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【イベントレポート】

コンピュータと家電の融合が大きなテーマに

'99 International Consumer Electronics Showレポート
本格的なホームネットワーキングの時代に突入

■URL
http://www.cesweb.org/

展示会場

 消費者家電の最大規模のトレードショー「'99 International Consumer Electronics Show(CES)」が、1月7日から10日までラスベガスで開催された。1,800社以上の出展企業、9万人を超える来場者で盛況ぶりをみせるCESでは、デジタルホームネットワーキング、インタラクティブTVなど、PCと家電の融合が大きなトレンドとなった。ここでは、基調講演の様子とインターネット関連の注目企業や最新発表をレポートする。



●1日目基調講演:米SonyのHoward Stringer会長兼CEO
 「ホームネットワーキングの実現には企業間の協力が必要」

http://www.sel.sony.com/ (Sony Electronics)

Howard Stringer
Sony Electronics
Howard Stringer
会長兼CEO

DCR-TR700
会場で人気を集めていた
「Digital 8」方式の
「DCR-TR700」

 米Sony ElectronicsのHoward Stringer会長兼CEOは初日の基調講演で、デジタルホームネットワーキングを実現するためには、家電、コンピュータ、コンテンツ企業が協力して誰でも使える製品をつくることが重要であると語った。同氏は「インターネットは、技術的な知識がまったくないユーザーでも簡単に使えるNetscapeブラウザーの登場により、爆発的に普及した。これと同様なことがデジタル家電にもいえる。すべての電化製品がネットワークにつながるような社会の実現のためには、革新的な製品の開発だけでなく、使いやすい製品の開発に焦点をあてることが必要だ」と語った。

 また、使いやすい製品の実現のためにはデバイス同士がコミュニケートするようなシステムが必要であり、企業間で協力してこれらの技術の標準策定を推進していくべきだとした。この例として同氏は、家電製品をネットワーク化するためのJavaベースのミドルウエア技術「Home Audio/Video Interoperability(HAVI)」をあげた。ここで同社は長年のライバルだった松下と協力して標準策定にあたっている。

 同氏は「PCとTVの融合市場では、数社がすべての市場シェアを獲得するというよりも、さまざまな種類の技術が共存して業界の競争をますます促進するものになるだろう」と語った。

 なお、Sony Electronicsは同日、「Digital 8」方式を使用し既存の8ミリビデオテープにデジタル記録するDVを米国でも発表した。IEEE1394ポートを備えており、アナログで撮影した映像もDV方式のデータで出力できる。エントリーレベルの「DCR-TR700」は899ドル。



●WebTV、EchoStarの衛星放送サービスを追加

http://webtv.net/ (WebTV Networks)
http://www.echostar.com/ (EchoStar Communications)

WebTV STB
WebTVとEchoStarの
セットトップボックス

 初日、CESでの最大のニュースはWebTV Networksとデジタル衛星放送サービスのEchoStar Communicationsとの提携発表だった。両社は、WebTVのインターネットサービスとEchoStarの衛星受信機を合わせたセットトップボックスを発売することを発表した。これにより、EchoStarの衛星放送とともに、WebTVのインターネットTVサービスにもアクセスできることになる。同製品の発売予定は1999年の半ば。

 このボックスには8GBのハードディスクが内蔵され、TV番組を8時間記録する機能がついている。また、TV番組を30分まで一時停止することができる。ただし、TV番組の録画機能に関しては、最初の発売段階では使えない。業界関係者間では、知的所有権の問題でTV放送局との折り合いがとれていないとの噂が流れている。WebTV側では、今年の終わりまでにはソフトウエアのアップグレードで録画機能を提供するとしている。

 セットトップボックスは499ドルで、その他EchoStarの月額料金が20ドル前後、WebTVサービスの月額料金が24.95ドルになる。



●ReplayTVなどのインタラクティブTVに人気が集中

http://www.replaytv.com/ (Replay Networks)

ReplayTV STB
3月に発売が予定されている
「ReplayTV」

 また、インタラクティブTVを開発しているReplay Networksも、WebTVと類似した製品を3月に市場投入することを発表した。CESのビデオ部門で「ベスト・オブ・ショー」を受賞した「ReplayTV」は、同社独自のデジタル変換技術を使用して、リアルタイムに放送されるTV番組の一時停止、録画が行なえる。

