エフセキュア、パートナー拡大でSaaS型セキュリティ強化へ


 エフセキュアは24日、5月に設立10周年を迎えたことに伴い、フィンランドのF-Secure社長兼CEOのキモ・アラキオ氏が来日し、日本法人代表の桜田仁隆氏とともに今後の事業戦略を発表した。日本市場では、個人および法人向けにSaaS型のセキュリティサービスを注力する考えなどを明らかにした。

 F-Secureは、「Data Fellows」として1998年に設立。1999年には「F-Secure Corporation」と社名変更し、フィンランド証券取引所に上場した。現在は18カ国に事業所を展開し、2008年度の売上高は1億1300万ユーロ。内訳は北欧諸国が43%で最も多く、次いで北欧を除くヨーロッパが39%。北米およびアジア諸国・日本はそれぞれ9%を占めている。

Linux製品だけでなくSaaS型サービスも高い評価

 会見でアラキオ氏は、「F-SecureはSaaS型のセキュリティサービス『Security as a Service』のパイオニアで、世界200社以上のパートナーと協力して事業を展開している。モバイル分野のセキュリティも、フィンランドに本社を構えるNokiaとの協力体制で開発している」と述べ、同業他社への優位性をアピールした。

 長期的な展望としては、市場に浸透しつつあるという「Security as a Service」をさらに強化すると説明。日本市場については「高度なインフラ基盤の上に革新的なインターネット関連サービスが展開されている」と評価した上で、「成長の可能性が高く、非常に重要な国」とコメントした。

 また、桜田氏は「日本市場ではLinux向けのセキュリティ製品が強いと言われているが、世界的にはSaaS型サービスが高い評価を受けている」と説明。日本市場に関しては、引き続き堅実にLinuxや法人向けビジネスの実績を伸ばすとともに、SaaS型サービスを主軸に置くことでさらなる成長を目指すとした。

 個人向けのSaaS型サービスは現在、ISP事業者13社とパートナー契約を結んで事業を展開しているが、今後はさらにパートナー企業を増やしたいとした。法人向けのSaaS型サービスについては、「主にPC100台程度の中小企業に対して提供してくれるパートナーを強化したい」と語った。


フィンランドのF-Secure社長兼CEOのキモ・アラキオ氏エフセキュア日本法人代表の桜田仁隆氏

PC並の機能を持つスマートフォンは遅かれ早かれ狙われる

F-SecureでCRO(セキュリティ研究所主席研究員)を務めるミッコ・ヒッポネン氏

 会見ではこのほか、F-SecureでCRO(セキュリティ研究所主席研究員)を務めるミッコ・ヒッポネン氏が、「グローバルから見たITセキュリティの変遷と展望」と題して講演を行い、マルウェアやサイバー犯罪者の歴史を振り返った。

 ヒッポネン氏は、1986年1月に発見され、最古のPCウイルスとして知られる「Brain」を紹介。その上で、2003年までは「主にギークな10代が、興味半分に興奮と名声を求めてウイルスを作成していた」とするとともに、ウイルスの大半は米国や西欧などの先進国を中心に出回っていたと説明した。

 しかし、その後はサイバー犯罪が組織化されたことで、「ウイルスには国境がなくなった」と指摘。近年では、サイバー犯罪者が世界中に広がるボットネットを活用することで、数百万ドルを不正に入手したり、詐取した個人情報をアンダーグラウンド市場のサイトで売買するケースが目立つようになったという。

 また、携帯電話を含むモバイル向けの脅威については、「これまでに見つかったマルウェアは400種類程度で、比較的穏やか」と語ったが、PCと同様の機能を持つスマートフォンが増えていることからも、「遅かれ早かれモバイルを狙う攻撃が増えるのは明らか」との見方を示した。


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(増田 覚)

2009/6/24 17:23