スマホアプリの「青少年有害情報閲覧制限機能」を、総務省の研究会が提言


 総務省は、「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備に関する提言(案)」に対するパブリックコメントを8月22日まで募集する。青少年が使うスマートフォンのアプリを保護者が制限できる「青少年有害情報閲覧制限機能」の必要性などを提言している。

 提言案は、総務省の「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」がとりまとめたもの。2009年4月に施行された「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律(青少年ネット環境整備法)」の附則において3年以内に内容を見直すこととされていたのを受け、研究会では、同法施行後の状況の変化を踏まえながら今後の対応のあり方について議論した。

 ここ数年で状況が大きく変わったことの1つとして、インターネットを利用する端末の多様化を挙げ、当然のことながらスマートフォンにおける青少年有害情報対策について言及している。

 例えば、携帯電話向けのインターネット接続サービスを携帯電話キャリアが提供するにあたっては、青少年向けのフィルタリングサービスを提供することが義務付けれらているが、スマートフォンなどにおける無線LAN経由のインターネット接続についても同様の規制が必要か検討された。これについて研究会では、無線LAN経由のインターネット接続は現状、青少年のインターネット利用に大きな影響を与えるほど青少年に普及しているわけではないと指摘。無線LANインターネット接続サービスについて、フィルタリングサービスの提供を義務付ける法改正を行う必要性はないとしている。

 なお、現行法では、PC向けなどのインターネット接続サービスについては、ユーザーの求めに応じてフィルタリングサービス/ソフトを提供または紹介することをISPに義務付けるにとどまっており、携帯キャリアよりも一段緩い規制となっている。スマートフォンの無線LAN経由のインターネット接続サービスについては、このISPと同様の規定が適用されることになる。端末メーカーにおいても、無線LAN経由のインターネット接続で利用できるフィルタリング機能や、無線LAN設定を制限できる機能を搭載するよう検討することが望ましいとしている。

 また、携帯インターネット接続サービス経由のウェブアクセスについては、スマートフォンについても、従来の携帯電話と同様の規定が適用されるとの解釈を示し、実際にスマートフォン向けのインターネット接続サービスでも携帯フィルタリングサービスが提供されていることを説明している。

 一方で問題点として、携帯フィルタリングサービスが、スマートフォン向けに提供されている多様なアプリに対応していない点を挙げた

 これは、通常のウェブブラウザー経由のウェブアクセスであれば、携帯フィルタリングサービスが機能するのに対して、別のアプリからの通信には機能しないためだ。例えば海外のSNSなどはウェブブラウザー経由であれば携帯フィルタリングサービスで遮断することも可能だが、それらSNSの公式アプリからは通過できてしまうという現実がある。

 提言案では、対策の手段となる青少年有害情報閲覧制限機能として、ダウンロードできるアプリをiOS/Android OS実装端末で制限できるペアレンタルコントロール機能や、起動できるアプリを設定できるアプリ(ソフトバンクモバイルの「あんしん設定アプリ」など)を挙げ、携帯キャリアや販売店がこうした手段を保護者に説明することが必要だとしている。

 また、何の情報もなしに保護者がアプリの利用を制限するかどうか適切に判断するのは難しいとして、携帯キャリア、端末メーカー、App StoreやAndroid Marketなどのプラットフォーム事業者を含めた関係者において、一定の基準に基づいてアプリを選別する青少年有害情報閲覧制限機能を保護者などが利用できるようにすることが必要としている。青少年の利用に配慮していると第三者機関が認定したアプリを、そうした利用制限から除外する枠組みについても言及した。

 このほか提言案では、これまでのつぎはぎ的な対策では、サービス事業者にとってもその都度新たな対応が求められ負担も大きいことから、青少年保護(PCO:Protection of Children Online)のための概念として、サービスや製品の設計段階から青少年の利用に配慮する「青少年保護・バイ・デザイン(PCO by Design)」を提唱している。


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(永沢 茂)

2011/7/26 12:03