 録画の設定は、電話回線を使用して同社が提供しているWebサービス「ReplayNetwork Service(RNS)」から番組情報をダウンロードする。その後、番組が表示されるので、録画したい番組をクリックするだけで、自動的に好きな番組だけがセットトップボックス内のハードディスクに保存される。録画した番組を観る場合には、デジタルなので巻き戻しも早送りもする必要はない。また、リアルタイムの番組では、席をはずす間だけTV番組を停止し、一部を早送りすることもできる。

 同社では3種類のReplayTVの販売を予定しており、合計6時間の録画が可能な6GBのハードディスク搭載のエントリーレベル製品「ReplayTV 2001」は699ドル、14時間の録画ができる「ReplayTV 2003」は999ドル、また28時間の録画が可能な「ReplayTV2004」は1,499ドル。ちなみに、録画したデータは通常のビデオにエクスポートして保存することができる。

 RNSをTV版の「ポータルサイト」と位置づけているReplay Networksでは、製品の市場投入に先駆け、米人気ケーブルTV局のE! Entertainmentと提携し、RNS向けのコンテンツを提供することを発表した。こうしたインタラクティブTVは今後のTV業界の大きな流れであり、OpenTVなどもインタラクティブTV用の総合的なソリューションをケーブルTVや衛星放送会社に提供している。



●インタラクティブキッチンTVの登場?

http://www.cmiworldwide.com/ (CMI Worldwide)
http://www.gateway.com/ (Gateway)

Advantage 2000 Destination XTV
インタラクティブキッチンTV
「Advantage 2000」
PCと家電の融合製品
「Destination XTV」

 その他、CESではさまざまなPCとTVの融合製品が発表された。CMI Worldwideは、Spyglassのブラウザーを採用したキッチン用の融合製品「Advantage 2000」を発表した。ウォーター/オイルプルーフの同製品は、Web機能がついた小型TVとでもいえるもので、CDプレイヤー、ビデオプレイヤーも含まれている。また、小型カメラを玄関や子供部屋に設置して、キッチンから来客者や子供の様子をチェックできる。

 一方、Gatewayは8日、PCと家電の融合製品「Destination XTV」を発表した。27インチのTVモニター、3.2GBのハードディスク、32MBメモリー、333MHz Intel Celeronプロセッサ、56Kbpsモデム、DVDプレイヤーがついて1,999ドルとなる。



●2日目基調講演:Cisco SystemsのJohn Chambers社長兼CEO
 「第2のインターネット革命を定義づけるのはコンシューマー」

http://www.cisco.com/ (Cisco Systems)

John Chambers Demo Stage
Cisco Systems
John Chambers
社長兼CEO
ホームネットワーキングの
デモンストレーション

 2日目の基調講演を行なったCisco SystemsのJohn Chambers社長兼CEOは、Ciscoをインターネット企業と位置づけ、本格的にコンシューマー市場へ参入することを明らかにした。また、サードパーティとともに開発したホームネットワーキングのデモを行なった。同氏は「第2のインターネット革命を定義づけるのは企業ではなくコンシューマーであり、企業はかれらの求める製品を提供していくことが重要だ。我々はコンシューマー部門を開設し、ホームネットワーキング用の技術と製品開発に力を入れていく」と語った。

 Chambers氏は、2002年には電子商取引の総額が1兆1,000億ドルを超えるとの予測を例にあげ、家庭でのインターネットの普及が製品販売に大きく影響するようになると主張した。また、インターネットの利用はPCに限られたものではなく、多くの家電にも導入されていくとし、その一例として同社が開発しているホームネットワーキングのデモを行なった。

 ステージ上に設置されたリビングルームでは、TV、PC、照明、ブラインド、室内空調、暖炉、さらにピアノやバイオリンまでがインターネットにつながれている。Chambers氏はオフィスにあるPCのブラウザーから、リビングルームの温度や照明などを調節したり、ピアノやバイオリンの自動演奏を行なった。自動演奏は、QRS Musicとの共同開発によるもの。また、ドア部分がブラウザーになった電子レンジでWebサーフィンを行なったりもした。

 同氏は「インターネットの利用は、電話やページャーといったものだけではなく、さらに広範な分野で活用されていくだろう。たとえば、患者に問題が起こったときには自動的に医師に連絡が届くような心臓モニターなど」と語った。



