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【INTERNET Watch ・ MUSIC Watch共同企画】

座談会:インターネット音楽配信の現状は
~各レコード会社の音楽配信担当者がホンネを語る

 2000年、メジャーのレコード会社による音楽配信サービスが本格化してきたが、実際に音楽を聴くリスナー側と配信するレコード会社の間に「ギャップ」はないだろうか。音楽情報サイト「MUSIC Watch」では、6月16日から28日にかけてWeb上で「インターネット音楽配信に関する読者アンケート」を実施した。今回、そのアンケート結果を基に、各レコード会社/配信会社の担当者に「インターネット音楽配信の現状」を座談会形式で話を聞いてみた。

[MUSIC Watch 読者アンケート集計結果]
/music/main/enquete/result.htm


座談会日時:6月30日、会場:株式会社インプレス 会議室


出席者:(敬称略)

エイベックスネットワーク株式会社
事業推進グループ音楽配信チーム
 赤坂雄治
株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント
ネットワークコンテンツ部
 今野敏博
株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント
bitmusic推進部プロデューサー
 加納糾
東芝EMI株式会社
社長室ニューメディアグループ
 山崎浩司
日本コロムビア株式会社
ソフト事業本部 技術本部 新事業推進部
 本間孝男
株式会社ノエル
代表取締役社長
 中島康滋
株式会社BMGファンハウス
ゼネラルプロデューサー
 竹中禎一
ビクターエンタテインメント株式会社
経営企画室課長 兼 ネットビジネス推進室課長
 加藤裕一
株式会社ポニーキャニオン
経営情報本部 経営企画室
 小林聡
株式会社レーベルゲート
プロデューサー
 鷲見和男
株式会社インプレス
MUSIC Watch
 操上勝司
司会:MUSIC Watch
 浜崎克司

 

 

音楽配信のリスナー層は「3~4年位前のインターネットユーザーに逆戻り」

司会:本日はお忙しいところありがとうございます。最近のインターネット音楽配信事情に関して、MUSIC Watch誌上で行なったアンケート結果を基に話を進めていきたいと思います。まずユーザー層からですが、アンケート結果によると年齢層から見てもやはりパソコンを使っている層と重なっているようです。それぞれの会社でもアンケートを取っているかと思いますが結果に違いはありますか?

MUSIC Watchアンケート結果(一部抜粋)

質問

%

性別
86.8
13.2
※年齢層は25~29歳がピーク

 

加納(ソニーミュージック:以下SME):性別はほとんど同じ。年齢的には25~45までで60%くらい。アンケート回答数もほとんど同じですね。

加藤(ビクターエンタテインメント:以下VE):正確には言えないんですが、3分の1くらいは女性です。年齢層はだいたい同じくらいですね。

山崎(東芝EMI:以下EMI):アーティストごとにしかやってないので、あまり対比して考えられないですが、だいたい男女比6:4から5:5です。ホームページ自体がちょっと女性が多いかなっていう感じなんです。

中島(ノエル:以下NOEL):ノエルはインディーズのCDとデータの配信をしているんですが、CDの販売は4:6で女性のほうが多いです。インディーズを追いかけてるのが女の子のほうが多いというのもあります。なので年齢層は本当は低いはずなんですが、(アンケートでは)MUSIC Watchのアンケート結果と層は一緒です。欲しい人に届いていないなというところです。

本間(日本コロムビア:以下DENON):アンケートは取ってないんですが、サポートかかって来る電話などから想定するに男女比は8:2。年齢層は配信している内容が内容だけに、MUSIC Watchのアンケート結果より10才から20才上です。今実証実験的にやっていて非常に特殊な音源(注:雅楽や義太夫などの純邦楽)を配信しているんですが、50過ぎの人もかなりがんばってらっしゃる。

竹中(BMGファンハウス:以下BMG):うちは、現在有料配信はやってないんですが(注:座談会を実施した当時)、「MBB(Millennium Big Bang)」というマーケティング実験をやってます。そこのアンケートで数としては21,000くらい集まりました。年齢層的には25くらいで少し若いくらい。

小林(ポニーキャニオン:以下PC):企画ごとに男女比が違っていて全体的な統計は取ってないんです。ドラマのからみとかもあって女性が割と多いと感じてますけども、リアクションからみるとだいたい半々くらいだとも思います。

