■URL
http://www.fujitsu.co.jp/hypertext/fri/reports/88.html (調査レポート)
http://www.bitvalley.org/ (ビットバレー・アソシエーション)
湯川抗上級研究員
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東京都心のネット産業コミュニティを支援する非営利団体(NPO)ビットバレー・アソシエーションと株式会社富士通総研(以下FRI)は、「東京におけるネット企業の集積」に関する調査結果を発表した。
この調査はFRIの湯川抗上級研究員が、1年半かけて、インターネット調査や文献調査、インタビュー調査を行い、データベースを構築した上で分析を行なったもの。5万社にもおよぶ抽出企業の中から「インターネットがもしなかったらその企業は存在しない」(湯川氏)という観点でネット企業を選別した。
東京におけるネット企業の集積状況を見ると、東京23区に現在1,279社の企業が立地。23区内でも企業数には格差があり、港(267社)・渋谷(204)・新宿(112)・千代田(125)・中央(73)の都心5区に23区全体の約6割が集積していることが分かった。またその37%が港区と渋谷区に集積、特に赤坂から青山・原宿・渋谷・恵比寿の一帯に317社が立地し、都心5区の4割以上、23区全体でも4分の1近くが集積しているという。この地域には新規企業の立地も進んでいることから「日本版シリコンアレー」と呼ぶことができるとしている。
東京の集積地(赤坂~渋谷)とアメリカの集積地(マルチメディアガルチ、シリコンアレー)を面積・企業数の点から比較すると、面積は赤坂~渋谷が14平方キロメートル、マルチメディアガルチが15平方キロメートル、シリコンアレーが26平方キロメートル。企業数は赤坂~渋谷が317社、マルチメディアガルチが420社、シリコンアレーが1,106社。赤坂~渋谷の企業数がほぼ同じ面積のマルチメディアの4分の3程度であることなどから「米国有数のネット企業の集積地と比べると東京は発展途上」としている。
ネット企業のプロフィール(創業年数・雇用規模)では、1989年以前に創業した企業が32%、1990~93年が20%、1994~96年が23%、1997年以降が25%。ネット企業という割にはインターネット元年といわれる1994年以前設立の「歴史ある」企業がネット企業の半数を占める結果となった。従業員数は30人以下が39%、31~50人が38%、51~100人が12%、101人以上が11%。
こうした企業プロフィールをサンフランシスコ(以下SF)およびニューヨーク(以下NY)と比較すると94年以降の創業企業が東京48%、SF64%、NY88%、平均従業員数は東京78人、SF26人、NY13人となっている。「ベンチャー企業中心のアメリカに比べて東京はパソコンソフトのサードパーティなど既存企業がネットビジネスに参入するケースが多い」と分析、「日本は個々の企業組織が多く、コラボレーションが起こりにくいため『集積と発展のメカニズム』が働きにくい状況」と指摘した。
今後の「日本版シリコンアレー」発展には、(1)ビットバレー・アソシエーションのような「草の根組織」活動の活性化(2)自治体の支援(例えば集積地域の環境整備、ネット企業を支援する民間企業への援助など)(3)東京のネット企業集積地のプランドイメージの構築―などが必要としている。
FRIでは今後、ネット企業に対してアンケート調査を実施してより正確に企業の実態把握を行なっていきたいとしている。
(2000/8/25)
[Reported by moriyama@impress.co.jp]