パソコンや家庭用ゲーム機が高性能になり、プログラムしだいであらゆるものがモニター上でリアルに再現できるようになった。しかし、そんな今だからこそ、実際にこの手で触れることができるようなホビーが、いっそう魅力的に感じられるのも事実だ。
今回は、自分の手で組み立て、そして動かして遊べる“男のホビー”に関する情報をインターネット上で集めてみた。
パソコンが理系ホビーのシェアを大きく占めるようになってから、いわゆる“電子ホビー”は廃れてしまったかのように見えた。しかし、そこへ昨年秋、突如として新旧二つの電子ホビー製品が登場し、話題を呼んだ。
その新しい方が、おもちゃのブロックで有名なLEGO社が開発した「LEGO MINDSTORMS」である。レゴブロックにモーターユニットやセンサーユニット、そしてそれを制御するCPUユニットなどを追加。ブロックで組み立てたロボットなどの動きをプログラムし、その通りに動かすことができるというものだ。
本来は、子供向けのホビーなのだろうが、これはどうみてもオトナが喜ぶシロモノである。事実、本誌をはじめ、パソコン誌でも多くとり上げられ、PCユーザーの間でも人気の的となっている。
そんなMINDSTORMSについて、日本語情報がもっとも充実しているのが「MindStorms情報局」だ。個人の方が運営しているサイトのようだが、MINDSTORMSに関する最新情報からFAQ、TIPSなど、MINDSTORMSを知らない人にも、すでに購入してハマっている人にも役立つ情報が掲載されている。海外では、メーカーのサイトをはじめ、ファンなどによるサイトが多く開設。シカゴのMuseum of Science and Industryでも専用のサイトを用意している。
今のところ国内では販売されていないが、どうやら、今年の秋には日本版を発売する予定ということだ。しかし、それまで待てないという人は、直接海外から通販で購入するだけの価値はあるだろう。
なお、MINDSTORMSが登場する以前も、レゴブロックをプログラムで制御しようという商品はあった。MITの教授らが開発した教育用コンピュータ言語「Logo」と組み合わせた「レゴロゴ」である。こちらも、センサーやモーターを連動させて動かせるようになっている。「レゴロゴ」は、国内でもロゴジャパンからキットが発売されている。
■ロゴライターのホームページ(ロゴジャパン) LEGO MINDSTORMSが電子ホビーを復活さたニューフェイスなら、同じく昨年の秋に甦った「電子ブロック」は、日本の電子ホビー界の重鎮と言える。
電子ブロックとは、抵抗やコンデンサ、ダイオード、トランジスタなどの電子素子が埋め込まれたブロックを組み合わせることで、ラジオやモールス信号発信器、ウソ発見器といった電子回路を再現できる玩具だ。昭和40年に最初の商品が登場し、47年には科学技術庁長官賞も受賞。その後、学研ブランドで販売されてヒット商品となったが、ビデオゲーム人気の影で10年ほど前に玩具向け製品は姿を消し、現在は教材用にその名をとどめるのみとなっていた。
それが昨年秋、メーカーの電子ブロック機器製造がホームページを開設したのを記念し、長官賞受賞モデルでもあるST-100の再現モデルをインターネットで限定発売。雑誌などで大きく紹介され、大きな反響を呼んだ。その結果、当初100セットの限定販売予定が、現在は追加生産するまでに至っている。
電子ブロック機器製造が運営する「電子ブロックホームページ」では、シリーズ歴代のモデルを紹介する「電子ブロック資料館」や、ファンの意見を集めた掲示板などが用意されており、ファンにはたまらない内容となっている。また、メーカーの公式サイト以外にも、「まーくんの電子ブロックの館」など、個人の電子ブロックファンのページも、数は少ないが見られるようになったのもうれしい。
今回、現実のモノとして甦った電子ブロックだが、実はそれ以前から、熱心なファンなどにより「バーチャル電子ブロックプロジェクト」というものも進行していた。その名の通り、ソフトウェアで電子ブロックを再現しようというもので、昨年の秋に「ContentCreation + NICOGRAPH 98」で発表されている。電子ブロック本来の味はなくなってしまうかもしれないが、画面を見る限り、雰囲気はうまく再現されているようだ。ただし、発売時期は未定となっている。
■バーチャル電子ブロックプロジェクトたとえそれがテレビやマンガの中のものであれ、現実世界のものであれ、男はみなロボットが好きである。もし、自分だけのロボットを作ることができるとしたら、間違いなく“男のホビー”にノミネートされるジャンルとなるだろう。ここでは、プログラムにより自分で考えて行動する自律式ロボットやマイコンロボットなどを紹介したい。
「メカトロで遊ぼう」というサイトで紹介している「梵天丸」というロボットは、ロボットというイメージからはほど遠いかもしれない。基板に2個の駆動車輪が付いているだけのシンプルなものだが、PIC16C84というマイコンを搭載しており、プログラムを書き込むことで自分で考えて走行するというから驚きだ。同サイトでは、梵天丸の通販も受け付けている。
パトナの「Intelligent Micro-Robots」というホームページでは、さらに複雑な8足/6足歩行ロボットなど、実験用の自律走行ロボットがいくつか紹介されている。
EK JAPANでは「エレキット」シリーズという電子工作キットを発売しており、ライントレースロボットや5つの関節を持つロボットアームなど、多くのロボットキットを販売している。値段も手頃なので、見ているときっと欲しくなるはずだ。また、ロボットのほかにも、ウソ発見器などの電子回路や真空管アンプなどのオーディオキットもラインナップされている。
