INTERNET Watch Title Click

【レポート / サービス】

安い本屋はAmazon.comだけじゃない!
――インターネット書店の価格を見る

 かつて国内で洋書を買うのは面倒なことだったが、インターネット書店が登場してからは海外の書店から気軽に洋書が手に入るようになった。こうした潮流に大手オンライン書店のAmazon.comが果たした役割は極めて大きい。大量の本がページに陳列されていて、しかもディスカウント価格で手に入るのは衝撃だった。しかし、時は流れ、オンライン書店の数は随分増え、競争は激化した。そのため、かつて最も安い本屋の1つだったAmazon.comも、買う本の種類によっては比較的高い場合すら出てきたのである。その様子を商品の価格比較エージェントソフトClickTheButtonを使って調べてみた。なお、ここで調査のために選んだ書籍はあくまで一例であり、書籍によって激しいばらつきがあることをご承知置き願いたい。

 まず見てみたいのはAmazon.comのPurchase Circle日本部門でいつもランキング入りしている「Standard & Poor's 500 Guide : 1999」である。これは米国株式市場のS&P500インデックス企業を分析した辞典だ。Amazon.comとBarnes & Nobleは共に19.96ドルをつけた。最も値段が高かったのは1bookstreet.comの22.46ドルで、Amazon.comより2.5ドルも高い。しかし、最安値をつけたのはAll Direct Booksの15.97ドル。Amazon.comやBarnes & Nobleよりも実に3.99ドルも安いのだ。

 次は現在New York Times BestSeller Listに載っているSandra Brownの小説「The Alibi」。Amazon.comは12.98ドル、Barnes & Nobleは12.97ドルとほとんど変わらない。最安値のBUY.COMでさえ12.46ドルとAmazon.comに比べてたった52セントしか違わない。ところが、最高値をつけたのはPowell's Booksの25.95ドル。最安値と比べて13.49ドルも高いのである。

 もう一冊のベストセラー、ビジネス部門にランキング入りしているWWWの考案者Tim Berners-Leeによる「Weaving the Web」。Amazon.comとBarnes & Nobleは共に18.20ドルをつけたが、最安値はBOOKSAMILLION.COMの15.60ドルで、2.6ドル安だった。

 次に専門書を2冊見てみよう。一冊はコンピューターの分野から、セキュリティーの話題を扱って評価が高い「Hacking Exposed」。これもAmazon.com、Barnes & Nobleは同じ31.99ドルをつけた。しかし、bookpool.comは23.95ドルをつけ8.04ドル安、最高値の1bookstreet.comは44.99ドルでAmazon.comよりもなんと13ドルも高かった。もう一冊は理論物理学の分野で定評のある重力の本「Gravitation」。Amazon.comは70.95ドル、Barnes & Nobleはそれより4.8ドル高い75.75ドルをつけた。しかし最も安かったVarsityBooks.comの60.31ドルと比べるとAmazon.comでさえも10.64ドル高い。

 ここまで細かく見てきたが、一般的な傾向として、巨大書店のAmazon.comとライバルのBarnes & Nobleはほぼ同じくらいの価格で提供していることが分かる。特に、大量に売れるベストセラーリストに載る書籍などは今でもAmazon.comやライバルのBarnes & Nobleが最も安い価格帯で提供している。しかし、専門書となると様子はがらりと変わる。Amazon.comやBarnes & Nobleのような巨大書店よりも、科学分野、コンピュータ分野など専門書だけを扱っているような小さなオンライン書店が大幅にディスカウントをしていることがわかる。実際にさまざまな書籍を比較していただければ分かるのだが、上記の数字でたまたま値段が高く表示された書店でも、違う種類の本を選べば驚くほど安い価格で買えることも少なくないのだ。私たちは書籍の価格を選べる時代に確実に突入したと言えよう。

 最後に少しだけ注意点を。最も安い価格を表示している書店でも、残念ながら海外への発送を受け付けていないところもある(例えばBUY.COMのような大手でもそうだ)。さらに、送料の計算の仕方が書店によってまちまちなために、値段の差によっては書籍本体の価格が高い方が全体としては安く買える場合もあるのだ。そして、書籍の発送状況の確認など、細かいサービスではやはり今でもAmazon.comやBarnes & Nobleのような大手書店には安心感がある。自分にあった書店を選ぶように心がけよう。

('99/11/1)

[Reported by taiga@scientist.com]


INTERNET Watchホームページ

ウォッチ編集部INTERNET Watch担当internet-watch-info@impress.co.jp