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【イベントレポート/Silicon Alley 99】

新たなキーワードは「eMarkets」

 シリコンアレー(ニューヨークのインターネット関連企業地帯)の企業を取り扱った雑誌「Silicon Alley Reporter」主催による、インターネット関連の会議「Silicon Alley 99(SA99)」が、ニューヨークで2月23日(米国時間)から2日間にわたり開催された。今年で3回目を迎えるSA99には、多数のシリコンアレー企業のエグゼクティブを始め、大学関係者やメディア関係者が2,500人以上も集まり、インターネットの未来について語り合った。


●AGENCY.COMのChan Suh CEO基調講演「ECはトランザクションではない」

AGENCY.COMの共同創設者Chan Suh CEO
AGENCY.COMの共同
創設者Chan Suh CEO

 インタラクティブエージェンシーのトップ企業、AGENCY.COMの共同創設者、Chan Suh CEOは24日の基調講演で、インターネットビジネスはテクノロジーではなく、テクノロジーを前提にした付加価値が重要であるという展望を語った。

 同氏は「よくECとはトランザクションのことだと考えている人がいるが、それは間違いだ。スーパーマーケットで買い物をするとき、お金を払う部分だけが『買い物』と呼べるだろうか? 店で商品を見比べたり、店員と話したりする体験も含めて買い物と呼べるのだ」と語った。同氏はまた「インターネットでは、トランザクション自体よりもこうした付加価値の方が重要であり、こうした付加価値づくりに強いのがシリコンアレー企業だ」とも述べた。

 AGENCY.COMもまたシリコンアレーのスタートアップ(新興)企業で、Nike、NEC、Hewlett-Packard、GTEを始めとする多数の企業Webサイトの開発を担当し、設立4年ほどで社員700名、12都市にオフィスを構えるまでに成長した。同氏は「シリコンアレー」という言葉を単にマンハッタンの一地区を示すのではなく、コネチカットを含んだ米東部に広がるインターネットサービス市場の全体を指すものとして捉えている。

 Suh氏は、最近の小規模インターネット企業の合併ブームに関して「生き残りのためには、あくまでインターネットビジネスに固執することだ。企業の多くは、すべてをターゲットにしてすべてのビジネスを行なおうとしているが、それは間違い」と語った。同社も合併により成長してきたが、同氏は「それぞれの企業のやり方を尊重し、今まで一緒に働いていた人達はプロジェクトが変わっても同じチームで働けるようにしている」と合併のコツを語った。

 講演後のQ&Aで「競合企業はRazorfish?」との質問に対して、同氏は「え、誰? Razorfishだって? 彼らとは競合していない」と同社の優位性を強調した。しかし、次の質問で、あるTV関係者が「WebとTVの融合」に関して尋ねたところ、同氏は「重要な分野だ。Razorfishもブロードバンド戦略に関して発表を行なった」と同社を意識する発言を行なった。


●新たなキーワードは「eMarkets」

 24日のパネルディスカッションでは、EC分野の次世代トレンドであると言われる「eMarkets」に関する討論が行われた。Silicon Alley Reporterによると、eMarketsとは製品の価格比較、オークション、バーターなどを通して、コンシューマが価格を決定づけるサイバー市場のことで、eBay、Onsale、Priceline.comなどがこの分野に当てはまる。

 パネラーには、Tickets.comのJames Caccavo社長、Amazon.com株を高騰させた張本人と言われるCIBC OppenheimerアナリストのHenry Blodget氏、オークションの老舗SothebyのSusan Solomon幹部副社長、Needham & Co.のDalton Chandlerアナリストが登場した。

 Caccavo氏は「航空券などの分野では、需要と供給の関係によりコンシューマが価格を決定するeMarketsが有効だ。とくに期限つきの製品は期限に近づくほど価格が下がるので、リスクを負っても安く航空券を買いたいユーザーと、高くてもいいから事前に航空券を買いたいユーザーなどにセグメントが分かれるだろう」と語った。Tickets.comは、イベントやチケット販売のワンストップショップで、eBayスタイルのオークションサイトも本格的に開設しつつある。

 Blodget氏もこれに同意し「ECでは、株式市場のような価格変動システムが、今後さまざまな製品に対しても応用されるだろう」と語る。同氏は1998年12月16日、「Amazon.comの株価が12カ月以内に400ドルになる」というレポートを発表し、同日Amazon株を高騰させたことで一躍有名になった。なお、同氏は24日、Merrill Lynchに移籍することを明らかにした。

 最近注目されている「At Costモデル」(原価で売り、広告で利益を出すモデル)や、インターネットを使えば簡単に行なえる価格比較に関して、Chandler氏は「価格は非常に重要なポイントだ。本やCDだったら50セントや1ドルくらいの違いなので、信頼しているAmazon.comを選ぶ。しかし、これがPCなどの高価格製品であれば、50ドルや100ドルの違いは大きい。コンシューマは価格の安いサイトを選ぶだろう。こうした価格競争に入ったとき、Amazon.comは利益率を保つことができるだろうか」と疑問を投げかけた。

 Caccavo氏はこれに対して「これもユーザーによりけりで、価格を最も重視する人は低価格のECサイトに流れる。ECサイトは、数種類のサイトに集約されるのではなく、ニッチ市場をターゲットにした何千ものECサイトが共存することになるだろう」と語った。さらにSolomon氏は「コミュニティ感覚でスティッキーなサイトを作るのがコツ」と語る。Sothebyでは、新たにアートや、アンティーク、宝石などのインターネットオークションサイトを開設している。

Tickets.comのJames Caccavo社長 Henry Blodgetアナリスト SothebyのSusan Solomon幹部副社長 Needham & Co.のDalton Chandlerアナリスト
Tickets.comの
James Caccavo社長
Henry Blodget
アナリスト
SothebyのSusan
Solomon幹部副社長
Needham & Co.の
Dalton Chandlerアナリスト

('99/2/25)

[Reported by HIROKO NAGANO, NY]


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ウォッチ編集部INTERNET Watch担当internet-watch-info@impress.co.jp