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【COMDEX/Fall '99レポート】

20周年のキーワードは「Non-PC」と「モビリティー」

COMDEX/Fall '99の展示会場
活気あふれる展示会場

 創設以来20周年を迎え、1900年代の最後を飾るCOMDEX/Fall '99の展示会場の開幕直前は、広いコンベンションセンターの入り口が人であふれるほどの人だかりとなった。参加者は米国からはもちろんのこと、あちらこちらから英語以外の言語での会話が聞こえる国際色豊かなものだ。文字通り世界のコンピューター関係者が一堂に会したともいえる盛況ぶりである。

 また、今年のCOMDEXではLinuxビジネスエキスポが併設されている。COMDEX=ウィンテルプラットフォームの展示会ともいえるこの場にLinuxの展示会が併設されていることはもちろんのこと、ビル・ゲイツ氏とともにLinux開発の中心人物であるLinus Torvalds氏が基調講演をするということも、激しい業界の動きを反映してのことだといえるだろう。


■キーワードは「ネットワークアプライアンス」と「ワイヤレステクノロジー」

Acerのネットワークアプライアンス機器
Acerのネットワークアプライアンス機器

 COMDEXはコンピューター関連機器の総合展示会であるという性格上、実にさまざまな分野の製品が出品されている。しかし、その多くはインターネットやネットワークのテクノロジーに根ざしたものであり、パソコンとネットワークが不可分であるということを改めて感じさせる。

 とくに今年はパソコンよりも簡易な機器で、Webのブラウジングと電子メールを利用することに機能を絞った200ドルから400ドル程度の低価格な製品群、いわゆる「ネットワークアプライアンス」(ネットワーク専用機)と呼ばれる製品がにぎやかである。初日のビル・ゲイツ氏(Microsoft社チェアマン)のキーノートスピーチでも、Web CompanionというMSNの専用機器が発表されたが、同様なコンセプトのものを各社が出展している。

 また、ネットワーク専門の展示会では出展の中心が広帯域のネットワークに移っているのだが、ここCOMDEXでは一般向けのワイヤレスネットワークがおもしろい。WAPをベースとした携帯電話とBlueToothがその主役といってもいいだろう。

 まさに20周年を迎えるCOMDEXのトピックは「ネットワークにつながった非PC」という象徴的なものである。


■ネットワークアプライアンスはマーケティングツールか

 パソコンほど汎用的でない代わりに複雑ではない、つまりWebと電子メールを使うだけに設計されたインターネット専用機~いわゆるネットワークアプライアンスは今後広く普及していくのだろうか。インターネットが裾野の市場まで広がるためには、いまのパソコンが難し過ぎるというのは誰しもが認めるところだ。日本において、ポケットボードのような機器が普及したことを考えると、それなりの市場はありそうだ。しかし、おそらく多くのパソコンユーザーにとっては「低機能すぎて、本当にこんな程度でいいの?」という印象を持つに違いない。

 この商品はまだまだ洗練される必要もあるが、現在のところは店頭で自ら選択して購入するものではなく、おそらくISP(インターネットサービスプロバイダー)にとってのマーケティングツールの一つととらえると分かりやすくなるかもしれない。つまり、安価に製造でき、自社のアクセスポイントへの設定がされているので、これを無償かまたは安価で利用者にばらまき、長期にわたるISPへのアクセス料金をもって代金を回収しようという「PHS型マーケティング戦略」が見え隠れする。

 ISPにとっては顧客の数が多ければ、アライアンスを組むマーチャント(店舗)との契約を有利にし、磁石のようにサービスやコンテンツをISPに吸い寄せることもできるようになる。実際、接続の設定が変えられなければ、ISPをつぎつぎと乗り換えることもないし、インターネットを始めたい人にとっては、なにしろ安く、手軽にインターネットを使える方法なのだ。ISPとの長期契約を前提にパソコンを無償で配布するいわゆる「フリーPC」はハードウェアのコストが高く、しかも多目的に使えることから、ISPにとっては必ずしもすぐれたマーケティングツールとはいえない側面がある。もちろん、配布した先のユーザーがパソコンを使いこなせないときはサポートまでも必要になる。

 ISP専用のインターネットアクセス端末は米国ではAOLが自社接続用の端末を開発中であると報じられたこともあるし、安価なインターネットターミナルをマーケティング用とはっきり言い切ったリリースを出しているハードウェアのベンチャー企業もあるくらいだ。 AOLがサインナップソフトウェアのCD-ROMのバラ撒き作戦で大成功を収めたように、これからはひょっとするとネットワークアプライアンスのバラ撒き戦争がはじまるのかもしれない。

