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【特集】

無料のWebアプリケーション・サービスを使ってみよう

 「Webアプリケーション」という言葉をご存知だろうか?

 従来、アプリケーションと言えば、各自のパソコン上で走らせるのが当たり前だったが、それをWeb上で実現しようというのがWebアプリケーションだ。Netscape CommunicatorやInternet Explorerといった標準的なWebブラウザーさえあれば、いろんなことができてしまう。

 もっとも、Wordや一太郎、Excel、Photoshopといった“重たい”ソフトをブラウザー上で動かすのは難しいだろうが、メールの送受信やスケジュール管理などは、すでにポータルサイト上で無料で利用できるようになっている。せっかくタダで利用できるのだから、これを使わない手はない。

 今回の特集では、ポータルサイトで提供されているサービスを中心に、そんなWebアプリケーションを紹介しよう。


●いつも使ってるアプリケーションとの違い

 我々が普段利用しているアプリケーションは、データの処理、データの蓄積、表示の全てを手元にある1台のマシン上で行なっている(LANを組んでいる場合はサーバーにデータが蓄積されているケースもある)。

 これに対し、ポータルサイト上で目にすることのできるWebアプリケーションの多くは、データの処理もデータの蓄積もサーバー側が受け持つ形になっている。ブラウザーは、そのインターフェイスとして表示する役割を担っているだけだ。仕組み的には、アンケートなどでよく見かけるフォーム処理の巨大で複雑なものだと考えればいい。


●メリットとデメリット

 そんな特徴があるおかげで、ユーザーは自分用のパソコンから解放されることになる。どんなメリットがあるのか、メールソフトを例に考えてみよう。

 会社と自宅で別々のアカウントを持っているとすると、従来なら会社と自宅の両方のパソコンにそれぞれメールソフトをインストールしておく必要があった。もっとも、この状態でもPOPサーバーの設定を切り替えれば、会社で自宅に届いたメールを読んだり、自宅で会社に届いたメールを読んだりすることはできる。

 しかし、2つのメールソフト内に別々に取り込んだメールは、当然、2台のパソコンに別々に保存されてしまうことになる。自宅に帰って「会社宛に届いていたあのメールを読みたい」と思ってもデータは会社のパソコンの中、というのはよくある話。メールソフトの設定を「サーバーにメールを残す」にして、この問題を回避することも可能だが、この場合、メールが貯まったぶんだけサーバーからメールを取り込む速度が確実に落ちることになる。

 Webアプリケーションを使えば、会社にいても自宅にいても常にインターフェイスは同じで、なおかつデータも1つにまとまっている。

 もちろん、Webアプリケーションでは不安なところもある。サーバーが落ちているとユーザーは手も足も出ないし、データの処理や転送にも時間がかかるため、サーバーや回線の状況にアプリケーションの実行速度が大きく左右される。

 また、普通のメールソフトなら、一旦データをダウンロードしてしまえば、回線を切断しても、いつでも内容を確認することができるが、Webアプリケーションを利用するには、必ずインターネットに接続している必要があるということも忘れてはいけない。


●パソコンを持っていなくても使える

 ここまで主にパソコンを持っている人にとっての話をしてきたが、Webアプリケーションから最も恩恵を受けるのはそれ以外の人々かもしれない。

 一番イメージしやすいのが学校での利用だろう。限られた台数のパソコンしかなく、同じマシンを複数の人間が利用するというケースだ。生徒全員がメールを利用するような場合でも、全てのパソコンにメールソフトをインストールする必要はないし、プライバシーも確保することができるのだ。


●メールサービスを利用してみる

Yahoo!メール
メールアドレス:xxx@yahoo.co.jp

フリーメール(goo)
メールアドレス:xxx@mail.goo.ne.jp

Excite Mail
メールアドレス:xxx@excite.co.jp

RobotMail(2.0b版)
メールアドレス:xxx@mail7.dddd.ne.jp

 さて、Webアプリケーションの特徴を見てきたところで、今度は実際に利用してみよう。日本のポータルサイトでメールサービスを提供しているのは、Yahoo! JAPAN、goo、Excite Japanの3つ。それと、今回の特集では、フォーディーコミュニケーションズの「RobotMail」というサービスの計4つを取り上げることにする。

 いずれのサービスも全て無料で利用でき、もちろんメールアカウントも無料で取得できる。

 サーバーに蓄積しておけるメールの容量は3MB~5MB。プロバイダーの容量制限とだいたい同じくらいだ。そのため、メーリングリストに参加して、ログをデータベース的に利用するのにはあまり向いていない。