赤坂(エイベックス:以下AVEX):結構近いです。私どもの場合特に男性比率が高いんです。例えば浜崎あゆみのようなアーティストだとCDの男女比はある程度拮抗しているという印象はあるんですが、PCの世界では、特に音楽配信では、かなり煩わしい作業がいっぱいありますよね。やっぱりその煩わしさを乗り越えるのはオタク系の男の気合いという気がします(笑)

鷲見(レーベルゲート:以下LG):ソネットはポストペットの関係もあって他のプロバイダーに比べて女性率は高いんですが。そのまますんなり音楽配信のほうにも推移していくといいんですが。

操上(MUSIC Watch:以下MW):MUSIC Watchは、圧倒的に男性ですね。ネット系のホームページなので女性ボーカルものが圧倒的人気です。無名のアーティストなので写真で判断しているんでしょう。

司会:では、CDの購買層と比べて音楽配信のリスナー層に違いはありますか?


SME今野氏

今野(SME):僕のほうはプロモーションサイト(Sony Music Online Japan)をやってるんですが、だいたい男女比半々なんですよ。掲示板でも今中学生がばんばん書き込んだり、インターネットでもリアルでもまったく一緒の感じなんです。でも、有料配信になると、急に敷居が高くなってしまってます。無料配信はみんな気軽にやるんですが。

 要はいつも思うんですけど、3年か4年位前のインターネットユーザーに逆戻りしてますね。男のパソコンオタクしかやらない、みたいな。そのころのWebってそうでしたよね。そこに問題点が潜んでいるんでしょうね。

本間(DENON):それはやっぱり自分で買いにいってみて大変でしたよ。決済ができるのがある程度年齢以上に決められちゃうし。

小林(PC):私見ですが、音楽配信自体が音楽リスナー全体から箸にも棒にもかかってないんじゃないかという感じがするんですよ。やっぱり『インターネットってなんだ』っていう段階にいるのではないかと。ダウンロードしたとして、さてコピーできるのかな、オーディオで聴けるのかな、というイメージがまったくないのではないかと。するとやっぱりPCに非常に近い位置にいる男性が主体になってもしょうがないと思うんですよ。

司会:ほんとの音楽好きが集まっているわけではないと。

加納(SME):コンピューター好きな人ですよね。

 

ダウンロードしない理由は「欲しい音楽がない」から?

MUSIC Watchアンケート結果(一部抜粋)

どのような条件が揃えばダ ウンロードしますか?
1曲の値段が安くなれば 17.1
欲しい曲があれば 10.6
インターネットが定額 常時接続になれば 10.1
高速接続になれば 8.1
ジャケットや歌詞カー ドが付けば 4.1

 

司会:価格の問題のほかに、「欲しい音楽がない」という声もありますが。

加納(SME):ぜんぜんないですね。コンビニで扱ってるCDの数とそんなに変わらないんですよ。


NOEL中島氏

中島(NOEL):「欲しい音楽がない」という話で一つ思うことは、例えば、CDとデータでは買う目的や環境が完全に違うであろうという考えから、ノエルではデータ配信サイトオープン時には、CD販売とデータ配信のサイトを分ました。しかし近頃は一緒にしてくれという要望が非常に多くなり、そこで、両方を買えるようにサイトを統合したんですね。しかし、一緒にするとデータの売上が落ちるんです。CD買えるものはCDで買おうとするみたいで。

 ユーザーの「欲しい音楽」とは、一般的に出回っている自分の目当てにする音楽が「欲しい音楽」というのもありますし、それともインターネットだからゲットできる音楽が「欲しい音楽」なのか、その辺りはもしかしたら違うのかなと。ノエルのサイトでもCDで買えるものはCDで買おうという人の傾向があるので、Webだけで展開していてもそういう傾向があります。

赤坂(AVEX):海外では配信をパッケージの販売促進にというように取り上げられてますが、それをわかりやすい形で見せてくれてますね。

今野(SME):今の時点で音楽好きがパッケージにいくのは当然だと思うんですが、恐いのは、一番最初に音楽を聴いたのがダウンロードという世代が出てきたときですね。しばらくは大丈夫だと思うんだけど、初めてがダウンロードだとパッケージに絶対に愛着がない訳で。ひょっとしたら10年後にはそうなってる可能性もあるかもしれない。

