レビュー

8千円の中継機でもWi-Fi 6メッシュができる! 1万3千円のTP-Linkルーターで組んでみた!

最大4804MbpsでIPoE IPv6にも対応、Archer AX73

 最新のスマホやPCには、Wi-Fi 6対応製品が増えてきた。とはいえ、ルーターがWi-Fi 6に対応していなければ宝の持ち腐れだ。

 そのWi-Fi 6に対応するルーターも普及期に入り、お買い得なモデルが花盛りという状況で、導入を検討するのには、ちょうどいい時期になって来ている。

 とはいえ、Wi-Fi 6ルーターを導入したところで、Wi-Fiが快適に使えるエリアが大きく広がるわけではない。ちょっと広めの一軒家やファミリータイプ間取りのマンションでは、ルーター1台だけでは、どうしても電波の手薄な場所ができてしまう。

 そんなときに便利なのがメッシュWi-Fiだ。各社が力を入れているが、Wi-Fi 6のメッシュルーターはまだどれも比較的高価なため、二の足を踏んでいる人も多いのではないだろうか。今回は、中継機と組み合わせて、ちょっとリーズナブルにWi-Fi 6メッシュ環境を構築する方法を紹介しよう。

Wi-Fi 6ルーター「Archer AX73」と、Wi-Fi 6中継機「RE605X」で、「TP-Link OneMesh」のメッシュ環境を構築してみる

 今回紹介するWi-Fi 6ルーターは、TP-Link「Archer AX73」というスタンダードモデル。最大通信速度が5GHz帯接続時で4804Mbps、2.4GHz帯で574Mbpsのデュアルバンドに対応する。

 これに同じくTP-Linkの「RE605X」というWi-Fi中継機を使うことで、電波の届くエリアを拡張してみたい。TP-Link独自の「OneMesh」という機能で、メッシュエリアとして広げることが可能なのだ。設定後は、2台分のWi-Fi電波圏内では同じSSIDのまま、強い電波の方へシームレスに自動で切り替わるようになる。

 ただ、あくまでもデュアルバンドでのメッシュになる。メッシュでのエリア拡張では、機器間もWi-Fiの無線で接続する。これはバックホール(backhaul)とも呼ばれ、デュアルバンドの2つのうち1つは、このバックホールでの通信に使われる。

 ちなみに、Wi-Fi中継機(エクステンダー)とメッシュWi-Fiは動作が似ているが、中継機は同じエリアに1台のみしか接続できないのに対し、メッシュは複数台を同じSSIDで使い、子機からの接続先も自動でシームレスに切り替わるという違いがある。

メインのルーターは1万3千円の「Archer AX73」

 ではまず、メインとなるルーターとメーカーのTP-Linkから紹介していこう。

 TP-Linkは中国深センを拠点とするネットワーク関連メーカー。コストパフォーマンスの高さから世界的にも人気で、IDC調査の無線LAN機器プロバイダーとして世界シェア1位を10年連続で獲得しているほど。

 日本国内の事情にも柔軟に対応してきていて、当然ながらパッケージやマニュアル、設定用アプリ「Tether」は完全に日本語化されているので安心して欲しい。

 スタンダードモデルのArcher AX73は、6本の大柄な外付けアンテナが特徴的。6ストリームまで対応し、1.5GHz動作のトリプルコアCPUを搭載するデュアルバンドモデルだ。

 ハイエンドやゲーミングではないスタンダードなタイプで、同社のこのクラスにはいくつかあるモデルの中でもトップのスペックを誇り、一般家庭で複数人の家族がPCでリモートワークをしたり、スマホやタブレットなどでYouTubeやNetflixを視聴したりするには十分だ。

メインのWi-Fi 6ルーターは、TP-Link「Archer AX73」

 海外のメーカーながら、NTT東西の「フレッツ 光」回線で使われている「v6プラス」や「OCNバーチャルコネクト」のMAP-E、「transix」のDS-LiteといったIPv6 IPoE(IPv4 over IPv6)接続サービスにも対応し、接続設定時に自動で判別してくれるのもありがたい。

 コストパフォーマンスはとても良好で、筐体サイズは派手なアンテナ含めて大柄。天面は「よく見ると中華風」な独特なデザインだ。

Archer AX73背面。ギガビット対応の4つのLANポート、電源スイッチなどがまとめられている

 単体での使い勝手については、『安さ以外にも魅力満載 高速で設定カンタンなWi-Fi 6ルーター TP-Link「Archer AX73」』ですでにレビューしているので、そちらも参照して欲しい。

