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【レポート】

「盗聴法・アメリカで何が起きているか」
――米国自由人権協会の副理事長が講演

■URL
http://www.jca.apc.org/privacy/
http://www.aclu.org/ (ACLU)

中村敦夫 米国自由人権協会(American Civil Liberties Union:ACLU)の副理事長、Barry Steinhardt氏が来日し都内で「盗聴法」をテーマにした講演を行なった。

 この講演は、第142臨時国会('98年10月)で「組織的犯罪対策法案」の継続審議が決定したことを受け、盗聴法の危険性を憂慮する国会議員や弁護士会、市民運動団体らが主催したもの。今回、主催の中村敦夫参議院議員(写真)、福島瑞穂参議院議員ほか超党派の国会議員や市民団体などが参加した。

 問題となる盗聴法は、「組織的犯罪対策法案」に「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案」として含まれている。ここでは、組織的犯罪対策や国際的要請を理由に、警察の判断ひとつで市民の電話(携帯電話、PHS含む)が盗聴の対象とされる。電話のほかFAX、そして、コンピューター通信も対象となっており、普段使っている電子メールも盗聴の対象となりうるというもの。最大の問題は「人権の侵害」だ。


Barry Steinhardt氏 米国では盗聴捜査がすでに合法化されており、FBI、州警察らによって実際に行なわれている。その米国での盗聴法の実状を知ろうというのが、今回Barry Steinhardt氏(写真)を招いた目的だ。同氏は、ACLU副理事長のほか、「Cyber Liberties Task Force」の議長も務めており、サイバースペースの検閲反対キャンペーンなどを行なっている。

 同氏は、「盗聴は個人の生活を破壊するもの。最悪の形態だ」と講演を開始した。「米国議会は'68年に初めて盗聴を認めた。盗聴は極めて特殊な状況でのみ行なわれるもなので(一般市民は)心配ないと説明された」「しかし、すべてウソだった。盗聴の対象は当初誘拐や殺人に絡むものだったが、対象はどんどん広がっている」として「盗聴は個人生活に無差別に侵入してくる」と語った。ACLUの調査によると捜査当局が盗聴した内容の80%以上は、犯罪と無縁の一般市民のたわいのない会話であったという。20%は犯罪に関連していたが、同氏によると、これは、盗聴以外の捜査方法では認められない数字だという。

 最近の米国での盗聴法を取りまく展開の中で、最も影響を与える例としては'94年に議会で可決された「デジタルテレフォニー法」があげられた。ここでは、暗号の使用規制のほか、電話、パソコンFAXなどの通信設備に盗聴可能な仕様を組み込むことを通信事業者に義務付けるといった内容が含まれている。この法案が実施された場合には、特定の人物の特定の機器だけではなく、公衆電話も含め、その人物が使うであろう機器すべての通話を盗聴できることになる。ただし、FBI、通信業界、プライバシー保護団体の間でその実施の是非が問われており、現在未実施状態だ。また、電子メールの盗聴に関しては、具体的な統計はないが、FBIでは、プロバイダーにログの提出などの情報提供を求めており、電話での盗聴活動と同様の動きがあるという。


 米国では、盗聴捜査の対象が拡大する傾向にあるという。最後にBarry Steinhardt氏は、「どうか、米国の轍を踏まないように気を付けてほしい」と語った。なお、日本での盗聴法の審議については、現在ストップしているとのこと。

('99/3/24)

[Reported by okiyama@impress.co.jp]


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