「iCloud」では音楽のほかアプリや写真も同期、iOS 5とともに今秋から無料提供


「iCloud」の紹介ページ。基調講演の動画も公開された
「iTunes in the Cloud」のサービスイメージ

 米Appleは6日(米国時間)、サンフランシスコで開幕した開発者向けイベント「Worldwide Developers Conference 2011」においてスティーブ・ジョブズCEOらによる基調講演を行い、同社が今秋より無料で提供を開始するクラウドサービス「iCloud」の概要を発表した。

 iCloudは、ユーザーが保有するコンテンツなどを複数のiPhone/iPad/iPod touchやMac、Windows PC間で自動的に同期し、シームレスに利用できるようにするサービス。かねてから噂されていたようにiTunes Storeで購入した楽曲をクラウドに保存し、ユーザーが保有する他の端末からも利用できるようにする「iTunes in the Cloud」機能を提供する。例えばiPhoneで購入した楽曲が即座に自動的にクラウドに送信・保存された後、全端末にプッシュ通知される仕組み。

 ユーザーがCDからリッピングした楽曲の取り扱いについては、Wi-Fi経由などで端末同士で同期したり、手動でクラウドにアップロードする方法に加え、「iTunes Match」という新たなサービス提供することも明らかにした。

 これは、リッピングしてあるiTunesのライブラリをスキャンし、同じ楽曲をiTunes StoreからDRMフリーの256kbps AACフォーマットで提供するというもの。利用料は年間24.99ドル。これにより、マッチングしなかった楽曲のみがアップロードされると説明している。

 iCloudでは、iTunesの楽曲のほか、購入したアプリや電子書籍、端末のバックアップデータ、作成中のドキュメント、撮影した写真も保存・同期できる。

 App Storeで購入したアプリはクラウドに保存され、他の端末でもダウンロードして使用できる。iBookstoreで購入した電子書籍は、ブックマークもクラウドに保存され、別の端末から続きを読むといったことも簡単に行えるようになる。これらのサービスでは購入履歴が確認できるようになり、そこからiCloudアイコンをタップするだけで、最大10台までのiOS端末で追加料金なしで利用できる。

 さらに「Cloud Backup」により、iOS端末のバックアップデータもクラウドにバックアップ可能だという。購入した楽曲や電子書籍、アプリなどのほか、設定データも含まれ、例えばiPhoneの新端末を購入した際でも、Apple IDとパスワードを入力することで簡単にデータをリストアできるとしている。

 「iCloud Storage」機能では、ワープロアプリなどで作成中のドキュメントをクラウドで保存・同期可能だ。例えば、iPadのPagesアプリで作成したドキュメントがクラウドに保存され、他の端末のPagesに通知される仕組み。Apple製のアプリであるPages、Numbers、Keynoteでサポートするほか、Appleでは「iCloud Storage API」を公開することも発表。サードパーティがiCloud対応アプリを開発・提供できるようにする。iOSやMacだけでなく、Windowsもサポートする。

 「Photo Stream」機能では、iPhoneなどのカメラで撮影した写真が自動でクラウドにアップロードされ、他の端末に自動的にプッシュされる。Apple TVもサポートするという。ただし容量の問題があるため、端末に保存されるのは直近の1000枚まで(MacとPCではすべての写真)となっている。クラウド側の保存期間は30日間。Photo Streamは、iOSのフォトアプリやMacのiPhotoなどに搭載される。

 このほか、これまでは有料サービスの「MobileMe」で提供されていたような連絡先、カレンダー、メールの同期機能もiCloudの無料サービスに含まれる。

 iCloudの無料ストレージ容量は5GBで、これにはドキュメント、バックアップ、メールの容量が含まれる。iTunes StoreやApp Storeで購入したアプリやコンテンツ、Photo Streamの容量はこれにはカウントされない。追加ストレージも購入可能で、料金など詳細はサービス開始時に発表する。

iTunes in the Cloudの「iTunes Match」は米国のみ

 これらiCloudの機能は、今秋リリース予定の「iOS 5」とともに提供が開始される予定。iOS 5が動作するiPhone/iPad/iPod touch、Mac OS X Lionが稼働するMacから、Apple IDを入力することでiCloudに無料サイン
アップできる。

 これに先立ち6日より、iCloudのベータ版とCloud Storage APIが、iOSおよびMacのデベロッパープログラムの会員に提供される。

 また、iOS 4.3向けに、iTunes Matchを搭載しないiTunes in the Cloudの無料ベータ版も米国で6日から提供を開始する。なお、iTunes Matchは年間24.99ドルで提供予定だが、米国のみとしている。

 基調講演では、Appleが3個所のデータセンターを使ってiCloudを提供する準備を進めていることも明らかにし、iCloudのクラウドサービスにかける意気込みを示した。3個所目はノースカロライナ州メイデンに最近完成したとし、5億ドル以上を投資したという。


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(永沢 茂)

2011/6/7 05:45