これまでは専ら女性のものとして位置づけられてきた、手芸などに代表される“女のホビー”。ところが、男性でもやってみると意外に面白く、女性だけに独占させておくのはもったいないものもある。今回は、果敢にもそんなホビーに取り組んでいる男たちのサイトを紹介したい。
もしかしたら、「男がやるのは恥ずかしい」と思われるかもしれない。しかし、これらを女性専用と考えるのはもはや時代遅れである。その昔は女性の領分とされていた料理やその他の家事、育児なども、今は男がやってもなんらおかしくない時代だ。ならばいっそのこと、ここで紹介する先達の例を参考に、未知なる“女のホビー”に挑戦してみるのも悪くはないだろう。
なお、ここで紹介するのは、あくまでも男性が運営しているサイトがほとんどだ。もちろん、“女のホビー”なのだから、女性によってこれ以外に多くの充実したサイトが開設されている。興味を持ったら、各サイトのリンク集などを頼りに他のサイトものぞいてみて欲しい。
●あみぐるみ“あみぐるみ”というのは、毛糸で編んで作ったぬいぐるみのこと。編み物+ぬいぐるみという組み合わせからも明白なように、女性のファンが多いのは言うまでもない。ところが、ここで紹介する「KNITWORK ORANGE・男の手芸道」の作者は、タイトルにはっきりと示されているように、男性。かつてラスタ帽を自分で編んだ経験を生かし、あみぐるみの制作に励んでいる。
制作しているのは、よくあるクマなどではなく、オタマジャクシの形をした正体不明の「おたま」なるキャラクター。実はクマを作ろうとして失敗した結果に生まれたものだという。クマの顔を作るつもりがうまく球状にならず、「形状的には便秘に効能がありそう」な形になってしまったのだ。普通ならここで、失敗作ということでほどいてしまうところを、「でもこれはこれで面白い形である」と目鼻を作成。それ以来、オリジナルキャラクターとして作り続けているのだから、なんとも男らしいエピソードである。その後、おたまは、デザイン関連のイベントで1日で数十個を販売するほどの人気を得ているそうである。
サイトでは、これまでの作品が見られるほか、「レッツかぎ針」というエッセイコーナーがあり、必読である。かつて手芸品店で「まるで中学生がエロ本を買うときのように不自然な動き」で物色した思い出から、現在のおたまにたどり着くまでの経緯が記されている。「世間の偏見を打ち破り21世紀に向けての“男の手芸道”を確立したい」としている。
■KNITWORK ORANGE・男の手芸道“ドールハウス”というと、どこかメルヘンチックな響きがあり、女性のホビーと決めつけてしまう向きも多いかもしれないが、模型の一種に違いはない。男性がハマってしまう要素は十分に兼ね備えている。
ここで紹介する「Doll House Miniature」を運営しているのは、44歳になるという男性の歯医者さんである。最初は奥さんに引き込まれて始めたというが、ご自身が昔から模型飛行機やプラモデルが趣味だったということで、今ではすっかり夢中。ドールハウス教室を開いたり、作品展まで開くまでに至っているという。
サイトに掲載されている作品を見ると、建物はもちろん、家具や食器、食べ物まで細かく作り込まれている。本業の関係上、型どり用の材料や石膏の加工方法についても知識をお持ちで、そういったこともドールハウスの制作に役に立っているというからうらやましい限りだ。
■Doll House Miniature「インターネットでも非常にまれな、男性宝塚ファンのページ」を自認しながら、「隠れ宝塚のひとりごと」というサイトを運営しているのが国やんさんだ。もちろん、隠れる理由は「男である」から。エッセイのコーナーで、「僕自身、いくつもの宝塚関係のホームページを見ているが、全て女性が作ったもので、男性が作ったものはお目にかかったことがない」というから、貴重なサイトである。
そのエッセイコーナーには、「大雨の日、劇場で女性用の傘しか売っておらず困った」というような、男性ゆえの苦労話なども紹介されている。やはり男性ファンは肩身が狭いようだが、それにも負けず、足繁く劇場に足を運んで公演の感想をウェブサイトに綴っている国やんさん。これを読めば、他の男性ファンも勇気づけられるのはもちろん、まだ宝塚の公演を見たことのない男性にとっても興味を抱くきっかけになるだろう。
■隠れ宝塚のひとりごと女性向けだからといって「このまま知らずに過ごすのは、あまりにも惜しい」「少年系や青年系のマンガでは見られないような感動を実感して欲しい」ということで、開設されたのが「直chan WORLD コミック☆ルーム」だ。現在31歳になる男性が、10年になる少女マンガ歴を生かし、男性向けにおすすめの少女マンガを紹介している。
