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【新技術】

慶應大ら、次世代インターネット経由の日米合同授業を公開

■URL
http://www.sfc.wide.ad.jp/soi/class/99007/ (SOIについて)
http://www.sfc.wide.ad.jp/DVTS/ (DV over IPプロジェクト)
http://www.kame.net/ (IPv6 KAMEプロジェクト)

教室の様子
教室の様子
 
左から、徳田氏、村井氏、大川氏
左から、徳田氏、村井氏、大川氏
 
SFCの衛星パラボラアンテナ
SFCの衛星パラボラアンテナ

 慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)において、「次世代インターネット上での日米合同授業」記念式典が実施され、実際に講義や説明、質疑応答などの模様が記者に公開された。

 これは、WIDEプロジェクトの「School on the Internet(SOI)」によるもの。制度的には試運転の段階だが、各大学においては単位の与えられる正式な科目となっている。SOI自身は1997年から活動を始め、主にオンデマンドで講義のアーカイブにアクセスさせるといった形態となっていた。今年はこれをIPv6によるマルチキャストを使って毎週定期的にリアルタイムの合同授業の形で実施した。すでに9月末から授業が行なわれており、1月まで続けれられる。ほか、履修登録や課題提出などもSOIでサポートされる。

 授業は大学院を対象にした「コンピュータネットワーク概論」の講義。SFCと奈良先端科学技術大学院大学、米Wisconsin大学の3点をライブビデオで結び、慶應義塾大学環境情報学部の村井純教授とWisconsin大学のラリー・ランドウィーバー教授が交互に教鞭をとる形態となる。各教室には教壇などにスクリーンが設置され、他の教室の様子が映し出されるほか、互いに質疑応答などもできるようになっている。各キャンパスでの登録受講者は、SFCが約30名、奈良が17名、Wisconsinが約60名。

 回線は、SFCと奈良・Wisconsinそれぞれの間を30Mbpsの回線で結び、奈良とは秒30コマ、Wisconsinとは秒15コマで、無圧縮の映像を送り合っている。公開された様子では、スクリーンにちょっとした映画程度の映像品質で画像が表示され、ストレスを感じさせなかった。なお、現在は実験のため無圧縮で実験しているが、MPEG-2圧縮なら6Mbpsで映像が送れるだろうという。

 技術的には次世代IP規格のIPv6を始め、IPv6マルチキャスト、米国の高速バックボーン「Internet 2」など、次世代インターネットの実験でもある。村井氏は「IPv6などの次世代インターネットがプロダクションレベルで役に立つ技術レベルであると実証する」ことも目的の一つであるとし、「IPv6はマルチキャストのルーティング等で利点がある。誰かがいずれ(IPv6の運用を)始めなければならない。そこでビジネスリスクの少ない自分たちが始めた」と語った。

 また村井氏は「これらのシステムは自分たちがPCベースで作った。そのため、システム的には低コストで実現でき、インターネットならではのものとなった」と強調した。

 ただしインフラとしては高度なものが必要で、日本では高速バックボーン(J-BONE)に繋がった15大学、米国ではInternet 2などに繋がった65大学ぐらいしか利用できないという。そのため、衛星インターネットなどを使い、「それぞれのインフラの特徴を活かした」方法も試行していきたいという。

 SOIのチェアを勤める大川恵子氏は、このシステムにより、それぞれの専門でベストな人が講義できるとメリットを語った。ただ日米ともなると時差の問題もあり、記念式典は日本の午前となったが、通常の授業は日本の夜中に行なわれている。村井氏は「日米両方の時間で仕事をすることになり、寝る暇がない」と笑った。

 一方、慶應の常任理事の徳田英幸氏は、このシステムを広めるには運営の上で「教師や学校へのテクノロジーの普及が必要」「スタッフがたくさん必要」「知的所有権が誰のものになるかの問題」の3つの問題点があると指摘した。スタッフの問題については、現状のライブ授業ではモニタリングも含め人数が必要だが、オンデマンド型なら通常の授業のようにTA(Teaching Assistant)が2人いれば実現できるとし、やがてはDTVC(Desktop Video Conerence)の時代となるだろうと語った。また、「授業の規模が大きくなるので課題の採点が大変」と冗談交じりでもらしながらも「生徒間で課題を評価しあったり、成績通知を暗号化してフィードバックしたりといったこともSOIで実現できるだろう」と語った。


(1999/12/14)

[Reported by masaka@impress.co.jp]


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ウォッチ編集部INTERNET Watch担当internet-watch-info@impress.co.jp