 普段利用している別のPOPサーバーへのアクセスも可能だ。ただし、会社のPOPサーバーはファイヤーウォールで守られていることも多く、この場合はアクセスできないので注意が必要だ。

名称 Yahoo!メール フリーメール Excite Mail RobotMail
保存容量 3MB 3MB 3MB 5MB
外部POP 3 3 3 5
フォルダ作成
自動振分 × × ×
自動返信 × × ×
自動転送 × × ×
スパム対策 ×
ファイル添付
転送
署名 1 1 1 3
アドレス帳
リマインダー × × ×
自動ログアウト 8時間 20分 20分 40分

 いずれのサービスでも追加フォルダを自由に作成できるが、gooのフリーメールとExcite Mailは日本語のフォルダ名が付けられない。実は、下の表を見ても分かる通り、この2つのサービスのベースとなっているシステムは同じものなのだ。したがって、どっちを利用するかについては、見た目の好みで決めればいい。

 フォルダについてもう1つ。普段利用しているメールソフトには、受信した時点であらかじめ指定しておいた通りに自動的にメールを振り分けてくれる機能が搭載されていて、ほとんどの人がこれをうまく活用しているはずだ。この機能が実現されているのは、Yahoo!メールだけ。

 このほか、Yahoo!メールだけで使える機能としては、不在通知などを送り返すための自動返信機能、大事な予定の直前にそれをメールで知らせてくれるリマインダー機能がある。

 また、ポータル系のサービスではスパムフィルターが利用できるようになっている。これを利用すると、無用な宣伝メールを送り付けてくる特定のメールアドレスからのメールをブロックすることが可能だ。

 おそらくごく普通に友人とのやり取りをするぐらいなら、十分な仕様だろう。それでも不満な点もいくつかある。

 例えば、アドレス帳。Web上に置いておいて、どこからでも参照できるのもいいが、同じ人の情報を何度も打ち込むのは面倒なもの。できれば、この手のものはPDAや手元のパソコンとシンクロさせたいところだ。

 それから、検索機能がないというのも、メールソフトを使い慣れた人にとっては辛い。

 もっとも、こうした不満も徐々に解消されていくだろう。


●メールサービス、利用上の注意

 いずれのサービスもIDとパスワードでプライバシーを守っているわけだが、ログインしたままにしておくと、次にそのマシンを使った人に自分のメールを読まれてしまうので注意しよう。時間が経つと自動的にログアウトする仕組みにはなっているが、特にYahoo!メールの場合はそれが8時間と長めに設定されているので、使い終わったら必ずログアウトしよう。また、Yahoo!メール以外では、ログアウトしてもブラウザーのバックボタンで前のページに戻ると、そのとき読んでいたメールを参照できてしまうので、必ずブラウザーを終了するようにしよう。

 それから、全てのサービスでメールにファイルを添付できるが、古いブラウザーではこの機能が利用できないので注意しよう。Netscape Navigatorならバージョン2.0以上、Internet Explorerならバージョン3.02以上が必要となる。なお、Internet Explorer 3.02の場合は、さらにMicrosoftが配布しているパッチが必要となる。詳しくは各サービスのヘルプを参照してもらいたい。


●スケジュール管理にもWebアプリケーション

Yahoo! Calendar

Netscape Calendar

MyTime(Lycos)

 ここまでメールサービスについて見てきたわけだが、ほかにも使えそうなWebアプリケーションがある。「カレンダーサービス」と呼ばれるもので、いわばオンラインのスケジュール帳だ。

 残念ながら、日本のポータルサイトではこのようなサービスがまだ提供されていないので、米国に目を向けてみることにする。現在、Yahoo!、Netscape、Lycosがカレンダーサービスを無料で提供している(ただし、2月12日の時点では全てβ版)。

 いずれもインターフェイスが英語なので、若干戸惑うこともあるかもしれないが、日本語の書き込みについても特に問題なく行なえるようなので、利用してみる価値はあるだろう。

 グループ単位での利用については、MyTimeが便利だ。他のユーザーに書き込みを許可することができるので、打ち合わせの予約なども簡単だ。その他のサービスについても、スケジュールにイベントを登録する際に招待メールを送って、その旨を相手に知らせることができるようになっている。