天面のデザインは独特の文様が入っている。ここはスリットになっていて通気が考えられている
LED表示は上ではなく、サイドに付いている

 ちなみに、Archer AX73から5GHz帯の速度を4324Mbpsへほんのチョットだけ抑えてリーズナブルな仕上がりにしている「Archer AX4800」というモデルもあり、『TP-Linkの高コスパWi-Fi 6ルーターに弟分「Archer AX4800」が登場! 実のところこれで十分?』でレビューしている。デザインの好みや価格で、こちらを選択するのもアリだ。

 回線への初期接続設定は専用の「Tether」アプリからスマホで簡単に行える。もちろんウェブブラウザーでの設定も可能で、「クイックセットアップ」という項目から、同じように初期設定ができる。

 ただ、この「Tether」アプリでは、最新のWPA3暗号化の設定ができず自動的にWPA2が選ばれる。WPA3を設定したい場合は、初期設定後でもいいので、一度ウェブブラウザーで設定する必要がある。

まずは、「Wi-Fi情報カード」に書かれた初期SSIDに接続する
「Tether」アプリを起動すると、Wi-Fiルーターが表示されるのでタップする
設定ログイン用パスワード設定後、回線の設定が始まる。適正なタイプを選ぶか「自動検出」する
「スマートコネクト」は2.4GHz帯と5GHz帯をひとつのSSIDで使うもの。オフにして明示的にバンドを選ぶことをオススメする
2.4GHz帯と5GHz帯を別のSSIDに設定した
「Tether」での設定後、ウェブブラウザーでログインし、WPA3の設定をしておくといい

 ただ、今回「OneMesh」で使用する「RE605X」はWPA3の設定はできないので、WPA2のままでもいいかもしれない。なお、AX73をWPA3に設定しても接続互換性はあるので、「OneMesh」の設定自体は行える。

 ほかにも、Wi-Fiの機能である「OFDMA」、「TWT」や「MU-MIMO」のオンオフ、チャンネル幅の設定については[詳細設定]―[ワイヤレス]でのみ行える。このため細かな設定をしたい場合は「http://tplinkwifi.net/」へアクセスし、ウェブブラウザーで設定をすることになる。

「OneMesh」に対応のWi-Fi 6中継機「RE605X」

 では、今回のキモとなる「メッシュもできる8千円の中継器」、RE605Xを紹介しよう。

 Wi-Fi中継機の「RE605X」は、Wi-Fi 6で「OneMesh」にも対応した最新モデル。1世代前の「RE505X」と外見は全く同じだが、2.4GHz帯でもWi-Fi 6の574Mbps(RE505Xは300Mbps)で接続できるところが違いとなる。5GHz帯は2ストリームの1201Mbps。AX73と比べて見劣りするが、スマホは通常2ストリームの1201Mbpsなので、現実的な速度ではある。

「OneMesh」に対応するTP-LinkのWi-Fi 6中継機「RE605X」

 ギガビット対応の有線LANポートを1つ備えているので、有線LANしかないゲーム機やレコーダー、スマートテレビなどを接続することも可能だ。ほかにも、この有線LANポートを使うと、中継機ではなくWi-Fiアクセスポイントとしての活用もできる。

LEDランプのインジケーター。右のスイッチは電源ボタンではなくWPSボタン
ギガビットの有線LANポートを1つ備える
直接コンセントへ挿し込む形状。アンテナは自由な位置に動かせる
コンセントの上段にさせば、下段は使えなくもない

 では、「Tether」アプリでRE605Xをデバイスとして追加し、「OneMesh」のメッシュWi-Fiを実際に構成する手順を確認していこう。基本的には、アプリの画面に従っていくだけだ。

「Tether」アプリを起動し、設定するデバイスとして「中継機」を選ぶ
「RE605X」をコンセントに挿して電源をオンにする
初期SSIDに自動で接続するので接続を許可する
下に「OneMesh」と書かれたArcher AX73のSSIDを接続先として選ぶ
2.4GHz帯と5GHz帯それぞれのパスワードを確認して接続を行う
中継機の設置位置はとても重要だ。画面の指示に従って場所を調整しよう
Archer AX73のSSIDにRE605Xを接続でき、OneMeshのデバイスとして設定が完了した
ウェブブラウザーで確認すると、メッシュデバイスとして動作していることなど、さらなる詳細が分かる

