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【インタビュー】

フォンドットコムジャパンに聞くWAP戦略

 本年の4月から、DDIやIDOらによって日本でもWAP(Wireless Application Protocol)準拠のサービスが始まった。WAPは、モトローラ、ノキア、エリクソンら大手通信各社とアンワイヤード・プラネット(現:Phone.com)が'98年に設立した「WAPフォーラム」によって国際規格化された、携帯端末向けのインターネット接続用プロトコルの総称だ。

 今回は、Phone.comの日本法人であるフォンドットコムジャパン株式会社、ゼネラルマネージャである石井和彦氏に、WAPに関連する技術や普及の戦略などについて話を伺った。

■Phone.com
http://www.phone.com/


IW編:この4月から、社名が日本アンワイヤード・プラネットからPhone.com(フォーンドットコム)に変わりましたが、そのあたりの経緯について教えて下さい。

石井:アンワイヤード・プラネットは、無線の業界で名前は通っていました。しかし、NASDAQでの株式公開を決めたとき、一般の投資家が投資するとなると、「アンワイヤード・プラネット」ではよくわからない会社かなと。そこでもうちょっとわかりやすく、インターネットと電話関係の製品を作っている会社ということで考えました。

IW編:やはり、電話というところをかなり意識しているんでしょうか?

石井:そうです。移動体の電話機が一番大きなマーケットだろうと思っています。やはり新しい機種の買い替えが非常にたくさん起きているところでないと、ブラウザー付きの製品は出ていかないですから。我々のフォーカスは、まず第一にワイヤレスの電話機。次に、ワイヤーやそれ以外の家電に進出していこうかと思っています。

IW編:米国と日本の市場の違いはどう思われますか?

石井:テクノロジー自体は非常に似ており、技術的に大きな違いはないと思います。しかし、市場としては随分違いがあると思いますね。アメリカで(携帯)電話機をもっているのは、ビジネスユースの方が多いです。一方で日本は、非常にコンシューマオリエンテッドですね。まず、電話機を持っている層が違いますし、使い方が違います。

IW編:それに対して御社の今後の戦略について聞かせて下さい。

石井:我々は日本市場に合った製品を出していかなくてはいけないと思っています。日本でビジネスユースというのは、全体の1割以下ではないかと思うんです。これまでは、第一段階としてアメリカにあった技術を日本に持ってきたわけですが、これからは日本市場にあった製品を考えています。

IW編:具体的にはどんな製品でしょう?

石井:日本では、特にE-Mailの利用が非常に多いです。ですから、まずはE-Mailユーザビリティの向上ですね。これは私ども日本での大きなプロジェクトとしてすでに動いておりまして、そういった商品を今年後半から市場に投入できると思っています。

IW編:記述言語についてお伺いします。現在WAPはWMLが標準規格となっていますが、現在IDO、DDIが行なっているWAPベースのサービスはHDMLです。その言語の違いについて教えて下さい。

石井:簡単にいうと、HDMLがもとになってWAPのWMLができています。HDMLは我々(旧アンワイヤードプラネット)独自の記述言語です。WMLはこれまで1.0という規格でした。これはある意味HDMLのサブセットみたいな形で、HDMLのほうがもっとたくさん機能があったんです。(WMLは)最初の標準なので、あまり機能をつけなかった。各社に確認されるといいと思うんですが、いろんな機能をやるにはHDMLのほうがいいという判断をされたのではないかと思います。現在では、今年の6月にWML1.1という規格が決まりまして、そこからかなりギャップがなくなってきています。機能的には(HDMLに)近く、かつ標準であるのがWMLです。将来的には、WMLになっていくのではないかと思います。

IW編:iモードで使われている「コンパクトHTML」と「WML」の規格の違いについてはどうでしょう。

石井:技術的な比較というのは非常に難しいと思うんです。我々自身もHTMLのページに直接アクセスにいけるトランスレーターというのを、製品の上に持っています。ですから、技術的な観点からの比較というのは意味を持たないのかなと。ただ、マーケティングの観点から見ると、コンパクトHTMLは基本的にHTMLのサブセットですから、開発自体は非常に簡単にできるんじゃないかと思います。一方で、WAPのほうは、同じタグ言語ですが、XMLをベースとしたモバイルに特化した言語を新たに作ったものです。WMLのいいところは、インターネットの技術をバックに持った技術だということです。やはり、世界標準じゃないと、いずれどこかで行き詰まるところがあると思ってるんです。そういった意味で、WAPは世界で100数十社、ドコモさんもそうですが、大企業がサポートしてくれていると。グローバルスタンダードという意味では、WMLのほうがその辺を視野にいれたコンセプトなのかなと思っています。

IW編:コンテンツを作る側からみると、HDMLというのは、HTMLに比べると難しいと思うのですが。

石井:そうですね、HTMLに慣れた人から見ると、HDMLというのは別のタグを覚えなければいけないので、面倒ではあると思います。ただ、いずれ、電話のモビリティという特性を生かした、新しいモバイル専用のコンテンツというのがでてくると思うんです。そういうのを作ろうと思った場合は、ゼロから作るわけですから、その場合はWMLで作る人が多いんじゃないかと思っています。もちろん、今後ツールを出したりトレーニングをどんどんやっていかなくてはいけないと思います。ただ、我々自身がいろんなツールをガンガン作って世の中に売っていこうというよりは、XMLのツールが世の中にでてくるでしょうから、それを我々の開発キットの中に取り込んでいくようなアプローチを考えています。

IW編:先日、iモードが100万台を突破ということで、現時点で日本ではiモードが先行している印象がありますが、それに対して今後のWAPの普及の戦略は?

石井:我々はiモードと直接コンフリクトするとは考えていません。ドコモのサービスとIDOやDDIのサービスを比べているのであれば、そちらに聞くのがいいと思います。技術的に我々の製品面からみると、製品自体はWAPというグローバルなスタンダードをベースにしています。アメリカでもスプリントなど、これから大きなキャリアがサービスを始めますので、そういった意味でグローバルスタンダードというのは重要だと思っています。我々もそれを念頭において製品を作っていきたいと思っています。

IW編:先日、WAP対応ブラウザー「UP.Browser」を3Comにライセンスされましたが、PDAに関して国内メーカーとはどうなっているのでしょうか。

石井:現在、日立、パナソニック、ソニーなど国内メーカー12社ぐらいと話をすすめており、すでに10数社のメーカーが我々のブラウザーの移植作業にかかっています。日本では、電話機を作っているところはPDAも作っていますね。たとえばあるメーカーが電話機にブラウザーを移植するようなことを考えているとすると、自動的にその会社のPDAにも移植する権利が与えられることになっています。現在は電話機にフォーカスしていますが、その付加的な要素として各メーカーがPDAに移植するというのは、メーカー自身の判断でできればと思っています。

IW編:ありがとうございました。

('99/8/11)

[Reported by junko@impress.co.jp]


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ウォッチ編集部INTERNET Watch担当internet-watch-info@impress.co.jp