マカフィー、サイバー戦争時代の到来を警告


 米McAfeeは、インターネットセキュリティに関する年次研究報告書「Virtual Criminology Report 2009」を発表した。それによれば、先進国に対して政治的な意図を含んだインターネット上の攻撃が増加し、米国、イスラエル、フランス、中国、ロシアの5カ国が対策を強化しているという。

 報告書では、今回初めて「サイバー戦争」における定義の枠組みを示すとともに、インターネット上の攻撃および防御を強化している国を特定して、政治的な意図を含んだサイバー攻撃の事例を詳細に分析し、民間企業が受ける可能性のある被害について明らかにしている。

 報告書によれば、米国だけを見ても、ホワイトハウスや国土安全保障省、シークレットサービス、国防総省などを狙った政治的なサイバー攻撃が、この1年で警戒を要するレベルにまで増加したという。米国の各州は、政府ネットワークおよび基幹インフラを対象としてセキュリティを強化した。

 また、攻撃者は、少ない労力で大きなダメージが与えられる配電網や輸送手段、通信、金融、あるいは水道などの基幹インフラを狙って、サイバー攻撃をしかけるという。米McAfeeは、「先進国ではたいていの場合、基幹インフラはインターネットにつながっているが、十分なセキュリティ機能がなく、攻撃に対して脆弱な状態で放置されてる」と説明する。

 また、「サイバー戦争」の定義を決めることも重要だという。「サイバー戦争には、さまざまな人たちがさまざまな形で関わっているため、戦争状態としての概念が明確に定義されていない。また、ユーザーを教育し、サイバー攻撃から自身を保護するのに果たす、民間企業の責任範囲についても議論がある」と指摘。「サイバー戦争の統一された定義がないままでは、攻撃者に対して政府交渉や軍事力行使の警告などを行う時期を決めるのは、ほぼ不可能」としている。

 「サイバー戦争」に関する議論は、政府と民間企業で広く行っていくべきだという。「先進国の多くでは、基幹インフラは民間企業が所有しているため、サイバー戦争の格好のターゲットになっている。そして民間企業は、サイバー攻撃からの防衛の大部分を政府にゆだねている。仮想世界で攻撃が始まれば、政府、企業、市民が戦火に巻き込まれる可能性もある。政府機関のサイバー防衛戦略を具体的に認識していない限り、民間企業は危機に備えて適切な予防措置を講じることはできない」。

 マカフィーの最高経営責任者(CEO)兼プレジテントであるデイヴィッド・デウォルト氏は、「マカフィーは2年以上前から、サイバー上の世界的な軍拡競争について警告してきた。しかし今日、それらが現実のものになったという証拠が明らかに増加している。現在、複数の国が実際に、サイバー戦争のような軍備や攻撃を進めている。現代の兵器は核ではなく、バーチャルなもの。こうした脅威には、すべての人が備えなければならない」とコメントしている。


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(野津 誠)

2009/11/20 13:19