このほか、パーツショップのサイトなどでも、ロボットキットが販売されている。
昨年、ソニーが「エンタテインメント・ロボット」なるものを発表した。独自のロボット用アーキテクチャー「OPEN-R」を採用した4足歩行型ロボットで、ソフトウェアしだいで犬や猫などのさまざまな動物を演ずることができるという。ソニーのサイトでは、いかにも動物らしいしぐさをするエンタテインメント・ロボットをムービーで見ることが可能だ。
発表されたのは試作品だが、ソニーでは商品化を検討しているということなので、ロボットのペットが飼える日も近いかもしれない。値段についても「ソニーの他の商品のようになるべく多くのファンが買えるようにしたい」としている。
子供たちの間では、数年前に登場した「ミニ四駆」が、すっかりホビーの1ジャンルとして定着したようが、オトナが楽しむ動力模型の究めつけと言えば、やはりラジコン(RC)だろう。子供の頃には高くて手が出せなかったという人も、オトナになった今こそ、ぜひ手にしてみたいホビーだ。
一口にRCといっても、クルマ、飛行機、ヘリコプター、船、潜水艦、グライダー、ロボットなど、ジャンルは多種多様。動力方式も電動モーターか、模型用エンジンかで大きく性格が違ってくる。その中で、RCを初めて手にする人におすすめなのは、キットが比較的安価で扱いも手軽な電動カーだ。エンジンのように騒音もなく、駐車場などちょっとした場所でも気軽に走行できるのがうれしい。
「超初心者のためのラジコン入門講座」では、初心者におすすめのキットからプロポの選び方、必要なパーツ、サーキットでのマナー、メンテナンス法に至るまで丁寧に解説している。
電動RCカーの分野で定評のある田宮模型のサイトでは、製品紹介はもちろん、初心者向けの解説やRCサーキットの有無がわかる全国のホビーショップリストも掲載。同社の米国法人のサイトでは、より高度なセッティングなどの情報が用意されているので上級者にも役立つだろう。
こういった電動RCカーは、手軽に楽しめるといっても、決して“トイラジ(おもちゃのラジコン)”ではない。現在主流となっている“ツーリングカー”というジャンルは、10分の1スケール(全長35cmほど)で四輪駆動、サスペンションも四輪独立方式という、かなり本格的な構造となっている。スピードも予想以上に速く、時速30km程度、中には50kmにも達するものもある。
「ラジコン考察学」というページは、空力やサスペンション、駆動方式など、電動RCカーのメカニズムについて解説した軽い読み物が掲載されている。これを読めば、電動とは言え、けっして“おもちゃ”では済まされない、れっきとしたオトナのホビーだということがわかるだろう。
さて、もっとも操縦が難しく、“RCの王様”的なイメージのあるヘリコプターだが、それゆえに初心者には近寄りがたかったのも事実だ。しかし最近は、手軽に楽しめる電動タイプのものも見られるようになり、初心者でも手に取りやすくなってきた。 キーエンスでは、室内でも飛ばせる超小型の電動ヘリコプターのほか、4つのローターを持ったRC円盤などもラインナップしており、同社の精密技術には感動するばかりである。
■キーエンス HI-TECH HOBBY RCだからといって、何も専用のキットでないと楽しめないわけではない。飛行機やクルマに比べてキットの種類が少ない戦車というカテゴリーでは、普通のプラモデルを改造してRC化してしまうマニアの方も多いようだ。
「ひのきの模型工房」では、今までにRC化した作品とその製作日記が多数掲載されており、市販キットにはない自分だけのRC戦車を作る楽しみと喜びがひしひしと伝わってくる。
プラモデルやラジコンなど、ミニチュアを組み立てるだけがホビーではない。いっそのこと、もっと大きなモノを組み立ててみてはどうだろうか?
欧米では、自分の乗るクルマを自分の手で組み立てられる“キットカー”なるものが一般にも出回っているという。日本では想像もできないことだが、クルマだけではなく、“キットプレーン”や“キットヘリコプター”まであり、これをホビーとして楽しんでいるというのだ。そんなものに乗って安全なのか不安はあるが、これこそ“男のホビー”と言えないだろうか。
残念ながら、日本では法律上、こういったキットを購入して乗り回すというのは難しいらしく、ほとんど一般には知られていなかった。しかしここに来て、国内のメーカーがキットカーを販売するようになり、注目を浴び始めている。富山県にある自動車メーカー、光岡自動車が開発した「K-1」と「K-2」である。
K-1は、50ccのエンジンを搭載する1人乗りの超小型車で、イメージとしてはスクーターが4輪になって屋根がついたような感じ。K-2は同じエンジンに1950年代風のノスタルジックなボディーを乗せたものだ。完成後は、車両登録すれば普通免許で公道を走行できる。登録は原付バイク扱いのため、車庫証明は不要。価格は32万5,000円からとなっており、ホームページからオンラインで見積もり・購入が可能だ。
高速道路は走れないし、長距離走行も向いていないが、ホビーとして楽しむのなら、そんなことを気にしてはいけない。モノがモノだけに飾っておくわけにも行かないというなら、小回りが利くので近所の買い物に利用すればちょうどいいだろう。
この光岡自動車のキットカーも、当然というべきか、発売とともに注文が殺到しているという。オトナのホビーとして考えれば、けっして高い金額ではない。組み立てるスペースさえあれば、つい手を出してしまうのも無理はないだろう。
('99/2/1)
[Reported by nagasawa@impress.co.jp / Watchers]