加藤(VE):そもそもレコードというのはコレクターズアイテムですよね。確かに今野さんのおっしゃる通り、今後恐いですよね。これから消費欲はどうなるのか。我々はパッケージが中核にあると考えているんですが、ちょっと恐いですよね。

中島(NOEL):オンラインで売ってるCDも、通常に流通しているものとはジャケット変えたりしてインセンティブを持たせられますが、現在のところデータ販売にインセンティブを付けるというのは難しい。そういう意味では、データで買うことが、どんなにいいことかわかる人と、わからない人がでてくると思います。今はデータのどこに魅力があるのかわかりづらいですね。

加納(SME):その曲だけとかすぐ聴けるというところは、いいなという部分はあると思いますけどね。

本間(DENON):ちょっと別の話題ですが、ダウンロードまではしてもらえるんですが、決済までいかない人が異常に多いんですよ。WMT(Windows Media Technologies)の場合ですが。決済の手続きに自信が持てなかったりとかで、あまり気楽に買えないという。あと、お年の人も多いのかもしれないけど、敷居が高い。決済のインフラがどうなっていくかも問題です。

司会:そのあたりのしくみがまだユーザーレベルにはないと。

今野(SME):直感的には「お金払ってからダウンロード」という形がいいですよね。今は富山の薬売り方式で、とりあえず手元においといて、必要な時に使うとかいう感じ。

司会:ほかにはジャケットや歌詞カードを付けて欲しいという声もあるんですが

鷲見(LG):一例として歌詞カードのデータを一緒に提供するしくみを準備しているところです。ジャケットに関してもパッケージの所有欲につながるもんだと思うんですが、アナログからCDになったときにこんなにちっちゃいジャケットじゃあ、といってたものがもっと小さくなるし。歌詞は今の音楽の使われ方として、曲を覚えたいという人も多いので必要なものなのかなと。そういう意味でもMP3みたいに何もないものと、どうやってつき合っていくのかという部分もあります

本間(DENON):パッケージを前提としない子達がミュージシャンになって、作り手も代替わりすると薄れてくるんでしょうね。

今野(SME):パッケージに固定するということは、もう2度と変えられないわけですよね。例えば文字校正とか間違うと一生の恥になるという感じだったんですけども。この気軽さは、もしかしたら制作サイドのほうの気持ちも変わるかもしれない。単行本とWebの関係のように。

 

曲の値段~現状では1曲350円でも安すぎ?

MUSIC Watchアンケート結果(一部抜粋)

オンラインで有料配信され る楽曲の値段(1曲)はいくらが妥当だと思いますか?
100円以下 32.3
100~200円 30.1
200~300円 10.5
300~400 2.1
400以上 0.5
その他 2.3

 

司会:「ダウンロードしない理由」の質問では「1曲の値段が高いから」という回答がトップでした。また、値段に関するアンケートによると、当然安いほうがいいなんて声もあるんですが、実際、今値段が付いている訳で、価格設定にも内訳があるわけですよね。この値段より下げるとか上げるとかいうこともあるんですか?

赤坂(AVEX):将来的にはあると思いますよ。現時点でまず立ち上げに費用が発生していますが、アーティストにもちゃんと分配するようになってます。アーティストにお金を落とせないシステムは、やっても意味がないわけですよ。あとはお客さんに対してどのくらいが安いのだろうか、ということを考えるとだいたいうちの場合350円。まあSMEさんと同じくらいに落ち着いたと(笑)。やっぱりなるべく安く提供できるなら安くしたいというところと、各権利者に対してきっちり分配できるという点は押さえたいと。

今野(SME):もちろん、安いほどいいのは当たり前の話で。値段付けに対しては喧喧諤諤相当話し合いをやりますよ。で、論議の末落ち着いた値段が350円。もちろん、赤坂さんのおっしゃる通り、将来的にどうなるかはわかりませんが。とは言え、やっぱりマーケットニーズが100円以下にあるからそこに落とすというのはないですよね。

本間(DENON):私どもは反対にもっと高くでも世の中で手に入りにくいものなら価格は非常に自由度があってもいいかと思ってます。1曲を売るためのコストはかなりかかる。1つは決済。システムを構築する初期投資は別として決済の手数料が意外とかかるんです。あと圧縮方式へのパテント料を払う。あとはキーの配信料とか。

司会:比較的自由な価格設定が可能なノエルさんはいかがですか?