 なお、RE605Xは、TP-Link以外の他社製ルーターと組み合わせて通常の中継機としても使用できる。この場合はSSIDを2つ(同一でも可)設定することになる。

 なお、『自宅Wi-Fiの“わからない”をスッキリ!【使いこなし編】第15回 Wi-Fi中継機でエリアを拡張しよう(1)』では、TP-LinkのWi-Fi中継機を設定する方法を紹介しているので参考にして欲しい。

広いエリアで使うならメッシュWi-Fiの効果は絶大

 メッシュ環境での通信速度は、木造2階建て一軒家の1階に設置したArcher AX73に、最大1201MbpsでWi-Fi 6接続できるiPhone 12を5GHz帯で接続し、iPerf3により速度を計測した。iPerfサーバーのWindows PCは、AX73の有線LANポートへ接続している。

 OneMeshで構成したメッシュエリアはSSIDが同一となるので、AX73とRE605Xのどちらに接続しているかがスマホ側からは判断しにくい。これはRE605Xのウェブブラウザ-設定の「ステータス」画面を確認することで判断できる。RE605Xを経由したメッシュ接続かどうかは、この方法で確認しながら計測した。

RE605Xの設定画面で「ステータス」を表示。RE605X経由での接続かどうかを判別できる

 Archer AX73単体での通信時は、近距離では755Mbpsとかなり高速。ワンルームならこれだけでも十分快適だろう。2階でも、AX73と比較的近い地点では180Mbpsで、メッシュとの体感差はそれほどなかったが、かなり離れた位置では速度も130Mbpsへと下がった。さらに向きを変えたりすると、通信時に引っかかる感じが出てきて、快適とは言えなくなってくる。

 一方、2階に設置したRE605Xを経由した場合、2階の近距離で計測すると下り201Mbpsで、AX73単体の場合よりも若干高速だ。そして上りはAX73単体の90Mbpsに対し202Mbpsと、かなり高速化された。そこから離れた地点では、さらに130Mbpsに対して201Mbps、上りに至っては86Mbpsに対して151Mbpsとかなりの違いが見られる。

 メッシュ同士で比べた場合も、2階のRE605Xから近距離と遠距離で、それほど大きな速度面での違いは見られない。このように、速度はそこそこではあるが、常時安定して通信できるエリアが広くなり、どこでも快適に使えるのが、メッシュWi-Fiの真骨頂だ。

AX73とRE605XのOneMeshでの速度計測結果

「8千円と1万3千円」で2台のメッシュ、さらに安くあげる方法も……

 さて、最後に現在の価格状況についても言及しておこう。

 Amazon.co.jpでの実売価格(2021年9月時点)を見ると、AX73が1万3559円に1000円オフクーポンが付き、RE605Xが8千円に600円オフクーポンが付く状態だ。つまり、2万円を切る1万9959円でWi-Fi 6のメッシュ環境を構築できることになる。

 さらに、AX73よりもリーズナブルな下位モデルであるArcher AX4800なら、1万1600円に1000円オフクーポン付きとなる。実際の性能は大きく変わらないので、悩ましいところ。一方で、RE605Xとは2.4GHz帯がWi-Fi 6に非対応である点だけが違うOneMesh対応中継機「RE505X」も6900円(クーポンなし)で販売中。AX4800とRE505Xの組み合わせなら、さらに約3000円程度節約できる。

 なお、今回紹介したOneMeshには、TP-Linkの全製品が対応しているワケではない。例えば1万円を切る安価なWi-Fi 6ルーター「Archer AX50」は、OneMeshには非対応。一方の中継機はOneMesh対応モデルが多いが、Wi-Fi 6に対応するのはRE605XとRE505Xのみで、ほかはWi-Fi 5での接続となるため速度が遅くなる。「TP-Link OneMesh対応機器」のウェブページでチェックするといいだろう。

 広めの自宅でTP-LinkのOneMeshでうまく構築すれば、かなりリーズナブルにWi-Fi 6のメッシュエリアを手軽に構築できる。価格で手を出しあぐねていたなら、ぜひ気軽に試してみて欲しい。