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【業界動向】

マザーズ第一号銘柄2社が22日に新規上場
買い注文殺到で初値つかず、人気化の反面まだ問題や課題も

■URL
http://www.tse.or.jp/mothers/

システム売買室を訪れた2社の代表
気配値
 東京証券取引所の新興市場向け証券市場マザーズに22日、第一号銘柄としてインターネット総合研究所(ネット総研、コード番号4741)とリキッドオーディオ・ジャパン(リキッド、4740)が新規上場した。

 両銘柄とも寄り付きから買い物が殺到し初値がつかず、結局この日の制限値幅の買い気配まで切り上げ取引を終了した。ネット総研が公募価格1,170万円に対し2,070万円の買い気配(ウリ14株、カイ4,970株)、リキッドが同300万円に対し600万円の買い気配(ウリ144株、カイ2,453株)。

 マザーズ上場前に、東証は急きょ直接上場銘柄の値幅制限の見直しを行なった。上場日翌日からは、通常の値幅制限がとられるはずだったが、上場日の動向を踏まえ22日にさらに見直しを行ない、24日から適用される。初値が決まるまでの措置として、気配更新の上限値をリキッドが999万円(通常の値幅制限だと100万円、24日の上限は999万円)、ネット総研が900万円(通常の値幅制限だと200万円、24日の上限は2,970万円)となる。リキッドが1,000万円を超えればネット総研と同じ扱いになる。

 また、東証は21日付からようやくメールマガジン「Mothers Information Service」の配信を開始し、この値幅制限に関しても22日付配信の第2号で掲載されている。ただ、一般会員向けのものでも文章表現が分かりやすいとはいえないかもしれない。

 株式市場関係者は、このまま2社とも当分初値がつかないとみる向きが大勢だ。ただし、ネット総研に関しては4,000万~5,000万円の初値がつくのではとの声も少なくない。人気化しているのは、いわゆる初モノ人気のほか、公募株数が少ないことに伴う需給の逼迫があろう。 ネット総研の場合、発行済み株式数1万3,210万株に対して公募株数は1,000株だけなので公募株数の比率は7.6%。ブックビルディング時の仮条件では、1株あたりの価格は一番初めの想定で300万-500万円だったようだが、これが400万-1,000万円で提示され、その後1,000-1,200万円となり、結局1,170万円に公募価格が決定された。予定価格の引き上げは、米国のIPOでもよくあることだが、その場合公募株数もかなり増加される。また、米国でも発行済み株式数に対する公募株数の比率が少ないことで「株価の吊り上げを狙っているのでは」と批判する声も増えてきたようだが、それでも多くの場合その比率は20%程度はある模様。

 人気化の反面、表示株価(最低投資資金)が高すぎることを批判する向きもある。常識的に考えて、確かに1,000万円を超える銘柄は普通の一般投資家にはなかなか手が出ない。これら、一般投資家を相手にしない態度ととられても仕方がないといえる。

 一方、オンライントレードを行なっている証券会社では、マザーズ銘柄をオンライントレードでは扱わないところがほとんどだ。これでは、インターネット銘柄をインターネットで売買できないという何やら変な状況といえないだろうか。各社の対応を簡単にまとめると、松井証券では「初値がついた日の翌日から注文を受け付ける」、野村證券では「オンラインでは扱わず電話・店舗注文で扱う」、大和証券では「オンラインでは扱わず電話と店舗注文扱い売買確認書を提出してもらう」、マネックスでは「値嵩株は取り扱わないので今回のマザーズ銘柄も扱わない」、日興ビーンズでは「通常の東証1部や2部と同様に注文を上場日から受け付けている」としている。

 このように、対応に差が出るのはシステムの問題などいろいろ各社の事情があるものの、マザーズ銘柄を取り扱わない大きな理由のひとつに12月10日に各会員証券会社に日本証券業協会から通知された「新市場について」というものがある。マザーズや大証新2部、店頭第2基準、名証の新市場の銘柄を扱う場合には、投資家に市場の仕組みやリスクなどを十分に説明し告知しなければならないという主旨の内容。

 これを受けて、オンライントレード各社のホームページには一斉にマザーズ市場に関する説明が掲載された。ただ、「ホームページに市場の内容や特性、リスクなどを掲載しただけで、通知のように投資家に対し十分な告知と言えるだろうか」(大手証券)と、この投資家に対する「十分な告知」という部分の対処を実際にどうしたらよいか決めかねているところなのだ。よって、対面販売や電話によって相手が理解するまで説明してから売買を行なうという方法をとっているところが多い。

 実際に注文を受けている日興ビーンズでは、注文を出す際、画面を進んでいく上でマザーズに関しての内容やリスクなどを説明した文章を表示し、それをクリックして了承しないと注文を進めていけない仕組みをとっている。2000年問題の対応に加え、このために短期間にシステムを一部手直ししなければならなかったので、上場日に間に合わせるのはかなり大変だったようだ。

 このほか、ヤフーファイナンスなど株価をインターネット上で表示させているサイトでは、マザーズ銘柄の「取引所」区分が「東証2部」と表示された。これは、東証の株価を通知するシステムが「東証2部」として扱っていることで起こっている。

 人気化が伝えられる反面、まだ問題なども多いと考えるが、最低でももう少し「一般投資家」の方を向いた対応や政策を行なって欲しいと考える。

(1999/12/22)

[Reported by betsui@impress.co.jp]


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