【特集】
携帯電話でインターネット! 気になるiモードとWAP情報
日本では、人口の4分の1が携帯電話を持っているという。買い物やデート、仕事、旅行など、日常生活の場面で一番身近にある端末は、携帯電話やPHSだろう。PDAやノート型パソコンなどを用いれば、大量な情報を得ることはできる。しかし、操作性が向上し、扱いやすくなったといっても、現在の携帯電話ほど身近な存在ではないのが現状だ。
最近よくCMや雑誌などで目にする「iモード」や「WAP」と呼ばれるサービスは、この携帯電話だけで、インターネットやさまざまなコンテンツサービスが利用できるというもの。今回は、NTTドコモが2月22日よりサービスを開始する「iモード」を中心に、どんなサービスなのかをレポートしたい。
●iモードサービスとは
'99年2月22日、NTTドコモの新サービス、iモードが開始される。iモードは、対応の携帯電話端末だけを使って、電子メールやWebの閲覧、モバイル・バンキングや航空機、コンサートチケットの予約、占いなどのコンテンツサービスが利用できるというものだ。PDAやノート型パソコンは要らず、携帯電話端末の液晶画面とボタンを使ってサービスを受ける。料金は、月額使用料として300円(パケット通信サービス200円+iモード機能100円)。通信料金は0.3円/1パケット(128Byte)。有料サービスを利用した場合は、情報料が別途課金される。情報料はNTTドコモが代行回収する。
●iモードの仕組み
iモードでは、ユーザーは9,600bpsのパケット通信網を使って、「iモードサーバー」と通信する。パケット通信網を利用するため、時間課金ではなく情報量、1パケット(128Byte)0.3円単位で課金される。操作を苦手とする人でもゆっくりと操作できるのが嬉しいところだ。
IP(情報提供会社)へのアクセスは、すべてこの「iモードサーバー」を通じて、専用線もしくはインターネットを使って接続される(http://www.nttdocomo.co.jp/i/images/imode3.gif
)。
NTTドコモが提供する上で要になるのは、iモード端末とIPとの間にあるゲートウェイ部分である「iモードサーバー」。iモードサーバーがフィルターとなり、情報をユーザーへと伝えるのである。
●対応端末は3種類!
ユーザーとしてはiモードに対応した端末が気になるところだ。これは、現在のところ3種類が発表されている。ただし22日に発売されるのは、富士通製の「デジタル・ムーバF501i
HYPER」一機種のみなのが残念。価格は、ドコモ支店・営業所販売価格で35,900円。3月以降、順次折畳み型であるNEC製のN501i、フリッパータイプである三菱製のD501iが発売される予定だ。また、昨年後半には松下電器製のP501iも電気通信端末機器審査協会(JATE)の認定を受けており(
http://www.jate.or.jp/japanese/main3/jt98_1130.html
)、他の機種とそれほど遠くない時期に発売されると思われる。
iモード対応端末は、新機種であることなどから、値引きは期待できない。ただし、機種変更については、今年の2月から、新既契約受付または機種変更受付時から10カ月を過ぎたものについては、機種変更に古い端末を回収することを条件に、1万円引きになる。これを機に、iモード対応端末に乗り換えてみようかという人は、一度、自分の手持ちの電話をいつ、契約や機種変更したのかを確認しておくといいだろう。
現在発表されているiモードの対応端末は、見た目も重さも、現在の携帯電話と大きく変わるところはない。端末内にある「i」と書かれたボタンを押すとiモードのメニューが表示され、面倒な操作も必要なくiモードの世界へと入れる。例えば、PDAなどは電源を入れて、何かをするというステップが必要だが、普段から電源を入れている携帯電話なら簡単。しかも、メールが届けば着信音と共に画面にメールの着信を知らせてくれるマークが出るなど、大幅に操作を省略できる。
●気になるコンテンツの中身
現在、67社がiモードのコンテンツサービスの準備を進めている。これらのコンテンツは、大きく分けて4種類ある。モバイルバンキングや証券取引、コンサートチケット予約などの“取引系”と、レストランガイドや字引サービス、電話番号案内、乗り換え案内などの“データベース系”、スポーツ情報や株価情報などの“生活情報系”、占いやネットワークゲームなどの“エンターテイメント系”のサービスだ。
