レビュー

20万円の高級ミラーレス「SIGMA fp」をWebカメラにしたら最高すぎた!

~「高級フルサイズミラーレスがWebカメラにベスト」といえるポイントとは?~

「SIGMA fp」をWebカメラ化してみたら……

 PC用のWebカメラの品薄状態がなかなか解消されないなか、Impress Watch各誌ではその代替策としてスマートフォンをWebカメラにしたり、一眼カメラをキャプチャーデバイスなどでWebカメラにしたりする方法を紹介してきた。

 なかでも個人的なおすすめは、わりと汎用的に使えて高画質も狙えるキャプチャーデバイスを利用する方法なのだけれど、ここへきて「WebカメラにSIGMA fp最強説」が急浮上してきている。当のSIGMA社内でもSIGMA fpをWebカメラに使用しているという例を、同社CEOがツイートして話題になった。

 元々フルサイズミラーレスカメラとして高い評価を受けているSIGMA fp。価格のほうもボディ単体で実売20万円前後と、高級フルサイズにふさわしい貫禄がある。

 それだけに“Webカメラ”としては破格のお値段になってしまうわけだけれど……SIGMA fpをお借りして実際に試してみたら、他のフルサイズ一眼カメラにないポテンシャルの高さを感じずにはいられなかった。なので、ここでは筆者が「SIGMA fpがWebカメラに最高すぎ」と思った4つのポイントをぜひお伝えしていきたい。

USBケーブル1本でWebカメラ化。キャプチャーデバイス不要でシンプル

フルサイズセンサー搭載機にもかかわらずコンパクトなSIGMA fp

 SIGMA fpは、フルサイズミラーレスカメラとして世界最小・最軽量をうたっている。つまり他のフルサイズ一眼カメラと比べてスペースに限りのあるデスク上にも置きやすい、ということ。オンライン会議で自撮りする際には、こうしたコンパクトさは大きなメリットだ。

 そして、その利点をさらに高めているポイントが、付属のUSBケーブル1本でWebカメラ化できるところだ。

USB Type-Cポートを側面に用意

 PCとUSB接続し、カメラ側で「ビデオクラス(UVC)」を選択すれば、ビデオ会議ツールやキャプチャーソフトなどで映像・音声ソースとして「SIGMA fp」を選択できるようになる。一般的なUSB接続のWebカメラとほとんど変わらない手間で使えるわけだ。HDMI接続のキャプチャーデバイスを利用するときとは違って、取り回しに難儀することもある太いケーブルを扱う必要がなく、そのときにカメラ側のマイクロHDMIコネクタにかかる負担を気にするようなこともない。

付属のUSBケーブルで接続
カメラ本体の画面上で「ビデオクラス(UVC)」を選択
ビデオ会議ツールで映像・音声ソースとして「SIGMA fp」を選べば完了だ

 ビデオ会議に適した画面サイズ16:9の動画モードにするのも、本体のスイッチを「CINE」にスライドさせるだけ。

 いつもは写真撮影に使っている場合でも、素早くビデオ会議用の設定に切り替えられる。ちなみに、SIGMA fpには電力消費を抑えるための「オートパワーオフ」機能が用意されているが、WebカメラにすべくUVCモードに切り替えると、オートパワーオフは作動しなくなる。つまり、ビデオ会議中に電源が切れることはなく、設定を切り替えるだけで、いつでも即座にWebカメラ化可能、というわけだ。

 一方、HDMI接続で使う場合は、オートパワーオフが機能するので設定を変更しておいたほうがいい。設定変更は、「MENU」画面の「SYSTEM」タブで「パワーセーブ」の「オートパワーオフ」を「切」にしておくことで行える。

本体のスイッチを「CINE」に切り替えればビデオ会議にも最適な16:9の映像になる
HDMI接続で使う場合は、「オートパワーオフ」を「切」にしておこう

とはいえ、キャプチャーデバイスを使いたい派にもおすすめできる

付属USBケーブルの長さは1メートルほどで、SIGMA fpを離れた場所に置けない

 USBケーブルだけでWebカメラ化できるのは便利だけれど、それだとイマイチ都合が良くないときもある。

 付属のUSBケーブルは1メートルほどの長さしかなく、PCから離れたところにSIGMA fpを設置することができないのだ。PCのあるデスク付近にSIGMA fpを固定した場合、装着しているレンズによっては自分の顔のアップしか映らないこともある。少し動いただけで顔がフレームアウトしてしまうのはあまり印象が良くないから、ある程度“余白”を作りたいところだ。

