中国のインスタントメッセンジャー事情、CNNICが調査報告


インスタントメッセンジャー利用者の年齢構成(青)。赤はインターネット利用者全体

 CNNIC(China Internet Network Information Center)は18日、中国のインスタントメッセンジャー(チャット)事情についてまとめた「2009年中国即時通信用戸調研報告」を発表した。中国においてインスタントメッセンジャーは、電子メールよりも支持を得ている。

 中国の2009年末時点でのインスタントメッセンジャー利用者は、前年比23.7%増の2億7700万人となる見込み。そのうち、携帯電話でのインスタントメッセンジャーは約3分の1となる9141万人。

 なお、2009年末時点でのインターネット利用者数はまだ発表されていないが、2009年9月末の段階で3億6000万人ということがわかっている。

 インスタントメッセンジャー利用者の構成は、男女比と学歴についてはインターネット利用者全体ととほぼ同じだが、年齢別ではインターネット利用者全体よりも20代の利用者が多い。

IMソフト利用率は「QQ」が9割以上、「Skype」は2.2%

 利用しているインスタントメッセンジャーのソフトでは(複数回答可)、騰訊(Tencent)の「QQ」ないしQQのビジネス向けインターフェイスの「TM(Tencent Messenger)」が97.4%。以下、中国移動(China Mobile)の携帯電話を包括したチャットソフト「飛信(20.5%)」、百度がリリースした「百度Hi(19.8%)」、オンラインショッピングで商談に利用するための「淘宝旺旺/阿里旺旺(17.4%)」、Microsoftの「MSN(Windows) Live Messenger(15.3%)」、中国ポータルサイト系のインスタントメッセンジャー「新浪UC(10.6%)」が続いた。「Yahoo! Messenger(4.6%)」と「Skype(2.2%)」は1割にも満たなかった。

 これらインスタントメッセンジャーを何種類同時に利用しているかという質問に対しては、「1種類のみ(36.6%)」という回答が最も多かったが、「2種類(28.3%)」「3種類(23.5%)」「4種類(7.1%)」「5種類以上(4.5%)」と、半数以上が複数のインスタントメッセンジャーを利用していた。なお、「1種類」という人が利用するサービスでも、QQ/TMが90.7%を占めた。

 利用するインスタントメッセンジャーのソフトを変更したことがあるという利用者は8.7%のみ。ただし、切り替え未経験の利用者でも現状のソフトがいいかどうか関心を持っており、具体的には(複数回答可)、「アカウント情報の漏えいがないかなどのセキュリティ(75.5%)」「ソフトウェアの性能(61.6%)」「機能の多さ(47.2%)」「インターフェイスの取っつきやすさ(44.0%)」に関心を持っている。

ネット経由で出会った人とチャットする割合が高い

 ソフト起動頻度は、「ネットに接続したらすぐに起動する(58.8%)」や「決まった起動の習慣はない(33.2%)」という人がほとんどだった。一方、「誰かに連絡する必要があるとき起動する(5.8%)」や「他の人に呼ばれたら起動する(2.2%)」は少数派だった。

 インスタントメッセンジャーの使い方(複数回答可)では、「文字によるチャット(93.2%)」が多いのはもちろんだが、「音声チャット(57.2%)」「ビデオチャット(54.1%)」「絵文字(52.7%)」「ファイル送信(52.4%)」「他のサービスを登録するため(50.2%)」「グループチャット(42.2%)」「チャットルーム(35.3%)」「アバター利用(34.7%)」「携帯電話利用者への連絡(32.1%)」「リモートのサポート(25.2%)」も利用されており、文字によるチャット以外に使っている人も多い。

 インスタントメッセンジャーを利用する場所(複数回答可)は、「自宅(84.4%)」のほか、「外出先(38.1%)」「インターネットカフェ(36.7%)」「企業(26.3%)」「学校/宿舎(15.8%)」となった。利用デバイスについては「デスクトップPC(87.1%)」が圧倒的に多く、以下は「携帯電話(33.0%)」「ノートPC(30.1%)」「PDA(2.3%)」となった。