ただし、具体的なサービス内容は、各社によってまちまちだ。例えばモバイルバンキングサービスの場合、都市銀行など21行がサービス提供を予定しているが、振込や振替まで可能な銀行や、残高照会程度のサービスの銀行など、提供内容は銀行によって少々違いがある。詳細は、ホームページの一覧を参照のこと。
なお、料金は、通信料のみのコンテンツが多く、パケット通信量によって違う。モバイルバンキングの残高照会の場合で、約10~20円、辞書検索の場合で辞書検索
約10~20円程度とのことだ( http://docomo-web.nttdocomo.co.jp/i/service/ryokin.html
)。
また、自分の気に入ったコンテンツを登録できる「マイメニュー」機能もある。これは、星占いやタウン情報、天気予報など、お気に入りのコンテンツを登録できるもので、ブックマークのような機能だ。実際には、ユーザーごとにカスタマイズされたホームページをドコモのサーバーに作成し、ユーザーのアクセスを簡単にしている。
●Webの閲覧とコンテンツの作成
iモードでは、テキストブラウザーでWebの閲覧もできる。URLを指定すると、自分の好きなページに飛ぶことはできる。しかし、文字数やフォント、グラフィックなど表示できる容量に制限があるため、事実上、iモード用のページが必要になる。
iモード用のHTMLでは、HTMLのサブセット版ともいうべき「コンパクトHTML」規格を基にしているため、HTMLの知識があれば簡単にコンテンツを作成できる。すでにホームページを持っている場合は、iモード用に画像を少なくしたり、文字量を減らすなどして編集すれば、既存システムから移行できる。ただし、iモード上でGIF画像を表示することはできるものの、受信できるデータ量は5KByte以下。GIFは使わない、もしくは白黒にするなどの工夫が必要になりそうだ。
●iモードでのメール利用
iモードの利用契約者には、メールアドレス「携帯電話番号@docomo.ne.jp」が割り当てられ、iモード利用者どうしのメール交換はもちろんのこと、インターネットメールもやりとりできる。携帯電話の電源が入っていないときや、電波が届かない場所にいる場合でも、インターネットのメールサービスと同様に、サーバーで電子メールを預かってくれる。サーバーでのメールの保存は、720時間(30日)間。最大50件まで可能だ。
メールアドレスに電話番号を利用しているため、特に女性などの場合、電話番号が露出してしまうのが少々気になるところ。e-mail転送サービスなどを使うのもひとつの手だ。NTTドコモによれば、任意のアドレスに変更することも検討中とのことだ。
なお、iモードでやりとりできるのは、最大全角250文字、500Byteまで。規定の量を超えた場合は、規定の範囲内で途中までの表示となる。ちなみに、本誌の場合一行あたり全角で38文字なので、6行半ぐらいに相当する。
メールの保存件数は、機種によって異なるが、F501iの場合は「受信メール保存」件数が30件。読んだものについては、順次新しいものに古いものから上書きされる。削除されたくないメールは、15件まで保護することが可能。未読や保護されているメール件数が30件に達した場合、サーバーに蓄積されるが、サーバーの保存件数も50件を越えた場合、メールの発信者側にはエラーメールが返送される。
便利なのは、メール中に記述された電話番号に対して、ワンタッチで電話がかけられる「PHONE
TO機能」。また、メールの文章中にURLがあった場合も、ワンタッチでそのURLにアクセスできるほか、メールアドレスがあれば、ワンタッチでそのアドレスにメールを書くこともできる。
気になる料金だが、前述のとおりiモードはパケット網を使った料金体系だ。では、既存のサービスと比較すると、どんな場合にオトクなのだろうか。E-mail転送サービスとしても人気のSkyWalker
E-mailサービス(東京デジタルホン)と単純に比較してみたい。今回は、東京デジタルホンの場合を例にしており、関西など、一部の地域では料金体系が異なる。
iモードの場合、パケット単価は0.3円/128Byteと安いが、通信プロトコルの分だけ、データ部分以外にもパケットが必要となる。この部分を考慮すると、送信が、全角250文字程度の場合で約4円。受信は250文字で約2円となるようだ。受信と送信で料金が異なるのは、送信と受信で若干パケット量が違うためだ。
iモードでのメールを受信専用で使った場合、単純計算だが、次のような分岐ラインを見いだすことができるだろう。
?
