レビュー

TP-Linkの高コスパWi-Fi 6ルーターに弟分「Archer AX4800」が登場! 実のところこれで十分?

 最新規格のWi-Fi 6ルーターも、普及価格帯のモデルが出揃ってきて、新しくルーターを買うなら迷わずWi-Fi 6のモデルを選びたいところだし、そろそろ一般家庭での移行を考えてもいい状況になってきた。

 例えば、テレワークで自宅からオンライン会議に参加するにも、Wi-Fiルーターの選択は重要なポイントになる。

コスパ最強のWi-Fi 6ルーターが登場

 今回紹介するTP-Link「Archer AX4800」は、Wi-Fi 6対応ルーターで、最大通信速度が5GHz帯接続時で4324Mbps、2.4GHz帯で574Mbpsのデュアルバンドモデル。

 6本の外付けアンテナで6ストリームまで対応し、1.5GHz動作のトリプルコアCPU搭載など、内容的には一般家庭では十分な性能を持つ魅力的でスタンダードなWi-Fi 6ルーターとなっている。

TP-Link「Archer AX4800」。自由に動かせる6本の大きな外付けアンテナが特徴的

 兄貴分ともいえる同社の「Archer AX73」と比べると、ほぼ似たスペックで5GHz帯の最大通信速度が4804Mbpsに対して4324Mbpsと微妙に落ちる。だが、現状のWi-Fi 6子機は、PCが160MHz幅×2ストリームの2402Mbps、スマホでは80MHz幅×2ストリームの1201Mbpsが速度の上限となる。

 Amazon.co.jpでの実売価格(2021年8月時点)は税込1万1600円で、「Archer AX73」は1万2900円なので、スペック上の最大通信速度がわずかに劣る点を割り切れば、かなり割安感のあるモデルと考えることができる。ちょうど価格をチェックした時点では、5%オフのクーポンまで配布していた。

 なお、さらにリーズナブルな「Archer AX50」というモデルもあり、2402Mbpsまでならこちらでも十分かと思えるが、最新の暗号化方式であるWPA3と同社のメッシュWi-Fi機能「OneMesh」に対応していないので注意して欲しい。

Archer AX4800Archer AX73Archer AX50
実売価格※1万1600円1万2900円9800円
CPUトリプルコア、1.5GHzデュアルコア
Wi-Fi対応規格IEEE 802.11ax/ac/n/a/g/b
バンド数2
160MHz幅対応
最大速度(2.4GHz)574Mbps
最大速度(5GHz-1)4324Mbps4804Mbps2402Mbps
最大速度(5GHz-2)---
チャネル(2.4GHz)1~13
チャネル(5GHz-1)W52/W53/W56
チャネル(5GHz-2)---
新電波法(144ch)×××
ストリーム数64
アンテナ外付け×6外付け×4
WPA3×(WPA2)
IPv6 IPoE×
DS-Lite×
MAP-E×
WAN1Gbps×1
LAN1Gbps×4
USBUSB 3.0×1(Time Machine、FTP、メディア、Samba)USB 3.0×1(Time Machine、FTP、メディア)
動作モードRT/AP
ファームウェア自動更新
メッシュ対応○(OneMesh)×
セキュリティHomeShieldHomeCare
スマホアプリ○(Tether)
本体サイズ(幅×奥行×高さ)262.2×144.3×51mm272.5×147.2×49.2mm260.2×135×38.6mm

※Amazon.co.jp調べ

日本国内の各IPv6 IPoE接続サービスに対応外付けアンテナ6本で、LEDは消灯もできる

 TP-Linkは中国深センを拠点とするメーカーで、コストパフォーマンスの高いネットワーク関連製品を多数投入し、世界的にも高い人気を誇っている。近年は日本国内の事情にも柔軟に合わせてきていて、当然ながらパッケージやマニュアル、設定用アプリ「Tether」が完全に日本語化されている。

