■URL
http://www.infobahn.co.jp/ (株式会社インフォバーン)
http://www.st.rim.or.jp/~flui/bk/baka_home.html
(ばかけんちく探偵団)
http://www.infobahn.co.jp/monkey/index.html
(こばへんの編集モンキー)
5月18日、新雑誌「サイゾー」が創刊する(価格690円 発行:インフォバーン 発売:電波実験社)。編集長は、'98年9月に休刊した「ワイアード日本語版」の元編集長小林弘人氏。
「サイゾー」創刊号では「特集 テレビばっか観やがって」「ホームトレーディングで一攫千金」「本宮ひろ志 独占ロングインタビュー」「スクープ!菅直人の公務日程表独占公開」といった記事のほか、爆笑問題や山形浩生氏、押井守氏などの連載を用意。各ページには関連URLが記載されていたり、変な建築物を紹介するサイト「ばかけんちく探偵団」との連携など、インターネットユーザーに楽しめる内容になっている。
今回は、日本のインターネット関連誌の草分けとして、また、斬新なデザインで注目された「ワイアード日本語版」の元編集長がどんな雑誌を作るのか、創刊号発売を前日に控えた小林編集長にお話を聞いてみた。なお、小林氏が、Web上で公開している日記「こばへんの編集モンキー」は、出版業界の裏側をオゲレツな口調で語るそのスタイルが一部で人気を集めている。
●「サイゾー」はすでにネットをツールとして使っている人のための総合誌
ウォッチ編集部(以下編):簡単に新雑誌の内容を紹介していただけますか?
小林編集長(以下こばへん→写真):一言で言うと“情報ニンジャマガジン”なんですよ。皆様に代わって情報をかき集めてくる知的エージェントみたいな。みんなインターネット上で日々いろんな情報を取れるんだから、月刊誌の役割って、情報の文脈を整理して提示する、1種のフィルタリングソフトですね、そういうもんだと思います。
ほとんどのページにURLを載せているんで、もっと詳しい情報を欲しい人はURLに飛んで調べてもらうと。紙にしかできないことをこっちでやって、あとはネットを参照してくださいということです。例えば、2人の素人の女の子がインターネットを使った海外投資を予備知識もなくいきなり始める連載(「レーニンもびっくり! ゼロからの海外投資金」)があるんですが、見てる人がこの子達に入れ知恵してくれるようなBBSを開設する予定もあります。
だから、“情報ニンジャマガジン”というのは、すでにネットをツールとして使っている人のための総合誌というニュアンスですね。
編:スクープ的な記事が多いようなんですが、クレームとか付かないんですか?
こばへん:まだないですね。できてないから(笑)。でも内容証明とか来たら「内容証明評論委員」みたいの作って査定をするっていう企画も考えてます。ワイアードの時は記事に問題があるってことで、朝日新聞が「出版差し止め請求」の仮処分をワイアードに出すって話もありましたね。「午前10時までに編集長から電話がないと出版差し止め請求出すから」と。朝日にやられたら宣伝になるんで、おねがいします、どうぞやって下さいって言ったんですが、結局話し合いになってしまって残念でしたけど。
編:取り上げる題材はデジタルにはこだわらないんですか?
こばへん:デジタルとかアナログとか関係なく注目されているところでいこうと思ってます。インターネットを使えなくても雑誌として読んでもらおうと。もちろん取り上げないという訳ではないんですが、デジタル系のカッティングエッジばかりを求めている訳ではないです。
編:サンプル版を拝見したんですが、思ったより後期の「ワイアード日本版」に近いなという印象だったんですが、今回は、ワイアードの名が無い分もっと好きなことができるぞという感じだったのでしょうか?
こばへん:ワイアードも最初は向こうのスカした知識人の、ある種エリート主義的なところがあって、内容に対するコントロールもかなりシビアでした。デジタル企業をヨイショしろとか。かなりすごかったですよ。
しかし、'96~'97年位に本国Wiredをそれまで支持していた層が離れたり、「Wall Street Journal」とか「New York Times」とか従来誌から叩かれまくったんです。また、初期のメンバーが抜けたり、編集長も交代したりして、向こうのWiredもかなり変わったんですよ。その間隙をぬって、こっちはもっと日本の読者に対してもう少し目線の低い言葉使いで語れないかということで、向こうの混乱に乗じてかなり内容をフレンドリーにしたんです。
それに伴い部数も伸びたんですが、結果的にはライセンスの問題や発行元が潰れたこともあって休刊になってしまった。一緒に編集部ごと売り飛ばされる(他社でワイアード日本語版を発行する)という話もあったんですが、そういうライセンスもののメディアはやりづらいのと、わからない言葉でわからない事を説明しても誰もわからないということにかなり矛盾を感じていました。そういうことに縛られないで再構築したいなと思ってたんです。
サンプル版は賛否両論だったんですが、変わってませんねっていう人は後期ワイアードの内容をよく読んでいた方だと思うんですよ。もう少しトバしたデザインとか洋モノっぽい手触りが好きなクリエイティビティあふれる方々には今回のメディアは向けてませんので。そういう方向よりはもっと内容に対する方向とか掘り下げ方とかに力を注いでます。
編:もっと蛍光色を使え、なんていう声はありませんでしたか?
こばへん:ありましたねえ。でも、あれは弱視者の人に対してやさしくないんですよ。「俺様はアーティスト、俺様の目にかなうこの雑誌」とかっていう一部の人のエゴを満たすために多くの人を切り捨てるということはしたくない。サイゾーは、(読者に対する)敷居を低くしたいですね。
・住宅街の一軒家に構えられたサイゾー編集部の様子 編:競合の雑誌ってどの辺になるんでしょう?「噂の真相」に近いかなと思ったんですが。
こばへん:競合誌は「日経エンターテイメント」って言ってるんですけどね。今回たまたまテレビ特集なんで(笑)。「噂の真相」に近いというのは、ある種正しいですね。別に競合しようとは思っていませんが。まあ、皆さんで判断していただければ。
編:読者層はどのあたりを想定してますか?
こばへん:20~30代で後期ワイアード日本語版の読者ですね。多分男性中心になると思いますね。
編:今後の予定をお聞かせください
こばへん:そうですね。次号も面白いスクープが入りますので、楽しみにしていてください。サイゾーは“読む飛び道具”。情報はフリーになりたがっている。おいらのチンコもフリーになりたがっているといういうことで(笑)
編:ところで編集モンキー読んでる人に「思ったより真面目な方ですね」って言われることはありませんか?
こばへん:なんで裸じゃないんですかとかね。そんな裸でうろついてる訳ないだろ。過剰な期待をしている人は多いですね。突然脱ぎ出すんじゃないかとか(笑)
編:ありがとうございました。
●取材を終えて
('99/5/17)
[Reported by okiyama@impress.co.jp]