ)と米salesforce.comは23日、クルマ向けソーシャルネットワークサービス(SNS)「トヨタフレンド」の構築に向けた戦略的提携に基本合意したと発表した。

 トヨタフレンドは、ヒトとクルマ、販売店、メーカーをつなぐSNS。カーライフに必要なさまざまな商品・サービス情報などをスマートデバイスを通じて顧客に提供する。このサービス基盤にsalesforce.comの「Chatter」を採用。今回の戦略的提携に至った。

 トヨタフレンドでは例えば、EV(電気自動車)/PHV(プラグインハイブリッドカー)の電池残量が少ない場合、充電を促す情報がユーザーに届く。また例えば、走行距離が1000kmを超えた場合にその旨を知らせてくれる。それらはあたかもクルマの“つぶやき”としてユーザーの下に届くため、まるでクルマと会話をするように日々のメンテナンスやサービスが受けられる。

充電の確認。クルマが充電を促してくれる。電力会社からの情報も参照するため、電力負荷の低い時間単へ自動的に充電をシフトすることも可能

点検のお知らせ。点検内容などを質問するとディーラーなどにつながり、実際のサービス情報が提供される。点検の予約もスマートデバイスから行え、このタイミングでディーラーからキャンペーン情報を届けることも可能点検を予約するとリモート診断も受けられる

 さらに地図情報を活用し、運転中に別のクルマの友人と情報をやり取りすることも可能。例えば、待ち合わせ場所に向かう際に、「渋滞に巻き込まれている」といった情報を別のクルマの友人と簡単に共有できるという。

地図情報を使った「フレンドサーチ」というサービスも運転中に別のクルマの友人と会話したりできる

 これらはトヨタユーザー向けのインターナルSNSとして2012年市販予定のEV/PHVに搭載されるが、別途、TwitterやFacebookなどのオープンSNSとの連携も検討。より幅の広いサービスにしていく考え。

 トヨタはこれまでにもヒトとクルマと社会がつながるサービスとして、独自のテレマティクスサービスを展開してきた。これにトヨタフレンドも連動させ、「未来のモビリティ社会の実現」を目指すという。

 なお、今回の提携に先立ちトヨタはMicrosoftのクラウド技術「Windows Azure」も採用している。Azure上に構築されたトヨタスマートセンターで「ホーム」「充電インフラ」「クルマ」からのさまざまなデータを収集し伝達情報生成エンジンでテキストに変換。これをSalesforceプラットフォームのTweet変換エンジンに渡し、ユーザーとの会話を実現する。

テレマティクスサービスのこれまでの取り組み2010年からさまざまな情報をクラウドに収集するトヨタスマートセンターの実証実験を開始した
豊田社長【左】とベニオフCEO【右】

 トヨタ代表取締役社長の豊田章男氏は「震災後、当社では『笑顔のために。期待を超えて。』をコンセプトに、驚きや感動の笑顔を広める新サービスを提供するグローバルビジョンを定めた。一日も早く多くの笑顔を取り戻すためには、明るい未来のための取り組みが必要と考え、今回の取り組みを決めた。世の中にはスマートデバイスやSNSが広まっている。その輪のクルマも参加して、コミュニケーションツールを通じてクルマがヒトの友達のように感じてもらえたら、こんなに素晴らしいことはないと考えた。また昨今では“若者のクルマ離れ”も生じている。それに歯止めをかけるためにも、もっといいクルマを作らなければいけない。そのためのよいチャレンジになる」と、今回の取り組みの意義を説明。

 一方ベニオフ氏も「世界的なトヨタの豊田社長と同じ舞台に立って説明できることは光栄だ。数カ月前からこのプロジェクトを進めている。業界ではいまモビリティを中心にコミュニケーションの形が大きく変わろうとしている。その状況でいまわたしが一番欲しいものはなにかと考えた結果、自分のクルマと友達になることだった」と語った。

 両社は今後もこの取り組みを推進し、トヨタフレンドの構築にとどまらず、将来的にはMicrosoftのAzure環境に加え、オープンプラットフォーム領域におけるクラウド構築も視野に入れる。その一環として、3社はトヨタの顧客向けIT事業会社であるトヨタメディアサービス株式会社への第三者割当増資に応じる。総額は10億円で、内訳はトヨタが4億4200万円、Salesforce.comが2億2300万円、Microsoftが3億3500万円。

Azureのプラットフォームに加え、今回の提携でトヨタのオープンソースプラットフォーム領域におけるクラウド環境構築も視野に入れる今後のスケジュール

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(川島 弘之)

2011/5/23 18:10