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HPのレーザープリンターに31年ぶりの技術革新、「ジェットインテリジェンス」全面採用の新型A4カラー対応機2製品を発売

 日本ヒューレット・パッカード株式会社(HP)は16日、A4カラーレーザープリンターの新製品2機種「HP LaserJet Enterprise Color M552dn」「HP LaserJet Enterprise Color M553dn」を発売した。価格(税別)は、M552dnが11万8000円、M553dnが15万8000円。

(左から)前モデルの「HP LaserJet Enterprise Color M551dn」と、今回発表された「HP LaserJet Enterprise Color M553dn」。筐体が小型化されている

 2機種は、HPの新テクノロジー「JetIntelligence(ジェットインテリジェンス)」を全面的に採用。同社がHPでは1984年に初めてレーザープリンターを出して以来、最も大きな技術革新だとしている。このテクノロジーには、トナー素材そのもの、トナーを格納する「ページ・マキシマイザー」、トナー管理機能が含まれているほか、プリンター本体もジェットインテリジェンスに合わせて新設計となっている。

 トナーは、耐久性の高いシェルとソフトコアを備えた「ColorSphere 3 トナー」を開発。感光ブレードによるストレスに耐えるシェルを実現しつつ、ソフトコアの融点を下げ、トナーの溶解に要する熱量を下げている。このため、省電力で印字が可能なほか、スリープ解除後の印刷可能になるまでの時間(FPOT:First Print Out Time)の削減、プリンター筐体のスリム化に寄与している。紙への印字後の耐久性も向上しているという。

 トナーを格納するページ・マキシマイザーは、内部構造を見直すことで、より多くのトナーを充填でき、従来モデル「M551dn」と比較して、印刷可能枚数が最大58%増加。これにより、トナー交換回数が減り、管理工数や在庫管理・スペースを削減できる。ページ・マキシマイザー自体の耐久性も向上させることで、印刷可能枚数が増えることによるパーツ起因のトラブルを抑制している。また、トナー漏れを防ぐ「トナーシール」の自動巻き取り機能も搭載する。

 トナー管理技術も強化し、黒が多いあるいはカラーが多いといったユーザーの印刷傾向から、より正確なトナー残量を監視可能。トナーとプリンター本体を紐付けでき、運用上の観点から利用中のトナーを別のプリンターで利用できないようロックをかけることができる。また、リサイクルトナーや模造トナーといった非純正品の使用を検知。HPでは、どのトナーを使用するかは「ユーザー次第」としているが、印字品質やミスプリント、プリンターの故障など“見えないコスト”が発生していると指摘している。

「ジェットインテリジェンス」は5つの要素から構成される
トナー粒子は、感光ブレードへの耐久性を保ちつつ融点を下げた
ページ・マキシマイザーも改良
トナーの残量管理もリアルタイムで把握できるようになった
リサイクルトナー、模造品の検知機能も装備
HPでは、リサイクルトナーや模造品使用による“見えないコスト”が発生していると説明

 今回、ジェットインテリジェンスに合わせて開発されたプリンター新製品2機種は、印刷スピードも向上。ヒーターの分離、温度センサーの追加、制御ロジックを新開発することで、定着器をリアルタイムに制御できるようになった。これにより、A5用紙なら毎分55枚で印刷可能。両面印刷の速度も31%高速化し、片面印刷と同等の印刷スピード(ページではなく面)を実現している。A4用紙の印刷速度は、M552dnが毎分33枚、M553dnが毎分38枚。

 定着器のリアルタイム制御は、省電力にも寄与している。テキストのみのデータ、写真やイラストを用いたデータなど、トナーの印字率を検知するアルゴリズムにより、印字率に応じて定着器の温度をリアルタイムに制御。また、自動用紙種別センサーを搭載し、用紙の厚みや光沢度を自動測定。紙に応じた定着器の温度を制御する。トナー自体の改良と、定着器のリアルタイム制御により、従来モデルと比較して、約51%の省電力化を実現している。

 このほか、データ処理、エンジン起動、印字パス、スリープからの復旧速度を向上。スリープからの復旧を従来モデルの7秒から新モデルでは2秒に短縮したほか、待機時間を11秒から7秒に縮め、トータルで待ち時間が18秒から9秒へと半分になっている。また、2機種ともテンキーを装備しており、PCから印刷指示を出した後、プリンター側で暗証番号を入力して印刷するといったプライバシーに配慮した運用も可能だ。

 ただし、ランニングコストは、従来モデルとほぼ同等か若干上がっており、黒が1枚あたり2.34円、カラーが1枚あたり14.59円(従来モデルのM551dnでは、黒が1枚あたり2.24円、カラーが1枚あたり14.7円)。これは、為替の影響も受けているという。

「M552dn」「M553dn」で改善されたポイント
スリープ時から1枚目の出力までの時間を大幅に短縮している
両面印刷を高速化したほか、A5用紙印刷も毎分55枚に
定着器をリアルタイム制御できることで、省電力化に貢献している

 M552dnは、解像度が最大1200×1200dpi。給紙容量は多目的トレイが100枚、標準トレイが550枚、最大1200枚。CPUが1.2GHz、メモリが1GB。インターフェイスは、ギガビットイーサネット×1、USB 2.0デバイスポート×1、USB 2.0ホストポート×2など。本体サイズは、458×479×399mm(幅×奥行×高さ)、重さは約27.5kg。

 M553dnは、筐体や主な仕様は同じだが、メモリが最大2GBまで拡張できるほか、オプションで500GBの暗号化対応ハードディスクを搭載できる。また、給紙容量は多目的トレイが100枚、標準トレイが550枚、最大2300枚。なお、従来モデルのM551dnの正当な後継モデルはM553dnになるが、M552dnでもスペックが底上げされているため、M551dnのパフォーマンスを凌駕している。

従来モデルの「M551dn」と新モデルの「M552dn」「M553dn」のスペック比較
「M553dn」正面
「M552dn」「M553dn」ともにテンキーを搭載する
本体背面には各種ポート類を装備
従来モデル「M551dn」と新モデル「M553dn」の前面パネルを開けた状態
「M553dn」では、廃トナー容器が前面パネル内から本体側面に移動している

 なお、HPではこのほかにも法人向けレーザープリンターの新製品として、A4モノクロレーザー/複合機の刷新とA3カラーレーザー低価格モデルの投入を同時発表しているが、ジェットインテリジェンスを採用したプリンターは今回発売したM552dnとM553dnの2製品のみ。順次、ラインナップを拡大していくという。

(山川 晶之)