ネット衛星「きずな」で、硫黄島から皆既日食映像を伝送


 情報通信研究機構(NICT)、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、国立天文台(NAOJ)は7月22日、硫黄島(東京都小笠原村)からインターネット衛星「きずな」(WINDS)を用いて、皆既日食のハイビジョン映像伝送実験を実施する。

 実験では地球局を硫黄島に設置して、「きずな」による155Mbpsの回線で複数のハイビジョン映像を伝送。アジア・太平洋地域向けアンテナを用いた高速データ伝送能力を実証するとともに、実験映像を一般にも公開する。

硫黄島での実験イメージ図奄美大島での実験イメージ図

 光ファイバーなど高速な通信回線のない硫黄島からハイビジョン映像を中継するために、NICTは2.4メートルのアンテナを有する車載型地球局で「きずな」に向けて155Mbpsの速度で日食の映像を送信する。

 「きずな」は、アジア・太平洋地域をカバーする「アクティブフェーズドアレーアンテナ」を用いて、東京都小金井市や茨城県鹿嶋市などにある地球局に向けて映像を中継。その映像は、NICTの地上高速ネットワーク「JGN2plus」などを経由してNAOJに送られる。

 実験映像は、国立科学博物館のほか各地の科学館、放送局などへ配信される。硫黄島での日食時間帯は、食の始まりが10時1分、皆既日食の時間帯が11時25分から11時30分まで、食の終わりが12時52分。日本で皆既日食を観測できるのは46年ぶり。

 NICTではさらに、超臨場感コミュニケーション産学官フォーラム(URCF)と共同で、奄美大島(鹿児島県奄美市)で観測される皆既日食について、ハイビジョン映像の4倍の画素数で撮影した「全天映像」でライブ上映する実験を行う。

 URCFが構築した「4K超高精細全天映像伝送システム」を用いて、国内の全天ドームシアター3会場(けいはんなプラザ、大阪ABCホール、つくばエキスポセンター)に伝送して上映する。通信回線は、NICTが運用するJGN2plusなどで各会場を接続する。

 NICTによれば、4K超高精細全天映像のライブ伝送は世界初。実験の様子は一般にも公開される予定。奄美での日食時間帯は、食の始まりが9時35分、皆既日食の時間帯が10時55分から10時57分まで、食の終わりが12時22分。




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(増田 覚)

2009/6/12 15:39