デスク上にSIGMA fpを置き、キットレンズの「45MM F2.8 DG DN | Contemporary」で撮影してみると……
顔が収まりきらず、おっさんの肌が生々しく映し出される事態に
市販の3メートルのUSBケーブルに交換してデスクの外側に設置してみた

 そうならないよう十分に離れた場所から撮影するためには、長いUSBケーブルが必要となる。

 ただ、SIGMA fpが対応している規格はUSB 3.1 Gen.1で、最大5Gbpsの転送速度を誇るもの。この高性能を活かしたまま可能な限り距離を稼ぐとしても、最大3メートル程度までとなる。それを超える長いUSB 3.1 Gen.1対応ケーブルは見当たらず、仮に存在していたとしてもデータ転送に支障が出る可能性がある。

 ちなみに、SIGMAとしては「メーカー推奨は同梱品の1mケーブルで、それ以外のケーブルでは動作確認していない」とのこと。特に長いケーブルは規格としてギリギリな場合も多いと思われるので、事前に動作確認するなど、自己責任でのフォローできるようにした方がいいだろう。

【45mmレンズ+長めのUSBケーブルで引きの構図】
先ほどと同じ45mmのレンズで撮影。問題なくバストアップを収められた(Zoom上のプレビュー)

 3メートルで十分な人もいるだろうけれど、もっと遠くに設置して視界を広くし、全身や周囲の様子も見えるようにしたい、という人もいるはず。そんなときはHDMIケーブルを使うのがおすすめ。SIGMA fpはHDMI出力にも対応しており、5メートルや10メートルのHDMIケーブルも普通に販売されていて、しかも比較的安価に手に入る。

 キャプチャーデバイスと組み合わせることになるためUSBケーブル1本のようなお手軽さは失われてしまうが、SIGMA fpの設置場所をフレキシブルに変えたいときにはHDMI接続を検討するのもいい。レンズや目的に合わせてUSBとHDMIの2通りの接続方法を選べるのがSIGMA fpの利点でもあるわけだ。

5メートルのHDMIケーブルで引いてみた
SIGMA fpはHDMI出力にも対応している
5メートルのHDMIケーブルで、デスクから離れた場所に三脚で設置
45mmレンズでも腰上を映し出せる位置まで引けた(Zoom上のプレビュー)
ズームレンズ(24-70mm)を使ってみた
より広角にしたり、寄ったりできるズームレンズ「24-70mm F2.8 DG DN | Art」に交換
24mmだとデスクを含めて広く映せる(Zoom上のプレビュー)
70mmでは手で掲げた資料の細かい文字までしっかり見せられる(Zoom上のプレビュー)

“空気感”がエモい! 4Kにも対応する圧倒的高画質

 筆者は他メーカーのフルサイズ一眼カメラを2台所有しているのだが、SIGMA fpの映像を見た瞬間、それら2台のフルサイズカメラとは明らかに異なる、突き抜けた描写力の高さを感じた。

 その場の“空気感”が感じられるというか、自然と“雰囲気”が生まれるというか……。手持ちのフルサイズカメラとはひと目で違いがわかるレベルで、自宅にいながらまるで本格的なスタジオセットを組んでいるかのように錯覚するほど。

【他のフルサイズ一眼カメラの映像】
他のフルサイズ一眼カメラの映像(Zoom上のプレビュー。HDMI接続)
【SIGMA fpの映像】
SIGMA fpの映像。こうして並べてみるとディティールの出方も、雰囲気も違う(Zoom上のプレビュー。USB接続)