中島(NOEL):うちはいくらでも好きなようにつけてくださいという方式です。だいたい、100~150円、200円~250円というような感じですが、200円がほとんどです。インディーズのCDが10曲2,000円だから1曲200円と。付けるほうもリスナー側もいくらが妥当かわからない状態ですね。ただ、200円が100円になったからといっても爆発的に売れるものではないので単に値段の問題ではないような気がします。

司会:たまたま先ほど350円という値段が出たんですが。その値段については。

小林(PC):計算すると350円に落ち着くんですよ。何度かやってみたんですが何故か(笑)。流通分を引いて、人に1回聴かれた時にいくらアーティストに分配するかということから計算すると、1曲あたり350円という形になる。今はそういう乗り換え方しか考えられないですね。

加藤(VE):うちはまったく違ってます。価格というのはどう決められるかというと、基本的にはコストがあって、それに一定のプロフィットがあって、さらに市場性を考えて決めます。今はある一定の戦略のもとに決められてますね。そもそもうちのシミュレーションから見ると350円ではやっていけないのが現状です。例えば、350円という価格は、もともとディーラーに販売していただくための販売手数料は除かれた計算になっていますよね。


ビクター加藤氏

 配信では、我々が自身で課金をしないと課金の手数料も取られます。パッケージの場合は、ディーラーにユーザーからの料金回収をお願いしていた訳ですが、この手数料というのは、パッケージにはなかったコストです。すなわち、配信によって新たにかかるコストがあるというわけです。そういう意味からしても流通コストと製造コストが配信コストと比べてどうなるか考えなければなりません。流通コストやパッケージの製造コストは実はたいした費用ではないんです。現在のシミュレーションでは、配信コストや課金手数料、さらに各種パテント費用や、オーサリング費用等を考えると従来のコストに比べて断然高くなってしまいます。積み上げていくと、ひょっとすると、500円以上になってしまうかも知れません。

 でもですよ、そういう価格設定はできないんです。やっぱり市場があるから。ただ、一方で、お客さんの中には、欲しい曲があればいくら出してもいいという人もいます。弊社のカスタマーセンターに、廃盤になった楽曲を3,000円でも5,000円でもいいから 1曲テープにダビングしてくれっていう声も実際あります。本来配信というのは、そういう市場を活性化して初めて、音楽業界の拡大に繋がると思うんですね。ですので、いろんな価格帯があってもいいのではないかと思っています。

本間(DENON):加藤さんのおっしゃることは本当に真実。売上が上がればコストが下がるのは確かなんですが、少なくとも今のインフラで今の状況ではコストはそうとう高い。特にCDになってからは、長年に渡ってレコード業界が契約店と基本的なシステムを作り上げてやってきたのでずいぶん安くなってます。それに比べて少なくとも在庫負担はなくなっても、オンラインで料金回収までやったとすると、ものすごいお金がかかります。本当に高いです。とても安い値段ではできないですね。

司会:確かに言われてみれば流通コストがかからない分安くなるんじゃないのと素人目には思ってしまいますね。

小林(PC):パッケージとオンラインを一緒に考えてリクープ(注:投資した分を回収すること)を考えなければどうしようもないかなとも思います。100万ダウンロードとかでてくると価格体系も変わるかもしれませんが、いまはどっちもやりながらという感じなんで。

本間(DENON):しかし、100万ダウンロードとかになると利益幅というものは膨大ですね(笑)。プレスのお金とかほとんどゼロですもんね。

中島(NOEL):ネットで売られてる音楽が例えばコンピューターでしか聴けない。でも、CDならどこでも聴ける、その音楽を楽しむ価値がその1円とか350円とか1,000円とかという風になってますね。逆にコンピューターもってない人にとっては1円でも高い。ただ単にそういうことにしかなってないと思います。

 

●レコード会社の将来はどうなるのか

司会:レコード会社の将来について。単純にアーティストが自分で配信できるようになってという部分で、レコード会社は、これからどういう役割を担っていくのか。赤坂さんから順番にお願いできますか?

