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【業界動向】

BIGLOBEの「乗換えキャンペーン」に中小プロバイダーが悲鳴

■URL
http://www.biglobe.ne.jp/campaign/norikae/

 9月1日から始まるBIGLOBEの「BIGLOBE 乗換えキャンペーン」に中小プロバイダーから「勘弁してくれ」という声が上がっている。

 BIGLOBEの「乗換えキャンペーン」は9月1日から10月31日までの間にBIGLOBE会員以外から入会すると月額固定料金制「使いほーだい」コースの基本料金が通常月額2,000円のところ6ヶ月間に限り同1,000円で提供するというもの。大手のインフラが「1,000円で使い放題」ということで他プロバイダーユーザーにとってはかなり魅力的である。

 中小プロバイダーは、BIGLOBE、@nifty、So-netの大手3社による9月1日からの月額2,000円の使い放題コース導入に対応するため、料金戦略を見直すなどの策を練っていた矢先のまさに「寝耳に水」な出来事で、困惑の色を隠せない。「紳士的な了解の中で取り下げて欲しい」―あるプロバイダー関係者がそうつぶやいた。

 同関係者は「トッププロバイダー同士の熾烈な顧客獲得争いに中小プロバイダーが巻き込まれてしまう」と危機感を募らせている。また、「中小プロバイダーは2,000円に対応するのが限界。1,000円という価格は企業努力の限界をはるかに超えている」と苦しい胸の内を明かす。例えば「1,000円で使い放題」という価格を出したプロバイダーがいたとしてもすぐ回線が切れてしまうなど接続率が悪い場合はビジネスとして問題はなく、BIGLOBEが「安い値段で接続率も良いものを出したこと」に問題があるという。「採算を度外視してまでやることは本当に公正な取引といえるのか」との疑問も呈している。

 一方BIGLOBE側は「採算が合わないのは承知でやっている」と語る。今回のキャンペーンを実施する一番の理由として「プロバイダーとしての収益体質を今年来年までには変えるため、母数を増やしていくこと」を挙げている。つまりこれまでの接続料中心の収益体質ではやっていけないということだ。今後は「ショッピング決済代行やコンテンツサービスの提供などの付加サービス収益を挙げていきたい」との姿勢を示している。また採算面ついて「いくらプロバイダー料金が安くても、会員がショッピングなどを利用すれば採算が取れる」とした。これまでBIGLOBE会員のほとんどが初心者だったことから、「乗換えキャンペーン」を契機に顧客の間口を広げていきたいとの考えも示している。

 「プロバイダー料金を重視している」中小プロバイダーと「収益構造を接続料金重視からコンテンツやショッピング代行決済などへとシフトさせようとしている」BIGLOBE。現在、プロバイダーを取り巻く世界はかなり厳しい。広告収入というビジネスモデルに基づき勢力を拡大しつつある無料プロバイダー、NTTのISDN定額IP接続「フレッツ・ISDN」などの定額化の波、商用化に向けモニター募集中の光ファイバーと無線LAN技術を組み合わせた「スピードネット」など次々と新しいライバルが登場している。これに伴い価格競争が激化、プロバイダー料金は下落の一途をたどり、限界点まで達しようとしている。BIGLOBEの「乗換キャンペーン」をめぐるプロバイダー同士の軋轢は「プロバイダーの大小の問題」というよりも「プロバイダー会社における収益構造の模索」から生まれたものといえそうだ。

(2000/9/4)

[Reported by moriyama@impress.co.jp]


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