 その理由はSIGMA fpならではのこだわりの画づくりや、フルサイズらしい美しいボケ味によるところが大きいだろう。

 また、センサーの大きさなどからくる“明るさ”も無視できない。ビデオ会議では照明不足で表情が見えない状態になっていることも少なくないが、SIGMA fpだと対応感度(ISO)が幅広く、レンズの絞りも自在に変えられるため、やや薄暗い部屋でも明るく映し出せる。しっかりした照明があるに越したことはないけれど、照明なしでも対処しやすいのはフルサイズカメラだからこそ。

【あえて薄暗い部屋に……】
あえて薄暗い部屋にしてISO感度を上げた映像。自然な感じで見られる(Zoom上のプレビュー)
【デスクライトを当ててみた】
向かい側からデスクライトを当ててみた。ハイライトやシャドウが強く出ているが、好みによってどちらを選んでも良さそうだ(Zoom上のプレビュー)
USB接続なら4Kの超高解像度で出力できる

 そして、USBケーブルで接続している場合、最大4K(3840×2160ドット)の解像度で取り込めるのもSIGMA fpのポイント。

 およそ一般のWebカメラでは実現不可能な高画質を実現できるのだ。もちろん、実際に相手に届く映像はほとんどの場合4K解像度ではないし、データ圧縮によってある程度画質が低下してしまう。それでもSIGMA fpだからこそ生まれる“空気感”や“雰囲気”までは失われない。他の人とは段違いの映像クオリティで、ビデオ会議での発言にも説得力が増す……かもしれない。

バッテリー残量を気にする必要がない安価な純正アダプターが用意

SIGMA fpのバッテリー。動画撮影の場合、仕様上の最長稼働時間は2時間とされている

 一眼カメラをWebカメラ化してビデオ会議に使うとき、気になるのはカメラのバッテリーもち。1時間で終わるはずが2時間、3時間と長引いてしまったりすると、バッテリーが切れてしまわないかハラハラすることもある。

 交換用の予備バッテリーがあったとしても、議論が白熱しているときはバッテリー交換している余裕はないかもしれない。

純正の電源アダプター「AC ADAPTER SAC-7P JP」

 そんな場面で便利なのが純正の電源アダプター「AC ADAPTER SAC-7P JP」だ。

 本来バッテリーを挿入する部分にこれをセットすることで、電源コンセントから電力供給できるようになり、時間制限なしにSIGMA fpを稼働させられる。ビデオ会議の前や途中でバッテリー残量を気にする必要はなくなるし、予備のバッテリーをいくつも準備しておくこともない。

バッテリーの代わりに挿入
横にあるグロメットを半分外し、そこにケーブルを通す
接続完了
映像出力用と合わせてケーブル2本になってしまうが、これでバッテリー残量を気にせずビデオ会議できる

 なにより、バッテリーを繰り返し充電しながら稼働させるとバッテリーの劣化が早まってしまうところ、アダプターを使えばその心配が一切なくなるのがうれしい。ビデオ会議にはもはや必須のアクセサリーと言っても過言ではないだろう。他メーカーの同種の製品と比較してリーズナブルな価格で提供されているので、SIGMA fpとセットで購入しておきたいところだ。

超高性能な趣味カメラ&Webカメラとして、“ビジネスマン”にこそ使ってほしい

 USBケーブル1本でWebカメラ化できる手軽さ、HDMI接続にも対応できる柔軟性、4Kにも対応する圧倒的な高画質、バッテリー切れを気にしなくていい電源アダプターなど、SIGMA fpはまさにWebカメラに最適かつ最高の機能・性能を備えているのでは!? というのが筆者の素直な感想だ。

 たしかにSIGMA fpをWebカメラだけに使うのはもったいないし、もしかするとオーバースペックなのかもしれない。ビデオ会議向きの広角レンズも揃えようとすれば、本体と合わせて30万円超は覚悟しなければならないコストの高さもネックといえばネックだ。

 それでも、写真が趣味でこれからフルサイズミラーレスカメラにステップアップしようと考えているビジネスマン諸氏においては、“Webカメラ性能”の高さを根拠に、「仕事にも使うから」あるいは「仕事で必要だから」というまっとうな理由も作り出せるのではないか。あとは、あなたの仕事、テレワークに対する意欲が問われている。そう考えて行動に移すべきときが来たのかもしれないぞ!