「ストリートビュー」監督する第三者機関設置を、日弁連が意見書


「多数の人物・家屋等を映し出すインターネット上の地図検索システムに関する意見書」全文は11ページ。日弁連のサイトでPDFで公開されている

 日本弁護士連合会の情報問題対策委員会は、「多数の人物・家屋等を映し出すインターネット上の地図検索システムに関する意見書」を1月22日付でとりまとめ、国や自治体などの関係機関およびグーグルなどの事業者に2月3日付で送付した。「Google マップ」の「ストリートビュー」などがプライバシーに与える影響を評価したり、保護基準を提示する第三者機関の設置の必要性を指摘している。

 この第三者機関は、例えば公正取引委員会のような行政から独立した委員会をイメージしているという。「ストリートビュー」のようなサービスで公開するために公道から人物や家屋を含む画像を撮影する事業者は、事前にこの第三者機関に意見を求める一方、第三者機関側ではプライバシーへの影響を評価。肖像権・プライバシー権の保護の必要性と、サービスの必要性・社会的有用性の程度を調査し、撮影エリアや条件などの基準を提示する。

 さらに、監督機関として、プライバシー侵害の恐れがある場合は是正勧告も行えるよう、第三者機関の設置について、個人情報保護法や各自治体の個人情報保護条例に盛り込むための改正を行うべきとしている。

 意見書では海外での事例として、ドイツのデータ保護委員会がGoogleと事前協議した上で、撮影される家屋の拒否権や事前の周知義務を定めたことなどを紹介している。しかし日本では、個人情報保護に関してこうした機能を持つ機関が存在しないため、そうした事前協議のないまま「ストリートビュー」のようなサービスが先行して提供されてしまったことで問題が発生しているという。

 情報問題対策委員会の副委員長を務める武藤糾明弁護士によると、日弁連ではかねてより、個人情報保護法が導入される際など、こうした第三者機関の必要性を訴えてきたという。しかし、実際に発生している問題を調査し、どこまで保護すべきかという妥当な判断を提示する仕組みがないまま施行されたことで、学校のクラス名簿を作成することについて過剰反応が出るなど社会で混乱が起きた。

 一方で、例えば今回の「ストリートビュー」のようなサービスがプライバシー権や肖像権の侵害にあたるのかどうかは訴訟を起こさなければ判断を得られないため、消費者が懸念をかかえつつも、日本の事情に合わせた保護基準が示されないままサービスが提供され続ける問題もあるとしている。実際、「ストリートビュー」でプライバシーを侵害されたなどとして訴訟を提起したり、弁護士に相談してくるような事例もあまり聞かれないようだ。

 意見書では、第三者機関が設置されるまでの間、国が設置する消費者委員会や自治体が設置する審議会などで、同様の対応を行うよう求めている。また、すでに画像が公開されている地域の自治体においては、事後調査を行い、判断を示すべきとしている。武藤弁護士は、審議会などで検討に入っている自治体もある一方で、判断を国任せにしている傾向があると指摘。自治体が条例などで緊急措置をとることは可能だと述べ、日弁連としてもそうした自治体があればサポートしていく考えを示した。

 意見書の提出先は、総務省および同省の「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」、消費者庁、内閣府の消費者委員会、「ストリートビュー」で公開済みエリアの自治体のほか、「ストリートビュー」を運営するグーグル、「LOCATION VIEW」を運営する株式会社ロケーションビュー、「ウォークスルービデオシステム」を運営するNTTレゾナントの3社。武藤弁護士は、これら3社とも可能な限り意見交換をしていきたいと訴えた。


関連情報


(永沢 茂)

2010/2/10 18:30