パッケージと内容物。簡易マニュアルを含めて日本語化されている。ACアダプターは小型だ

 さらに、NTT東西のフレッツ光回線で使われている「v6プラス」や「OCNバーチャルコネクト」のMAP-E、「transix」のDS-LiteといったIPv6 IPoE(IPv4 over IPv6)接続サービスにも対応していて、これらの回線を基本的には自動で認識してくれる。

 本体のデザインは、上面に光沢のある放射状の意匠が施され、状態表示のLEDも見やすく悪くない。LEDがうるさく感じるようなら、背面のボタンや設定で消灯させることもできる。

特徴的な天板パネルの放射状デザイン
正面側にはLEDがあるのみ。とんがったデザインで、こちら側を下に縦置きは不可
LEDによる状態表示。それほどまぶしくないが、タイマー設定やボタンでオフにすることもできる
背面にギガビット対応のWAN×1、LAN×4を装備。LEDやWi-Fiオン/オフ、WPSなどのハードウェアボタンも背面にまとめられている

 海外モデルには多いが縦置きは考えられていないので、自由に動く大きな6本のアンテナも含め、それなりの設置スペースは必要だ。ただ、放熱やWi-Fi電波の飛びを考えれば有利なので、棚の上などにうまく設置場所を確保したい。ACアダプターはコンパクトなので、こちらはスペースの心配は無用だ。

専用スマホアプリ「Tether」で簡単設定WPA3への変更はウェブブラウザーで

専用スマホアプリ「Tether」で手軽に設定できる

 Android/iOS向けの「Tether」アプリが用意されていて、スマホで簡単に設定ができる。初回設定もアプリで行える。添付シールに記載された初期SSIDと暗号化キーでルーターにWi-Fi接続して設定を進めよう。

 設定はウィザード形式でとてもスムーズに進められる。途中でルーターの管理用IDやSSID、暗号化キーにオリジナルのものを設定するよう促される。また、IPv6 IPoE接続の設定もアプリから行える。

アプリの設定画面。全ての項目ではないが、ほぼ網羅されている
IPv6 IPoE接続サービスの接続もアプリから可能

 ただ1点だけ、アプリでインターネットへの接続とWi-Fiの設定はできるが、アプリではWi-Fi設定の暗号化に関する変更ができず「WPA/WPA2パーソナル」に設定されてしまうので注意して欲しい。

 いったん接続設定を済ませた後にウェブブラウザーでアクセスし、暗号化の設定を新しくてよりセキュリティが強固な「WPA2/WPA3パーソナル」へ変更しておくことを強くお勧めしておきたい。

 Windows 10やmacOS、Android、iOSの最新版であればWPA3に対応しているので、せっかく搭載されているのに使わない手はない。なお、互換性を優先しているようでWPA3のみに絞る設定はできず、WPA2との互換モードでの設定となる。

アプリではWPA3に設定がされないので、ブラウザから設定を変更しておこう

家庭内のセキュリティを保護する「HomeShield」が使いやすい

 ルーターの付加機能も豊富で、USB 3.0ポートにストレージを接続するとNASとしてファイルやメディア共有ができるほか、公共のフリーWi-Fi接続時などに便利なVPNサーバーに加えてOpenVPNの証明書作成機能も持っている。外出先でインターネット側からアクセスする先に活用するDDNSにも対応していて、TP-LinkIDでログインすれば活用できるようになっている。

本体右側面のUSB 3.0ポートにストレージを接続すれば簡易NASに

 また、同社独自のメッシュWi-Fi機能である「OneMesh」にも対応していて、Wi-Fiエリアを拡張したくなったら、対応機器を追加してWi-Fiの電波エリアを簡単に拡張可能だ。マンションなど鉄筋コンクリートの家屋では、電波が通りにくい場所ができてしまう可能性もあるので、後々便利な機能だ。