 市販されているロータスノーツ+ドミノのような本格的なグループウェアと比べるとまだまだ見劣りするが、何といっても無料で利用できるというのは嬉しい。

 また、様々な情報が集まるポータルサイトだけに、コンサートやスポーツイベント、CDの発売日など、様々な予定を自分のスケジュール帳に取り込むことができるようになっている。この機能はNetscape CalendarとMyTimeで提供されている。ただ、米国内の話がほとんどなので、あまり使えないかもしれない。


●Palm PilotやOutlookとシンクロ

 PDAやPIMソフトとのシンクロについては、現状ではYahoo! Calendarだけが利用できるようになっている。その他のサイトでも、近日中に同様のサービスが提供される予定だ。

 Yahoo! Calendarでは、3ComのPalm PilotとMicrosoftのOutlookとのシンクロが可能だ。Starfish Software社との提携により、「TrueSync for Yahoo!」というソフトのβ版が無料で配布されており、これを利用することになる。

 同ソフトは、Windows上で動作し、Palm Pilotを利用する場合にはPalm DesktopとHotSyncのバージョン3.0以上が別途必要となる。まだβ版ということもあるので、利用する前には必ずデータのバックアップを取るようにしよう。

 編集部でOutlookとのシンクロに挑戦してみたところ、問題が2つ見つかった。

 まず、プロキシー経由での利用ができなかった。ビジネスマンの利用が見込まれるだけに、多くの企業内LANから利用できなくなってしまうのは痛いところだ。

 そして、元々のサービスが英語版ということもあってか、文字化けが発生した。Yahoo! CalendarからOutlookにデータを落とす時には問題ないが、逆にOutlookからYahoo! Calendarへデータをアップロードする時に文字化けが発生した。


●ソフトメーカーにとってのWebアプリケーション

乗換案内

駅前探検倶楽部

ジョルダン乗換案内

Yahoo!路線情報(駅すぱあと)

地図検索

MapFanWeb

Mapion

JUSTMAP

 ポータルサイトで提供されているメールサービスやカレンダーサービスのほかにも、これまで我々のデスクトップ上で動いていたソフトがどんどんWeb上で利用できるようになってきている。

 第一、ポータルサイトで提供されている検索サービスなども、考えようによってはWebアプリケーションの1つと言えなくもない。少なくとも、大量のデータを蓄積し、それを検索するというような仕組みのソフトウェアは、無料になるか有料になるかは別として、今後、次々にWeb上へと移行していくと考えていいだろう。

 データへの依存度が高いものとしては、電車の乗換案内ソフトがあげられる。同様に大量のデータを扱う地図検索ソフトもWeb上に移行してきている。

 これらのツールは元々パソコン用のアプリケーションとして販売されているだけに、メーカー側としては、市販のパッケージソフトと同じ機能を提供したのでは商売にならない。そこで検索できるデータの範囲を限定するなどして、パッケージソフトよりも機能を落とすというのが一般的だ。

 しかし、何か別の収入源を見つけられれば、メーカー側がフル機能を提供することもあり得る。1つは広告収入だが、もっと直接的に収益をあげる手だてがある。それがインターネットのインタラクティブ性を活かしたEコマースだ。

 Amazon.comCDnowを考えてみればいい。彼らは本やCDに関する大量のデータを保有し、検索できるシステムを提供している。これらの企業が、検索サービスに加えてレビューやパーソナライズ・サービスを提供できるのは、オンラインショッピングにより収益をあげることができるからにほかならない。


●辞書と翻訳サービス

 データ依存度が最も高いのは、おそらく辞書ソフトだろう。分厚く重たい辞書の代わりにCD-ROMを持ち歩いたりするのは、もはや時代遅れかもしれない。しかも最近では、全文翻訳サービスまで登場している。

MT Ave
 東芝が提供する英日・日英の機械翻訳サービス。お試し版は、翻訳できる文字数が1,000字までなどの条件がある。有料の本格版もある。

AltaVista Translation Services
 AltaVistaがSYSTRAN Software社と提携して提供している翻訳サービス。英語とフランス語、ドイツ語、イタリア語、ポルトガル語、スペイン語の相互翻訳が可能。翻訳したいWebページのURLをペーストすると丸ごと翻訳してくれる。

シソーラス辞書検索
 同義語や広義語の検索サービス。

WWWブラウザーひとつでここまでできる! 便利なオンライン辞書サイト
 本誌'96年11月8日号掲載の集中企画。使える辞書サイトを紹介。

('99/2/15)

[Reported by yuno@impress.co.jp / Watchers]


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