●大手各社のホームネットワーキング争い

http://www.microsoft.com/ (Microsoft)
http://www.mot.com/ (Motorola)
http://www.pioneerelectronics.com/ (Pioneer Electronics)

Digital Networked Entertainment
Pioneer「Digital Networked
Entertainment」のプロトタイプ

 CESでコンピュータ/家電業界の大手は、こぞってホームネットワーキング構想を発表した。まず、Microsoftは、Windows 2000をベースにした「Universal Plug and Play(UPnP)」イニシアチブを発表した。これは、同社が1992年に発表した「Plug and Play」をホームネットワーキングにも拡大したもので、松下、ソニー、Philipsによる「HAVI」や、Sun Mycrosystemsによる「Jini」と競合するソフトウエア技術である。

 具体的には、ネットワークにつながれていないデバイスが自らの存在を「知らせる」ことで、ネットワークにつながることができるというもの。同社は、UPnPを使用してネットワークにつながれていないプリンターからテキストを印刷するデモを行なった。プリンターは、PCから印刷の命令が出た際に、赤外線ポートから自らの存在を「知らせて」ネットワークにつながり、印刷を実行した。

 同社は、Intel、Hewlett-Packardなどと提携して、メーカーがUPnP対応デバイスを作れるようなインターフェイスセットを開発している。早ければ、今年4月のMicrosoftのエンジニア会議「WinHec」でスペックとサンプルソースコードを提供する予定。

 また、Motorolaは、以前コードネーム「BlackBird」で知られていたデジタルセットトップボックスのアーキテクチャを「Streamaster」と改名した。これはTVやDVD、CD機能の他、複数のPCをつなげることができるセットトップボックスで、同社はこのスペックをケーブル会社やホームネットワーキング企業にライセンスする予定。同社は、このアーキテクチャーにSpygrassのブラウザーやOpenTVのインタラクティブTV用OSを採用している。

 一方、Pioneerからは、「Digital Networked Entertainment」というホームネットワーキング構想が発表された。同社ブースで展示されていたプロトタイプのセットトップボックスでは、ユーザーはTVリモコンを使用してステレオやPC、DV、DVDを操作することができる。ケーブルモデムが内蔵されており、現在のところ、ワイヤレスは開発していない。IEEE端子が2基備えられ、実際の発売のめどは2000年以降になるとのこと。



●注目を浴びたホームネットワーキング製品

http://www.sharewave.com/ (ShareWave)
http://www.innomedia.com/ (InnoMedia)
http://www.enikia.com/ (Enikia)

PC-TV STB
ShareWaveのPC-TV
セットトップボックス(PC側)

InfoAccess
InnoMediaの
PCネットワークデバイス
「InfoAccess」

 CESでもっとも注目を浴びた企業の1社、ShareWaveは、デジタルワイヤレス技術を使用したPCとTVの接続のためのリファレンスデザイン「Falcon」を発表した。Falconは、PCとTVをワイヤレスで結ぶことにより、PCのマルチタスク機能を応用してTVにPCと同様の機能を持たせることができるというもの。これにより、TVでインターネットにアクセスしたり、ワープロを使用することができる。PC側にはセットトップボックス、TV側にはワイヤレスキーボードとセットトップボックスがついてくる。なお、Philipsから、同スペックにもとづいた製品「Ambi」が発売されている。

 また、InnoMediaは、2台のPCをワイヤレスで接続する「InfoAccess」(199ドル)を展示していた。1台のPCがインターネットにつながっていれば、もう1台がつながっていなくてもWebサーフィンができ、周辺機器もシェアできる。データ転送率は85kbps、接続範囲は屋内で100m、屋外で250mとなる。

 その他、Enikiaは、家庭のどこにでもある電源を使用したホームネットワーキング技術を開発している。同社のホームネットワーキング技術「IP」を搭載したデジタル家電は、電源につなぐだけでインターネットにつながり、追加のケーブルや機器を購入する必要がない。Enikiaでは、同社のホームネットワーキング転送速度は10Mbpsを達成するという。現在、同社はIPのライセンスに関して数社と交渉しているが、社名は明らかにしていない。

 まだ開発が始まったばかりのホームネットワーキング技術だが、今後は市場支配をめぐってコンピュータ業界と家電業界の激しい争いが繰り広げられることになるだろう。

('99/1/11)

[Reported by HIROKO NAGANO, NY]



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