赤坂(AVEX):人柱ですね(笑)。例えば、アーティスト自身やプロダクションが自ら(配信を)やりたいという話はあると思います。それは、エイベックスとしては進んで諸手をあげて賛成という訳にはもちろんいかないですが、とりあえずやってもらってもいいかなという気は正直してます。なぜなら、やってみると『こんなに大変なことはやりたくない』と思うのではないかと。まあ、将来的にはわかりませんけども、実は、音楽配信って現状では、非常にコストがかかる、手間がかかる、人手がかかると。レコード会社だからこそやっている事業であるという認識です。将来的にどうなるかというと、お客さんのニーズとアーティストの本来の姿をくみとりながら音楽を届けていくのはやはりレコード会社の仕事だと。

今野(SME):赤坂さんの話と、すごく似ているところがあって、常に配信やWebのメンテナンスをやってることを考えると、確かに自分で配信することはパソコンのスキル次第でできるとは思うんですが、アーティスト自身がホントにやるの、と思います。例えば自分でプログラム組んだりアイディアもたくさん持ってるアーティストでさえ、レコーディングに突入するとそのことしか考えられないわけですよ。やっぱりインターネットの社会が実社会に近くなって、組織力や、ある程度のお金が必要になるんです。いかにWebの中で楽しいことをやるか、それを含めて全体がコンテンツだと思うんです。レコード会社というよりは音楽会社なんですね。

山崎(EMI):やっぱり、我々が今やってるレコード会社の活動というのは、CDのプロモーションをしてCDを売るっていうのが大きな役割なんです。いかにいろんな人に幅広く問いかけができるのか、それにはある程度の組織やパワーをかけていかなければならない。だからアーティスト本人が配信するというのは、できるできないで言われれば『できる』と思いますが、果たしてそれでアーティストの本当に言わんとすることがみんなに伝わるのかどうか。こういったプロモーションをきっちりやっていくべき人たちというのは必要なのではないかなと思ってます。

本間(DENON):特に今みたいな始まったばかりのバラバラな状態だと、やはりレコード会社の組織力や販売も含めて、きちっと配分も含めてやれるというのがレコード会社。そのためには巨額の投資も必要になる。例えば、実は、レコード会社のサイトも一つのメディアなんです。SMEさんなどは巨大ですが、ウチでも日に6万PVくらいあるんです。これはもう媒体ですからそれを含めて全体的にコンテンツを売っていこうと。中にはストリームとか試聴とかあります。まだしばらくは私たちがいろんな部分で切り開いたり、大きな力を出せると思う。

中島(NOEL):ミュージシャンは音楽だけを作っているというのが最高の環境だと思うんですが、それをサポート、支援活動をするのがプロダクションでありレーベルでありレコード会社ですよね。では本当にアーティストにとっての支援っていうのはなにか。例えば、ノエルがサポートしている中ではマンションの一室で2、3人でやっているようなレーベルも多いんです。それでもCDの1タイトルを5万枚とか10万枚とか売ったりするほどパワフルなんですが、そんな彼らがやりたくてもやれないこと、それをできるように支援していくというのが我々のスタイルなんですね。それを考えるとレコード会社というのは、世の中的には「=CDを売る会社」という認識があると思うんですが、このまま永遠にレコードがなくなっても「レコード会社」という名前が残っていくとは思います。そして「レコード」の意味が全く変わっていくような存在になっていくのではないかと思っています。

加藤(VE):中島さんの言葉を聞いていいこと言ってるなあと思いました。アーティストが我々に求めているのは、資金であったり流通であったりしたんですが、やっぱり配信になっても変わらないのは自分の音楽をどれだけ伝えてくれるのか、どれだけ大きくしてくれるのかという部分だと思うんです。そういう意味でいうと我々のスタンスは変わらないのではないかと。あともう一つ、ウチの会社が思っているのは「品質」の部分なんです。例え圧縮した音楽であってもアーティストに対して音質は絶対保証しなくてはいけない。きちんとクオリティチェックをかけた音で配信するのがレコード会社の役割だと思います。

竹中(BMG):従来のレコードビジネスでは、今回のネットを通じて変わってくると思うんです。そういう全然違ったものがでてきた時に、やっぱりWIN-WINにならなきゃ意味がないんで。メジャーでやってることの見極めというのがここ何年かで重要になるのではないかと思います。

