14日のビル・ゲイツ氏(Microsoft社)のキーノートから始まった1900年代最後のCOMDEXもいよいよ閉幕する。今後のコンピューター業界を展望する意味からもここで総まとめをしておくことにしよう。
COMDEX20年の歴史年表。それぞれの 年のホットなトピックが一目でわかる |
4日間にわたるCOMDEXの基調講演で語られた主要企業のビジョン、そして展示会場に出展された多くの製品を通してみると一つの方向性が見えてくる。それはコンピューターやインターネットが普及することによって、これまでの「機能を提供するパソコン」から、「サービスを受けるパソコン」に変わりつつあるということだ。しかも、いつでも、どこでもサービスを受けるというニーズを満たすためにはパソコン以外の情報機器も重要な役割を担いつつある。
実際、COMDEXが始まった20年前からパソコンのアーキテクチャは大きく変わることはなかった。変わったのはプロセッサーの速度、ディスプレイの解像度と色数、本体の大きさや重さであった。そして、オペレーティングシステムやアプリケーションなどのソフトウェアもバージョンアップのごとに機能強化がはかられ、新しく登場するハードウェアの能力を搾り出すことが求められてきた。
しかし、すでに十分なハードウェアの性能向上がはかられ、アプリケーションも画期的な機能強化が必要なくなってきている。つまりパソコン+ソフトウェアが提供できる機能はかなり完成されてきたといえるのではないだろうか。一方で、パソコンの利用者は増加したが、これからパソコンを使おうとするユーザーにとっては、この20年間に複雑化したパソコン+ソフトウェアという構成の道具は習得することを困難にしている。
インターネットが広く普及することで、今までパソコン+ソフトウェアという構成で提供されていた機能を創造的に組み合わせて仕事をするようになり、すでに用意されている「サービス」を受けることが実はユーザーのニーズであったことに皆が気づき始めた。
これまでのパソコン+ソフトウェアはあくまで問題を解決するための「素材」であり、素材が提供されるだけでは問題は解決されていないということがはっきり認識されてきた。本当の問題解決は「サービス」にある。サービスを受けるための機器はパソコンを始めとして、PDA、携帯電話をはじめとするさまざまな電子機器が注目されているわけだ。
もちろん、サービスを提供するASP(アプリケーションサービスプロバイダー)という業態が注目されているのも同じ理由からだ。
こうした背景をもとにMicrosoftはウェブコンパニオンという製品を発表し、さらにOfficeオンラインを発表した。一方、Sun Microsystemsは電話のモデルを例にとり、コンピューターはサービスを受ける文字通り「端末」となり、機能は中央のサーバーが提供することによって、ユーザーの附加を軽減しようというコンセプトを提示しているのだ。具体的なソリューションは異なるが、実はサービス指向のコンピューター環境を中期的な将来像に据えていることは共通している。
このように業界の大きな変革期を乗り切り、2000年代のキープレイヤーになるのはどの企業だろうか。やはり鍵となるのは「ネットワーク」ということに他ならないだろう。
ネットワークによって、これまで独立して動いていた機器同士が通信を始め、これまで独立していた人間同士がコミュニケーションを始めるにいたった。2000年代に重要になるのは、情報のデジタル化がさらに進み、これらの情報が相互に交換され、ネットワークという新しいプラットフォームが台頭してくことだろう。これまではパソコン本体やオペレーティングシステムをプラットフォームと位置付けていたが、これからはネットワークこそがプラットフォームで、パソコン、電子機器、オペレーティングシステム、アプリケーションなどのすべてがそれによって規定されていくことになるのは間違いない。
この波に遅れない企業、それが2000年のキープレイヤーになるはずだ。
('99/11/19)
[Reported by Yoshihiro Nakajima/IPG Network, Inc.]