活気あふれる展示会場 |
今年のCOMDEXにはネットワークアプライアンスをはじめ、家庭でもかんたんにインターネットにアクセスする製品が出展されているのがトレンドの一つであることは昨日レポートしたとおりだ。一方でコンピューターを中心にさまざまな情報家電をネットワークで結ぶホームネットワーク環境を提案しているのがソニーのブースである。
ソニーのブースは広いCOMDEXの展示会場の中でひときわ人だかりができる場所であることは間違いない。取材に訪れても、製品のそばまで寄れないものがいくつもある。
人気の秘密は会期2日目に出井社長が基調講演に立ったことと、2000年代に向けたホームネットワークのコンセプトを提示する技術デモンストレーションがあるからだろう。COMDEXのような展示会に参加する人はコンピューター環境の半歩先を夢見ている人も多いと思うが、それに答えてくれているのがまさにこのブースなのだ。
ソニーは今年の初夏に「すべての製品をネットワーク対応にする」というコンセプトを提示しているが、その具体像が見えてきたというわけだ。
チューインガムサイズのメモリーモジュールとして、すでにソニー製品の多くで採用されているメモリースティックだが、単なる外部記憶媒体としてだけではなく、周辺装置のインターフェイスとしての姿をあらわした。残念ながらここで展示されたものはすべて模型であり、すぐに稼動するものではない。しかし、PCMCIAカードよりもはるかにコンパクトな周辺装置の規格となっているため、ノートパソコンはもとより、PDA、携帯電話機、デジタルカメラ、ビデオカメラ、AV機器などなどさまざまな携帯情報機器に対応する業界の周辺機器インターフェイスを目指している。展示されているものはGPSモジュール、音声録音モジュール、ジョグダイアルモジュールなど10以上のアイデアであり、早いものは2000年の早期に市場にお目見えするようだ。
メモリースティックを使った周辺機器の模型の数々 |
OpenMGとはソニーが開発した音楽著作権保護機構だ。すでにIntertrust、Liquid Audio、Preview Systems、RealNetworks、Reciprocalの各社が持つ電子音楽配信技術との間で相互接続を実現していくことで合意している。このOpenMGを採用したソニー製パソコンと「メモリースティックウォークマン(NW-MS7)」、「ミュージッククリップ(MC-P10)」というポータブルオーディオ機器は、各社の電子音楽配信技術を使ってインターネットで配信された音楽をダウンロードして再生するものだ。ダウンロードした音楽データには、再生可能な機器のIDをウォーターマーク(電子透かし技術)として埋め込む。これによってPCとUSBでつながれたプレーヤーにコピーできる回数をコンテンツの配信業者がコントロールしたり、他人のプレーヤーにはコピーできないようにしたり、さらにメモリースティックに記録されたデータを読み出したりできない仕組みを提供し、音楽データが際限なく複製されないようにするもので、音楽のダウンロードビジネスには必須の規格とされている。音楽ビジネスも手がけるソニーがダウンロードビジネスに必須の機能をいち早く実装した製品を出したことは業界的な意味は大きい。
メモリースティックウォークマンはすでにおなじみだろうが、今回展示されたミュージッククリップはちょっと太いボールペン程度のプレーヤーで、メモリースティックウォークマンのようにメディアの交換はできないものの、ソニーらしいデザインが魅力的なものである。
ミュージッククリップ。ちょっと太めのボール ペンのような感じでソニーらしいデザイン。 |
キーノートスピーカー各氏が話題に取り上げていることからも、家庭内のネットワークは今後数年間のテーマとなるという思惑は各社一致したところだろう。ソニーはVAIOシリーズを中心にしたインターネットに接続するホームゲートウェイを参考出品した。ケーブルでの接続にはiLINKを使い、1階と2階など離れたところの通信にはIEEE802.11bを採用するデモを展示した。もちろん周辺機器同士のデータ交換など、用途によってはBlueToothが使われることも否定していない。いずれにしても、小型のホームサーバーを核として、すべての情報家電をネットワークに接続しようというコンセプトを提案している。
ホームネットワークの技術デモ。2枚の写真は、それぞれ家屋の1階と2階という想定 |
ホームネットワークのコンセプト図 |
家庭で入手できるメディアは、インターネット、ケーブルテレビ、地上波放送、CS放送などであり、パッケージメディアとしてはDVDやMDなどが想定される。これらのメディアを単一のゲートウェイを使ってiLINKで集線するものがデモンストレーションされた。デモでは、それらの番組ソースに対して単一のユーザーインターフェイス(操作方法)で操作したり、それを別の装置で録画したりしてみせていた。
実際にはメディア(プレーヤー)ごとの違いなど技術的な課題はあるが、複数のメディアからのコンテンツがシンクロするなどの新たな表現方法も想定されている。
MD、ケーブル、CS、インターネットを中央の縦型のゲートウェイに集線し、 テレビの画面のメニューで統合的に操作が可能。いずれは複数の情報 ソースがシンクロする番組も可能か |
デジタルビデオカメラの記憶媒体としてMDを使うものが出展されているが、実はこの製品にはイーサネットコネクターが標準で装備されている。つまりIPのネットワークに直接接続し、映像ファイルのアップロード、ダウンロードができるという機能を持つ。しかもランダムアクセスが可能な記憶媒体を採用していることから、カメラに付属している液晶パネルで基本的な映像の編集ができるというふれこみだ。
しかし、なぜソニーはiLINKを使わずにイーサネットを採用したのか。答えは「カメラ自身で編集機能までもっているので、PCに接続する意味がない」ということだ。
RJ-45インターフェイスが付いたMDハンディカム。編集が液晶パネルで でき、しかもイーサネットを使ってビデオのダウンロードが可能 |
('99/11/19)
[Reported by Yoshihiro Nakajima/IPG Network, Inc.]