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米Docker、コンテナ型仮想化実装「Docker 1.0」リリース

~本番環境を正式にサポート

 米Dockerは9日、サンフランシスコで開催中の開発者向け会議「Docker Con 14」において、Linux向けコンテナ型仮想化実装「Docker 1.0」リリースを発表した。

 Docker 1.0は本番環境での実行を初めてDocker社が認めたバージョンであり、そのため重要な意味を持つ。DockerはすでにRed Hat、Open Stack、Google、AWS、Ubuntuなどの名だたる企業のサービスがサポートしている。これは正式にサポートされていないとしても、Dockerがあまりにも便利だったためで、開発者たちが自己責任で利用していたことになる。しかし、正式にサポートされたことにより、金融業などを含む保守的なエンタープライズ環境でも安心して利用できるようになる。

 Docker以前は、開発環境から本番環境に移行する際のトラブル発生は開発者、運用者双方の悩みの種だった。しかしDockerなら、コンテナにアプリケーションをパッケージしてそのままデプロイ、実行が可能だ。そのため開発者環境でビルドしたDockerコンテナをそのまま本番環境で実行でき、運用者はコンテナの外部だけを管理すればよい。

 さらに、通常のバーチャルマシンと異なり、Linuxカーネルを共有しているためにオーバーヘッドが少なく、「Dockerfile」と呼ばれる仕組みによってインフラストラクチャーをソースコードで管理できるメリットもある。

 Docker社はバージョン1.0リリースが意味するところを「品質、機能の完全性、下位互換性、エンタープライズ水準のAPI安定性」だとした上で、Docker社として「完全なドキュメント、トレーニングプログラム、プロフェッショナルサービス、およびエンタープライズサポートを提供する」としている。

 Dockerをプラットフォームとすることも宣言し、「今後プラットフォームとしてのDocker、その部品としてのDocker Engine、コンテナランタイムとパッケージ化ツール、そしてコラボレーション、コンテンツ、ワークフローの自動化のためのクラウドベースサービスであるDocker Hubについて聞くことになるだろう」と説明した。

 Docker Hubはアプリケーションの配布、チームコラボレーション、ワークフローの自動化、サードパーティーサービスとの統合といった様々なサービスをクラウドベースで提供する。具体的には、チームやリポジトリを管理するためのコンソール、Dockerを利用した1万4000以上のアプリケーションを登録したレポジトリ、コラボレーションツールや自動化されたビルドサービス、ワークフローを自動化するための「Webhooks」サービス、サードパーティーサービスと連携するための「Docker Hub API」などを提供する。

 Docker Hubアカウント登録は無料だが、GitHubと同じようにプライベートレポジトリは有料。ただし無料アカウントでもプライベートレポジトリを1つ利用できるとしている。

 また、ソフトウェアプロジェクトの公式レポジトリを登録できる「Official Repositories」プログラムが発表され、最初の13メンバーとして、CentOS、Debian、Java、MongoDB、MySQL、Nginx、Node.js、PostgreSQL、Ruby on Rails、Ruby、Redis、Ubuntu、WordPressが発表された。

 Dockerは2013年3月20日に最初のバージョンがリリースされた。現在に至るまでに275万ダウンロードが記録されたとしている。もともとはPaaS企業であったdotCloud社内のオープンソースプロジェクトの一つとしてスタートしたが、その後人気ゆえに社名をDockerに変更した経緯がある。

(青木 大我 taiga@scientist.com)