|
月額利用料
|
メール送信
|
メール受信 |
iモード |
300円 |
全角250文字程度/約4円 *1 |
全角250文字/約2円*2 |
|SkyWalker
E-mailサービス |
800円 |
1メッセージ/ 5円
(全角文字64字、半角文字128字) |
*3
|
*1 全角150文字程度の場合、約1円。
*2 パケット料金0.3円/1パケット(128byte) 実際には通信プロトコル分の付加パケッ
トが必要となる。
*3 From: 半角55文字以内 + Text: 全角192字以内 = 全角192字以内/無料。
J-PHONE http://www.tdp.co.jp/
SkyWalker http://www.tdp.co.jp/p_and_s/options/sw/start.htm
月額利用料の差額(SkyWalker E-mail 800円 - iモード 300円)= 500円
500円でおおよそ受信可能な件数(500円 / 4円) = 250件
仕事などのメールで、月に250件程度(約10件/日)程度のやりとりを超えなければ、iモードのほうが安く済む計算だ。SkyWalkerと比べると、受け取れるメールの文字数も多い。今回は最大文字数で計算したが、実際には、受信メールが250文字よりも短くなれば、これより件数は増える。これがパケットの魅力といえるかも知れない。
●ビジネス利用への期待感
2月1日、NTTドコモとプーマテクノロジー株式会社は、Intellisync Anywhere(インテリシンク・エニウェア)という、企業イントラネットの資産をiモード端末で利用できるアプリケーション開発をすると発表した。これは、企業イントラネット内のLotusノーツドミノまたはMicrosoft
Exchange Serverの内容を「iモード」端末の携帯電話上でチェックできるようにするものだ。
一般のコンテンツ利用とは別に、企業のグループウェアとの組み合わせで、iモードサービスの利点を活かせる可能性が出てきたのは大きなニュースだろう。特に、現時点でモバイルコンピューティングを導入し、営業の主力兵器として使っている企業は要チェックだ。各自あらかじめデスクトップクライアントから設定をしておくことで、Subjectに「緊急」とあるメールだけを転送させたり、ある顧客データの変更があった時だけ電話が鳴るようにも設定できる。また、出張先や出かけた先からも在庫確認や会議室の予約などが行なえるほか、ちょっとした作業のためにコンピュータを起動する必要がなくなるのである。
●iモードの対抗WAPサービスとは
さて、NTTドコモが「iモード」を開始する一方で、もうひとつ気になるのがiモードの対抗株といわれている「WAP(Wireless
Application Protocol)」サービスだ。日本移動通信株式会社(IDO)とDDIセルラーグループ各社が4月よりサービス開始を表明しており、DDIセルラーは「EZweb」という名称で、WAP対応サービスを開始する。IDOは現在のところ名称は未定。先日DDIが発表したところでは、まず日立製の端末が対応するようだ
。
各社のWAPサービスは、音質が良くデータ通信も高速なcdmaOneという新方式携帯電話でのサービス。当初、14.4kbpsでのデータ通信サービスだ。仕組み的にはiモード同様に、TCP/IPネットワークを利用する。携帯電話とゲートウェイサーバーの間をHDTPと呼ばれる独自のプロトコルで通信し、そこを経由してインターネット上のコンテンツにHTTPプロトコルでアクセスする。HTMLで書かれたコンテンツは、ゲートウェイサーバー上で、携帯端末向けのWML(Wircless
Markup Language)に変換されることが想定されている。また、ゲートウェイサーバーを経由したデータは圧縮したバイナリファイルに変換されるため、容量が軽くなり、伝送の負荷が軽くなる。詳しくは、IDOのページ、DDIセルラーのページを参照してほしい。
気になるサービス内容は、具体的には明かされていないが、電子メールやニュース、天気予報、情報検索などのコンテンツが登場する予定。先日、有限会社電脳隊がWAP対応のネットワークゲームを開発したと発表している。今までのインターネット資産をどのようにWAPを利用した携帯電話・PDAで引き継ぐか、このあたりが注目される。
一方で、コンテンツの作成はどうなのだろうか。iモードではHTMLのサブセットのコンパクトHTMLでコンテンツを記述するが、WAPについては、IDOとDDIは携帯端末向けのマークアップ言語HDML(Handheld
Device Markup Language)で作成するよう説明している(http://www1.mediagalaxy.co.jp/ido/wap/info.html
、 http://www.dion.ne.jp/wap/info.html
)。HDMLは、情報をカード単位で扱えるように設計されているため、画面の表示領域が狭い携帯電話などに向いている。HDMLはタグを用いており、HTMLと似た構造を持つ。ある程度の知識さえあれば、新たにコンテンツを作成するのは、さほど難しくないだろう。詳しくはWAPの標準化団体であるWAP Forumをご覧戴きたい。
●コンテンツビジネスの可能性
今回はiモード/WAPといった気になるサービスについて追いかけてみた。「話す電話から使う電話」へと進化させる大きな役目を担っているこのサービス、実は我々使う側の意識改革こそ、今後のコンテンツビジネスとして成功させるために必要なものなのである。コンピュータが世の中に登場した時もそうだが、きっかけがあれば、一気に普及する。我々の“画面が小さいから”といった先入観が一度拭い捨てられた時、コンテンツビジネスが急成長することだろう。
('99/2/22)
[Reported by 児玉 浩/編集部]
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