 特筆すべきは、セキュリティを高めるホームネットワーク保護システム「HomeShield」を搭載していること。Windows向けの無料セキュリティソフトで知られるドイツAviraの技術が使われていて、セキュリティ強度チェック、IoTデバイス識別、新たなデバイスの接続通知、ペアレンタルコントロール、QoS(デバイスごとに通信優先度を設定)、サマリーレポートの各基本機能は、本機を使っている限り無料で使い続けられる。

ホームネットワーク保護システム「HomeShield」の1機能「ネットワークスキャン」。セキュリティ強度をチェックしてくれる

 中でも家族利用で便利なのが、ペアレンタルコントロールの機能だ。家族をプロファイルに登録して複数デバイスを指定し、コンテンツフィルターやURLブラックリスト、就寝時間制限などほとんどの機能を無料で利用できる。

 閲覧した上位5サイトのURLが表示されるので、有害なサイトにアクセスしていないかをチェックでき、必要に応じてブラックリストに入れておけば閲覧を制限できる。例えば、YouTubeの見過ぎを防ぐためにテレビでだけ再生できるようにしておき、個人デバイスではYouTubeをブロックする、というような使い方もできる。

 さらに、「Tether」アプリ内でPro版をサブスクリプション購入(月額650円または年額5900円)すれば、フィッシングサイトブロック、侵入防止、DDoS保護、リアルタイムIoTデバイス保護、感染デバイス隔離、閲覧URLを含めた詳細なレポートなどの追加の機能が利用でき、よりセキュリティを強固にできる。

 ただし、IPv6 IPoE接続している場合は、通信が基本的にIPv6で行われるため、IPv4で端末を検出するペアレンタルコントロールなどの機能は利用できない。VPNサーバーなど、同様に利用できない機能がいくつかある。

ペアレンタルコントロール機能。プロファイルに対してURL指定やコンテンツフィルターで制限できる
コンテンツフィルターは、内容によって制限をかけることが可能

通信速度も十分に高速使いやすいペアレンタルコントロールで家族にオススメ

 通信速度は、木造2階建て一軒家の1階に設置したArcher AX4800に、最大2404MbpsのノートPCと、1201MbpsのiPhone 12を5GHz帯でWi-Fi接続し、iPerf3により速度を計測した。iPerfサーバーのPCは、Wi-Fiルーターに有線LANに接続している。

 結果はかなり優秀な速度だ。Wi-Fiルーターのすぐ横で計測し、ほぼ有線LANポートの限界まで使えている「超近距離」はともかく、同じ部屋の離れた場所である「近距離」はよくある一般的なシチュエーションだろう。2階の少し離れた「中距離」でも600Mbpsあたりで使えているので、実用上は全く問題ない。iPhone 12では、家中どこでも安定して通信ができていて文句なしだ。

LAN内Wi-Fi転送速度結果
超近距離 1階近距離 1階中距離 2階
Windows PC下り944864630
上り906863206
iPhone 12下り727406332
上り607227128

 ちなみに、1Gbpsの有線LANポートを2本まとめて、より高速な転送を可能にするリンクアグリゲーションにも対応しているので、PCとNAS間などLAN内でさらに高速転送させる用途にも活用できるだろう。

 このArcher AX4800は、完成度の高いミドルレンジモデルであるArcher AX73の機能はそのままに、よりコストパフォーマンスを高めたモデルとなっている。最大通信速度こそ微妙に限定しているが、テスト結果の通り一般的な家庭では十分なWi-Fi速度で、見方によっては単に価格だけを下げてしまったように見えてしまうほどリーズナブルな仕上がりだ。

 今まで価格重視でなるべく安価なモデルを選んできたが性能面で満足できなかったというなら、Wi-Fi 6への買い換えでぜひ狙って欲しい、絶妙な価格帯に設定されている。

 国内ネット回線の事情にあわせてIPv6 IPoEの各種サービスにもキッチリ対応していて、独自メッシュで将来のエリア拡張も可能と、万人に安心して勧めることができる。特にペアレンタルコントロールが優秀なので、子どものWi-Fi利用を細かくコントロールしたい家族にもお勧めできるモデルだ。