 インスタントメッセンジャーに登録している友人・知人の数は、少ない方から「10人以下(9.1%)」「11~30人(25.0%)」「31~50人(13.2%)」「51~100人(19.2%)」「101~300人(28.1%)」「301人以上(5.4%)」。

 登録相手との関係(複数回答可)では、「親類・友人・クラスメート・同僚(94.7%)」が最も多く、以下「オンラインゲームでの知人(44.5%)」「インスタントメッセンジャーで知り合った知人(39.9%)」「ブログ経由での知人(28.1%)」「チャットルーム経由での知人(26.1%)」「出会い系サイト経由での知人(22.5%)」「BBS経由での知人(19.5%)」「オンラインショッピングサイト経由での知人(19.2%)」「製品のカスタマーサービス利用のため登録(17.1%)」「自動応答プログラム(12.5%)」となった。ネット経由で知り合った人をチャット相手に登録する人が多数いるわけだ。

IM経由のセキュリティ被害「受けたことがない」は16.1%

PCによるインスタントメッセンジャー利用者(青)と携帯電話によるインスタントメッセンジャー利用者の(赤)の収入分布。黄色はインスタントメッセンジャー利用者全体

 また、インスタントメッセンジャー用の非公式外部プログラム(中国語で「外挂」)をインスタントメッセンジャー利用者の26.1%が使用。使用する理由としては、「友人が使っていた/友人の薦め(28.3%)」「オリジナルのソフトより機能が豊富(22.9%)」「セキュリティがオリジナルより高い(15.8%)」「使用するときにPCに最初からインストールされていた(14.6%)」「広告を非表示にできる(13.5%)」が挙げられた。

 インスタントメッセンジャーで有料オプションを利用する意志があるかどうかについては、32.7%が「あり」と回答。有料で使ってもよいというサービス(複数回答可)では、多い回答順に「セキュリティの強化(27.0%)」「携帯電話にSMSやMMSが送れる(20.2%)」「オンラインストレージ(19.2%)」「携帯電話や固定電話との通話機能(18.0%)」「アバターの装飾(17.3%)」「携帯電話へのテレビ電話機能(12.9%)」「チャット記録の転送(11.7%)」「友人のPCのオンライン時の通知(11.3%)」「自身が作成できるグループ数上限の増加(10.7%)」「登録できる友人・知人のアカウント数の上限の増加(10.2%)」「有料動画(9.5%)」となった。

 セキュリティに利用者は神経をとがらせているが、セキュリティ関連の被害を受けていないのはわずか16.1%で、ほとんどの利用者が何らかの被害を受けている。具体的な被害(複数回答可)では、「スパム広告が送られた(63.2%)」「アカウント情報を盗まれた(48.7%)」「ウイルスに感染したWebぺージのリンクが送られた(43.6%)」「ウイルスが送られた(41.6%)」「違法な情報が送られた(41.4%)」などが挙げられた。アカウント情報を半数近くが盗まれた経験があるものの、インスタントメッセンジャー利用者の74.2%が、「一度もパスワードを変えたことがない/滅多にパスワードを変えない」と回答している。

 なお、インスタントメッセンジャー利用者の月収については、学生が多いことから「無収入(42.5%)」が半数近くを占めた。収入の少ない方から「500元以下(約6500円以下、0.9%)」「500~1000元(約6500円~1万3000円、5.1%)」「1001~1500元(約1万3000円~1万9500円、11.5%)」「1501~2000元(約1万9500円~2万6000円、11.9%)」「2001~3000元(約2万6000円~3万9000円、15.4%)」「3001~5000元(約3万9000円~6万5000円、8.1%)」「5001~8000元(約6万5000円~10万4000円、3.0%)」「8000元以上(約10万4000円以上、1.6%)」となった。ただしWindows Live Messengerや淘宝旺旺/阿里旺旺は、仕事用に利用される傾向があることから、他のインスタントメッセンジャーの利用者層の収入よりも高い傾向が見られた。


関連情報

(山谷 剛史)

2009/12/22 13:55