インターネットアクセス端末1 インターネットアクセス端末4 インターネットアクセス端末3
インターネットアクセス端末5 インターネットアクセス端末6 インターネットアクセス端末2
ネットワークアプライアンスゾーンに展示されていたインターネットアクセス端末の数々。いずれも200ドル~400ドル程度の低価格。接続方法は56kモデムだが、将来はDSLやケーブルモデムに対応とのこと。

■米国でも携帯電話でインターネット、そして姿をあらわしたBlueTooth

 ネットワーク専門のコンベンションでは決してワイヤレスネットワークは人気ある商品とはいえない。しかし、ここCOMDEXではワイヤレスネットワーク関連の製品を指摘しないわけにはいかない。一つはWAPに対応した携帯電話、もう一つはBlueToothである。

 携帯電話を使ったインターネットアクセスは日本ではNTTドコモが「iモード」という独自の規格で先行し、爆発的な普及を遂げていることはあらためて説明するまでもないことだが、欧米ではWAP(Wireless Access Protocol)と呼ばれる類似した業界標準規格で進められている。NokiaやEricssonなどの携帯電話メーカーはWAPに対応した電話機を出展することはもちろんのこと、NokiaのブースではWAPを使ったサービスプロバイダーが軒を並べた。たとえばMapQuestではご存知の道案内のコンテンツ、その他、株価のリアルタイム表示、社内情報へのアクセスなど、多くのコンテンツが登場している。また、WAP1.1に対応したキーボードがついたPDAタイプの端末も登場している。

NokiaのWAP対応の携帯電話機   WAP1.1が実装されたEricssonのPDA
NokiaのWAP対応の
携帯電話機
  WAP1.1が実装されたEricssonのPDA

 BlueToothは無線ネットワークの方式の一つで、位置付けとしてはちょうどIrDAとIEEE802.11の中間に位置するものである。主にNokia、Ericsson、IBM、東芝などが中心に規格の策定が進められているものである。通信する機器はパソコン同士でもいいし、ハブに組み込めばワイヤレスLANとしても使える。また、デジタルカメラとパソコンでデーター交換したり、さまざまな電子機器にも組み込めたりする。出力と通信速度はIEEE802.11よりも遅いが、価格を抑えることで普及を図ろうという製品である。つまり、これまでのIrDAの欠点である転送速度の遅さ、机の上がちらかっていると赤外線が遮断されて通信できないなどの欠点をカバーし、かといって高価にならないという「いいとこどり」の規格である。実際のデモンストレーションではおおむね快適に作動しており、今後のワイヤレスネットワークの普及に期待が持てるものである。

BlueToothのテーマゾーン
BlueToothのテーマゾーンではネットミーティングを2台のPCで。
手前のPalmPilotと携帯電話はこのデモンストレーションでは関
係ない。もちろんこれらもBlueToothに対応している。

■新手のパソコン登場

 パーソナルコンピューターといえば、ディスプレイとキーボード、そしてポインティングデバイスが必需品とされてきた。しかし、ここにきて新たに登場したものがAqcess Technologies社の「Qbe」である。

 これは13.3インチのXGAディスプレイを搭載し、ちょうどA4ファイルサイズくらいの大きさで厚みが10ミリ程度のパッド形態のものである。中身はWindows 98が動いており、Windows CEとは一線を画している。さらにビデオコミュニケーション用のカメラが内蔵、PCMCIAスロットにモデムカードが装着されており、ネットワークへの対応も万全である。キーボードはなく、ペンで入力するようになっている。縦置き、横置きどちらにでも使うことができ、卓上で使う場合にはドッキングステーションを使い、キーボードやCDドライブが使えるという製品だ。

 価格は3,000ドル以上するが、ノートパソコンの新たな形態としては注目株といえるだろう。

Qbe   Qbe
パッド型ウィンドウズマシン「Qbe」(Aqcess Technologies社)。
13.3インチXGAディスプレイ。まるで液晶パネルを持ち歩くようだ。
背後にあるのはドッキングステーション

■最も注目すべき企業はソニー

 基調講演に出井社長が登場したソニーのブースではメモリースティックが注目である。メモリースティックは単なる不揮発性メモリーではなく、PCMCIAのような周辺装置のインターフェイスに進化していこうとしている。BlueToothのカードを始め、GPSなど実にさまざまな機器の模型が展示され、今後のPDAなど小型の携帯電子機器のネットワーク接続に大きく貢献することが期待できそうだ。これ以外にもWindows Mediaとコピーライト保護機構のOpenMGに関するMicrosoftとの協力関係、そしてパームコンピューティングとの提携関係など、多くのアライアンスが一気に発表された。詳細については明日レポートすることにしよう。

('99/11/17)

[Reported by Yoshihiro Nakajima/IPG Network, Inc.]


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