EU、通信市場に12の改革


 欧州連合(EU)の通信規制改革案(パッケージ)がこのほどまとまり、単一市場実現に向け12の改革が提示された。EU市民に高速インターネットを提供し、競争力を高めるためさまざまな角度からの提案がなされている。

 改革案は、EUの執行機関である欧州委員会が2007年11月に提案していたもので、欧州議会担当者、加盟国の通信担当大臣会議および欧州委員会の間で2009年11月5日に合意をみた。

 まず最初に掲げられたのは、固定電話ないし携帯電話を、電話番号を維持しながら1営業日以内で変更手続きできるようにする権利に関するもの。現時点では、携帯電話の場合8.5日、固定電話の場合7.5日も要しており、2~3週間かかる例もあるとされている。将来的には1営業日以内にこれを可能とし、自由化を進めるとしている。さらに新規制では、初期の契約期間の上限を24カ月とするほか、12カ月のプランも提示することが義務付けられる。

 2番めとして、消費者への情報提供の改善が挙げられた。契約の内容を十分に理解せずに契約締結に至る消費者が多いことから、新規制では、何ができ、何ができないのかを明示した上で消費者が理解したことを確認して、サインができるよう環境整備をすること、および補償や返金に関する規定も整備するという。

 3番めはインターネットにおける自由に関する市民の権利保護、4番めはインターネットの中立性の確保が掲げられた。人権との調整がこのところ議論されているが、他方でインターネットにおける言論など自由の保障も重要。知的財産の保護、刑事事件における無罪推定やプライバシー権なども議題となっており、多方面の議論がなされている。加盟国当局がインターネット上において介入行為をする場合は、基本的人権などを保護することが明文で規定されることになった。

 5番めには、消費者の個人情報保護およびスパム対策が掲げられた。電子メールなどの個人情報については、その管理責任を厳重なものとし、使用目的を明示するとともに目的外利用が禁止された。

 6番めとして、緊急サービス番号「112」が設置され、欧州市民は従来の緊急番号に加え、障害者の保護など、従来の緊急番号サービスでは実現できなかったサービスが提供されることになるという。

 7番めとして、加盟国の通信規制当局が独立性を高めることになる。単一市場のため、加盟国の政府の意向が排除されることになるという。そして8番めとして、EUの通信規制当局であるBERECが設立され、従来の加盟国の規制当局による「緩やかな」統合体から、単一の透明かつ効率的な規制当局が始動することとなる。さらに9番めとして、欧州委員会の監視権限が強化され、加盟国の単一市場化の施策に不十分がある場合、BERECと協力して改善策の提言や、強制執行手続きに近い忠告などの措置もとることができるようになるという。

 10番めとして、各国の規制当局は、自由化が進捗しない場合は最終手段として、通信網自体の部門と通信サービス部門とを分離する方策をとることができるようになった。これにより、自由化が進まない場合に強制的に自由化を推進させることができるという。

 11番目として、ブロードバンドの普及の推進が掲げられた。地方では70%しかブロードバンドにアクセスができていない現状を指摘し、これを100%近くに引き上げるという。最後の12番目として、次世代アクセスネットワークへの投資を促進するための環境整備を行うとしている。そのためのインセンティブを促進する施策を用意するとしている。

 これらの改革案は24日の欧州議会本会議で最終の投票にかけられる予定で、12月にEU官報での交付を経て施行を予定している。


関連情報


(Gana Hiyoshi)

2009/11/24 17:18