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手軽で便利なカーナビアプリだが、車内利用には危険も

“走りスマホ”絶対にダメ、車載ホルダーを1万人にプレゼントする安全キャンペーン

 ヤフー株式会社は、「Yahoo!カーナビ100万ダウンロード記念 安心安全ドライブサポートキャンペーン」を開始した。スマートフォンを車のダッシュボードに固定するホルダーとシガーソケットタイプのUSB充電器などをセットにして、抽選で1万人に提供する。

「安心安全ドライブサポートキャンペーン」告知バナー

 カーナビアプリ「Yahoo!カーナビ」を提供する同社が、カーナビアプリの安全利用に向けた啓発活動の一環として実施するものだ。同アプリをはじめ、最近ではスマートフォンをカーナビとして利用できるアプリが多数登場しているが、車内でのスマートフォンの設置方法の問題や、ユーザーが運転中に操作してしまうことに対する対策など、安全な使用環境が十分に整っているとは言いがたい状況にあることが背景にある。使用方法が不適切だった場合、最悪、事故につながる危険性もある。

 特にYahoo!カーナビは、無料でVICSにも対応するということもあり、7月31日の提供開始から1カ月たたずに100万ダウンロードを超えるほどの反響があったことも大きい。ヤフーによると、ユーザーから届く声やTwitterでのコメント、レビューなどから判断すると、このアプリで初めてスマートフォンのカーナビアプリを利用するユーザーも多いようだという。車内でスマートフォンを固定して安全に利用できる環境を整えているユーザーは、まだ少ないのではないかと考えた。

 スマートフォンをダッシュボードの上やメーターの上に固定せずに置いただけで使用すれば、カーブを通過する際などにすぐにズレたり落ちてしまったりするだろう。ドライバーが気を取られて事故の原因になる可能性がある。

 もちろん、ドライバーが走行中、スマートフォンを手に持って操作したり、画面を注視することは道路交通法で禁止されている。

 そこで、ヤフーではカーナビアプリを提供する企業として、車内でカーナビアプリを安全に使ってほしいという思いから、キャンペーンを実施することにした。まずはスマートフォンの車載用ホルダーの認知拡大・普及を図ることで、安全意識を高める1つのきっかけにしたかったという。

 キャンペーンで提供するのは、スマートフォンを固定するホルダー、シガーソケットタイプの充電器、充電ケーブルのセットで、Android向けとiPhone向けがある。1万人に無料で提供するのはヤフーにとってコスト負担も大きくなるが、ホルダーは高温になった車内で溶けたり、少しの衝撃でスマートフォンがはずれてしまわないようなしっかりした製品を選定したという。充電器や充電ケーブルも品質に重点を置き、iPhone向けの充電器/充電ケーブルはMFiライセンスを取得した物を選んでいる。

 キャンペーン期間は9月28日正午まで。Yahoo!カーナビのプロモーションページにある専用バナーから応募できるほか、アプリ内の「お知らせ」でも告知している。応募は、Yahoo! JAPAN IDを持つ18歳以上のユーザーが対象となる。なお、iPhone向けにはAセットとBセットの2種類があり、どちらが送られてくるかは指定できない。

AセットのiPhone向けホルダー(SoftBank SELECTION SB-CC01-MOST)
AセットのiPhone向け充電器/ケーブル(SoftBank SELECTION SB-DC02-IOST)
BセットのiPhone向けホルダー(Owltech OWL-CACH02)
BセットのiPhone向け充電器/ケーブル(Owltech OWL-CBJDC10(W)A-IP8/2A)
CセットのAndroid向けホルダー(Owltech OCH-09)
CセットのAndroid向け充電器/ケーブル(Owltech OWL-ADDCU1S)

「運転中は操作禁止」アプリでも注意喚起するが、技術的対策に限界も

 カーナビの安全対策としては、一般社団法人日本自動車工業会が車載用の「画像表示装置」についてガイドラインを策定し、機器の取り付け位置や走行中の操作および走行中に表示する情報の内容に関して基準を示している。

 ヤフーによると、スマートフォンのカーナビアプリを対象とした業界標準のガイドラインというものはまだ存在しないというが、「Yahoo!カーナビを使用して事故が起きてはいけない。アプリ自体にも安心・安全の仕掛けをしている」(ヤフー株式会社システム統括本部マップイノベーションセンターサービスマネージャーの兵藤安昭氏)とし、Yahoo!カーナビを開発・提供するにあたっては日本自動車工業会のガイドラインを「尊重している」という。

 具体的には、ナビゲーションの開始後(走行中)は、ルート沿い以外の不要な情報は表示せず、文字の大きさを一定以上にするといった、ヤフー社内での独自ルールを決めた。また、ナビゲーション中に表示するための地図も新たにデザイン。車で利用する際に見やすい地図をコンセプトに、短時間の画面確認で、必要な情報を取得できることを意識したデザインにしているという。

 一方で、スマートフォンアプリでは現時点で、技術的な対策で限界もある。カーナビ専用機では、目的地設定や地図検索などの煩雑な操作を走行中には行えないような設計になっているが、スマートフォンのカーナビアプリでは車両側から車速データなどを取得することができない。

 スマートフォン内蔵のGPSや加速度センサーなどによって走行中かどうかを検知することになるが、その精度は製品によってバラバラな上、取り付け方法によっても感度などが異なってくる。走行中であることを検知し、操作できないようにする機能も検討しているとのことだが、誤判断を起こしてしまう可能性があり、現状では難しいとした。

ヤフー株式会社システム統括本部マップイノベーションセンターサービスマネージャーの兵藤安昭氏
ヤフー株式会社システム統括本部マップイノベーションセンターマーケティング部部長の入山高光氏

 ヤフーでは現在、運転中の操作に関しては、Yahoo!カーナビのナビゲーション開始時に、「実際の交通ルールに従って運転してください。運転中の『Yahoo!カーナビ』の操作および画面注視は大変危険ですのでおやめください。必ず安全な場所に停止してから操作および画面を注視してください。」というアラートを表示。あわせて音声での注意喚起を行っている。

 Google PlayおよびApp Storeのダウンロードページでも同様の注意文を掲載。また、Yahoo! JAPAN内にあるYahoo!カーナビのプロモーションページにも同様の注意文を掲載しているが、50万ダウンロードを突破した時点でその表示をよりいっそう目立つよう巨大化させるなど、ユーザーの目に触れる各所で注意喚起を強化しているかたちだ。さらに今後は、啓発コンテンツも公開し、車内でのスマートフォンカーナビアプリの安全利用を強く訴えていきたいとしている。

ナビ開始時に表示される警告文
大きく掲載したアラート文

(山川 晶之)