運営者の斉藤さんによると、少女マンガは「キャラクターの心情が繊細に描かれているのが特徴」。その結果、「共感が持てるようなリアルな心理描写により、感動要素の強いエピソードが得られる」としており、その魅力を伝えるため、少女マンガのベスト100や新刊のレビューはもちろんのこと、セリフやヒロインのベスト100までまとめている。男性向けということを抜きにしても、少女マンガに関する情報が充実している。
また、質問にYESかNOで答えていくことで、少女マンガ適応度やジャンル別に作家や作品を教えてくれるコーナーもある。まったくの初心者は、ここで推薦された作品をとっかかりに少女マンガの世界に足を踏み入れるのがいいだろう。
参考までに、運営者は女性なのだが、少女マンガが好きな男性を応援しようというありがたいサイトも紹介しよう。「まんがバカ一代」では、「男の子のための少女まんが」というコーナーを用意。アンケートをもとに少女マンガが好きな男性の本音などを紹介している。当然のように、「本屋で買うのが恥ずかしい」といった声も多く寄せられているが、かえって同志がいるということで勇気づけられるのではないだろうか。
■直chan WORLD コミック☆ルームストレスをやわらげ、美容や健康にも効果があるということで女性に大人気のハーブ。しかし、ストレスがたまるのは男性も同じ。特に独身男性は食事も不規則だし、歳をとったらとったであちこち疲れがたまっていることだろう。
そこで、女性だけにこれを独占させておくのは惜しいということで、ハーブに関する情報を提供しているのが「男のスパイス料理とハーブティー健康雑学」だ。ハーブの効果の説明にはじまり、ハーブティーの基礎知識やいれ方、ハーブ/スパイスを使った料理のコツ、男性向けの簡単料理などを紹介している。
特にストレスのたまっているサラリーマンにとっては、ホビー以上に実用性も兼ね備えているという点でおすすめだ。
■男のスパイス料理とハーブティー健康雑学最近では、男性用の下着もいろいろなものが販売されるようになり、それなりに下着のおしゃれも楽しめるようになった。とはいえ、女性用と比べたらまだまだ種類は少ないし、なんと言っても、回りの理解が得られる時代にはなっていない。
こういった状況に対し、「これからは男性もセックスアピールが必要」だとして、「他人の目を気にせず、セックスアピールができる社会」を作り上げようとウェブサイトを立ち上げたのがbasemanさんである。「男のランジェリー」というウェブサイトで、男性用ランジェリーに関する情報を提供している。
具体的には、読者からの投稿や掲示板、ウェブチャットでの情報交換がメインとなっている。男性だからといって、男性専用のランジェリーを着用しなければならないわけではなく、女性用の中には男性でも問題なく着用できるものがあるという。ただし、やはり女性用を買うには白い目で見られることもあり、苦労は耐えない。そんな人のために、男性が安心してランジェリーを買えるショップの情報も掲載している。
また、読者投稿のギャラリーも用意されており、お気に入りのランジェリーを身に付けた写真が掲載されている。男性用だけでなく、女性用を着用したコーナーもあるのだが、拝見すると、思ったより違和感がないのに驚く。むしろ、普段履いているゴワゴワしたトランクスなんかよりもはき心地がよさそうだと感じるかもしれない。
■男のランジェリー“きもの”はもちろん、女性だけのものではない。しかし、ここ数年、若い女性の間では浴衣が流行している一方で、男性はおいてけぼりをくっている状況だ。そこで最後は、女性にも負けないような浴衣のおしゃれが楽しめるよう、ホビーとはちょっとずれるかもしれないが、きものをとり上げてみたいと思う。
「男のきもの指南」では、「きものを着てみたいが、具体的にどうすればいいのかわからない」という人のために情報を提供している。「きもの=お金がかかる、しきたりがうるさそうというイメージがありますが、決してそんな事はありません」「手軽に、気軽に、そして楽しくきものを楽しんでもらいたい」ということで、初心者にもとくにおすすめのサイトだ。「着物の下にはなにを着るの?」「男性物と女性物の見分け方」といった基礎知識の説明にはじまり、きものを購入する際に注意することや着付け方法などを、イラストや写真を使ってわかりやすく解説している。
「男のきもの大全」も同じく、日常着としてのきものを中心に、和服の種類や手入れ方法、着付け方法などを解説している。
自己紹介ページによると、サイト運営者の早坂伊織さんが、きものに目覚めたのは中学1年のとき。それ以来、家人に隠れてこっそり着付けを研究するようになり、高校に入ってからは、家にいるときは暇さえあればきものを着用するようになった。それから20年以上、「私自身が長年、普段着として和服を愛用しての実感ですが、こんなに気持ちのいい衣服は他にない」と言い切っており、きものへの興味をそそってくれる。
■男のきもの指南(2000/10/2)
[Reported by nagasawa@impress.co.jp]