情報処理学会がGoogleブック検索批判「著作権侵害を強引に突破」


 情報処理学会は30日、書籍の全文検索が可能なサービス「Google Book Search(Googleブック検索)」に関する訴訟の和解案について、「日本ばかりでなく世界中の権利者にとって、大きな問題をはらんでいる」と批判する声明を発表した。Googleが進める書籍のデジタル化について、「著作権侵害という障壁を強引に突破しようとした意図的な手法」などと指摘している。

 Google Book Searchは、Googleが提携する図書館および出版社から提供された書籍をスキャンし、全文検索が行えるサービス。これに対して、米国の作家団体「Authors Guild」や米国出版社協会(AAP)などがGoogleを相手取って訴訟を起こしたが、2008年10月に和解することで合意していた。

 和解案では、図書館との提携によりスキャンした書籍のうち、絶版または市販されていない書籍については、著作権保護期間内であっても全文の閲覧が可能となり、権利者に対してはこれらの書籍の使用により得た収益の63%を支払うとしている。

 なお、この和解案は、米国内のGoogle Book Searchサービスに対してのみ有効で、日本で提供されている「Googleブック検索」はこの和解案によるサービス内容の変更はない。ただし、和解案には「米国著作権を有するすべての人物が含まれる」とされており、著作権に関する国際条約の「ベルヌ条約」によって加盟国で出版された書籍は米国でも著作権が発生するため、日本など米国外の著作権者も和解案に同意するかどうかを求められていた。

 情報処理学会は和解案の問題点として、1)権利者が意思表示を所定の方法で行わない限り、訴訟(和解を含む)の結果に拘束されてしまう、2)米国のクラスアクション制度や訴訟事情に精通していない権利者の多くが熟慮のために十分な情報も与えられないまま、短期間のうちに極めて少数の選択肢の中から選択を迫られる、3)和解案が米国内でGoogle Book Searchにアクセスするユーザーのみを対象としていることの実効性――などを挙げている。

 その一方で、Googleが進めるデジタル化については、「将来にわたって閲覧可能とするとともに世界に広くアクセス機会を提供しようとするGoogleの果敢な試みに対して敬意を表したい」と評価。しかし、「デジタル化の既成事実を積み上げ、著作権侵害という障壁を強引に突破しようとした意図的な手法だった」と指摘し、Googleの手法が情報技術への不信感につながると批判している。

 なお、今回発表した声明について情報処理学会では、「今後の手続の進展に応じ、当学会やその構成員が限られた選択肢の中から各自が最善と考える解を選ばなければならないことを踏まえ、和解参加可否に関する各自の選択とは独立した立場から行うもの」としている。


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(増田 覚)

2009/9/30 20:30