小林(PC):もうほとんど言い尽くされましたが(笑) 役割というのはみなさんの言われた通りなんですが、ユーザーにアーティストを知らせしめて楽曲を売るプロフェッショナルという部分につきるのかなという感じがします。

鷲見(LG):私なんかも参加したりして実感しているんですが、音楽系のサイトを一生懸命やっているところも多いんですね。でも、今のところジャケット写真すら使えないという部分がありますね。まあそれはしょうがないとは思うんですが、レコード会社が持ってるサイトだけでは行き届かない部分があると思います。そういう音楽好きが集まっているサイトをうまくもっと利用していくと、インターネットの中での音楽ファン層が増えていくだろうし、啓蒙活動なんかも自然にやりやすいのではないかと思います。

操上(MW):例えばマスメディアができないことってたくさんあると思うんですよね。たとえばビデオとチャットを組み合わせたりとかそういういろいろ可能だと思うんです。そういった部分でレコード会社が、アーティストとリスナーとの接点を作るのもよいのではないかと思います。

司会:なるほど。では、本日はお忙しいところありがとうございました。

 

参考資料:各社の配信状況


エイベックスネットワーク
http://atmusic.avexnet.or.jp/
 4月25日から有料の配信サービス「@MUSIC」を開始。新譜/旧譜合わせて91曲からスタート。音楽配信システムは「MediaDirect」と「LiquidAudio」を採用。1曲367円(税込み)。無料の配信実験も実施中。

ソニーミュージックエンタテインメント
http://bit.sonymusic.co.jp/
 1999年12月20日より有料の音楽配信サービス「bitmusic」を開始。邦楽の新譜44タイトルからスタートし、以後新譜CDシングルのリリースと同時にオンラインでも配信。2000年5月からは邦楽の旧譜タイトルを配信する「bitmusic GT」、洋楽の新譜を配信する「bitmusic international」を開始した。配信方式には「MediaDirect」と「Windows Media Technologies」を採用。価格は1曲300円(旧譜)、350円(新譜)

東芝EMI
http://www.toshiba-emi.co.jp/
 3月椎名林檎、5月ともさかりえ、6月山下久美子と無料配信サービスを実施し、高いダウンロード数を記録しているが、有料配信についての方針は明らかにしていない。

日本コロムビア
http://jtrad.denon.co.jp/
 4月から「日本の伝統音楽」として雅楽や義太夫などの純邦楽を実験的に有料で配信。「Windows Media Technologies」と「SolidAudio」を採用。1曲300円。

ノエル
http://www.indiesmusic.com/
 「indiesmusic.com」を運営。インディーズ系音楽配信サイトとしては日本最大。300レーベル、約3,000組のアーティスト11,000曲の音楽データを扱う。配信方式には「Windows Media Technologies」を採用。

ビクターエンタテインメント
http://www.jvcmusic.co.jp/
 5月からArcstarMusicにて無料の配信実験を開始。8月から会員制による音楽配信サイト「なあ!(na@h!)」で有料の配信実験を開始する。有料ダウンロード曲の価格は1曲350円。

BMGファンハウス
http://www.click2music.com
http://www.j-mom.com/ (MOM)
 7月からHMVジャパン、タワーレコードなどの「小売店サイト」を通じた音楽配信サービスを開始した。当初は実験として40曲を無償で配信し、9月からは有料の音楽配信を開始する予定。大手キャリア、ポータルサイトなどとネットワークエンタテインメントサイト「MOM(Mother of Music)」を開設している。

ポニーキャニオン
http://www.can-d.com/
 5月初旬にプロモーションビデオを再生期間限定で無料配信。その後、6月21日から映像コンテンツの有料ダウンロードを開始。映像付きコンテンツ1曲の価格は500円。配信には「Windows Media Technologies」を採用。7月には専用サイト「can-d.com」で音楽のみの配信も開始した。

レーベルゲート
http://www.labelgate.com/
 So-netが設立した音楽配信プラットフォームの提供会社。大手レコード会社11社が資本参加している(サービスへの参加会社は13者)。MediaDirectに対応した再生プレーヤー「LabelGate Player」の配布のほか、参加レコード会社の楽曲の検索機能などを提供している。

(2000/8/1)

[Reported by okiyama@impress.co.jp]


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