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【特集】

マーケットを開拓せよ!スポーツサイト秋の陣

 10月も半ばを過ぎ、そろそろ秋本番といったところだろうか。秋といえば「スポーツの秋」。スポーツサイトと聞くとスポーツ新聞社系など、競技結果を速報するサイトを思い浮かべる人が多いだろう。果たして競技結果速報をするだけがスポーツサイトなのだろうか。また、各競技に特化したファン向けサイトも目立つ。しかしこれらはいずれも「ビジネス」という観点からみるとやや力不足といった感が否めない。

 今年に入りスポーツをビジネスにしようと、続々と“スポーツポータルサイト”が誕生している。しかし、まだまだ発展途上というのが現状だ。今回はコンセプトは違いながらも「スポーツ」というジャンルでビジネスチャンスを模索する2社にお話をうかがいながら、スポーツポータルサイトの現状と課題について考えてみたい。

●スポーツコミュニティポータルを目指す~ライバルズの挑戦

■rivals japan
http://www.rivals.co.jp/

 「見るスポーツ」から「やるスポーツ」まで幅広いスポーツ種目について、より“深さ”を追求したオリジナル情報を提供する「rivals japan」が9月にオープンした。一般的スポーツファンから熱狂的スポーツファン、スポーツ関係者をも満足させる多面的でディープな情報を提供する「Information」、スポーツファンだけでなく記者から選手まで幅広い参加者が熱い議論を行なう場を提供しスポーツ界の健全な発展に寄与する「Communication」、“やるスポーツのファン”をターゲットにした情報を豊富に提供し、スポーツ人口の底辺の育成と拡大に貢献する「Education」の3つの理念を柱に据えているスポーツポータルサイトだ。

 スポーツコミュニティポータルを目指すという「rivals japan」。運営元のライバルズ株式会社代表取締役社長・天野勝氏にスポーツサイトの現状と課題について話をうかがった。

IW編:スポーツに関わるネットメディアはどのようなものがあるか?

天野:大きく3つに分けられる。1つめは雑誌系やスポーツ紙といった紙メディアだ。これは競技結果速報と芸能ネタなどのバラエティがミックスしたものでインターネット上のコンテンツのほとんどが実際の本誌の二次利用といってもいいだろう。2つめは、Yahoo!スポーツなどの検索系だ。そして3つめが、スポーツコミュニティポータルだ。ただ、スポーツコミュニティポータルは各々独特のジャンルを持ち、コンセプトが少しずつ違う。

IW編:rivals japan」のコンセプトは?

天野:コンテンツの柱は4つだ。第1は「速報ニュース系」。速報はどうしてもユーザーが求める。第2は「ジャーナル系」、言い換えればマガジンスタイル。これはスポーツ界で起きている事象・解説とか蘊蓄などを掲載するものだ。第3は「教育」。スポーツは正しく教えてもらって正しく習うと非常に上達も早いし、怪我などしないですむ。スポーツをやる人たちの底辺拡大と啓蒙を行なうコンテンツ「スポーツビレッジ」がこのカテゴリーに入る。第4はスポーツをする、つまり「do sports」という視点で捉えたコミュニティページだ。

IW編:インターネット媒体だからこそやるものは?

天野:「速報ニュース系」「ジャーナル系」の2つはスポーツ新聞などの既存メディアが少し努力すれば、すぐ作れてしまうし、どうやっても勝てない。既存メディア以上のものをインターネット媒体としてやるためには、「教育」や「コミュニティ」が重要となる。だからこの2つは今後特に力を入れて展開させていきたいし、この部分でビジネスが成立しなければたぶんサイトの成功は難しいだろうな。

IW編:「スポーツ」を1つのジャンルと見た場合ビジネスチャンスはあるか?

天野:スポーツに限らずだが、ネットメディアで成功するかしないかはどういうところ に着眼するかということだ。これは「中毒性」の問題だと思う。
 「中毒性」のあるようなジャンルはネットメディアの中で成立する可能性が高い。中毒症状が起きるものっていったい何なの?と考えたときに、スポーツも重症ではないにしろ軽い中毒を起こすものだろう。その点で考えると「スポーツ」はビジネスとして成立するのではないか。ただし事業が成立し採算が取れ継続性があるという形になるには様々な工夫をしなくてはいけないと思うが・・・。

IW編:ライバルズはどのような方向性でビジネスとして成立させていくのか?

天野:我々のサイトの1番の根幹は「do sports」だ。この点でネットもしくはサイト が何できるかというと、実際にやる人たちや楽しんでいる人たちをサポートするシステムしかない。それ以上のものには絶対になれない。というのもネットの中で体動かして汗かくわけじゃないから。ライバルズはスポーツをやっている人たちに対して、たくさん話題提供したり、コミュニケーションを図れるサイトでありたい。

IW編:収益モデルは?

天野:広告収入が基盤とは考えていない。すごく大きなウエイトを占めるが、それだけで収益が成り立つとは思っていない。もし、単純な広告モデルでやるとそこにどんなスポンサーが入ってくるか分からないという欠点がある。だからこそスポンサーシップを大切にしたい。きちんとした理念を持っているスポーツ用品メーカーなどが「このカテゴリーのこのサイトに関して『パトロン』のような意味合いでスポンサーシップをする」というのが1番きれいな形だと思っている。
 もう1つスポンサーシップの形態として考えているものが、スポンサーサイトだ。これはスポンサーが自分の好みでメッセージとして出したいものを全部ライバルズの中で立ち上げるという形式だ。

IW編:現時点での1日のPVはどれくらいか?

天野:先週で1日約8,000PV。12月には1日3万PVぐらいにもっていきたい。

IW編:インターネットの普及はスポーツにどのような影響を与えるのか?

天野:インターネットの普及に伴い、情報そのものがどうやって捨てようかというくらいものすごいスピードで入って来ている。ネット社会はスポーツをやる人たちの行動範囲をものすごく広げると思う。つまりインターネットはスポーツで楽しむ人に豊富な情報を与えると同時に行動そのものに変化を起こさせる可能性が十分ある。そのうえ、良質な情報がたくさんあるから、自分の楽しみ方を一番自分が満足行くようにやれるチャンスを提供してくれる。
 スポーツとはいくつかの視点から見ることができる。1つめは観戦する、2つめは視る(画面)、3つめは読む、4つめは「do sports」。その中でも原点はやはり「do sprots」だと考えている。ただし「do sprots」で忘れてはいけないことが1つある。それは支える人がいるということだ。楽しむためには支える人の力がしっかりしていないといけない。実態のあるオフラインをネットがサポートするという点で、ライバルズも支えるツールの「1つ」になれるのではないかと思っているし、必ずなりたいと思う。

IW編:ありがとうございました

●キーワードは「マッチング」~スポーツ・ナビゲーションの挑戦


■sportsnavi.com
http://www.sportsnavi.com/

 もう1つ9月にオープンしたサイトがある。それが、スポーツファン・スポーツジャーナリスト・選手・メーカーなどを有機的につないで、「見るスポーツ」「するスポーツ」「買うスポーツ」などスポーツの楽しみ方をクロスメディアで提供するスポーツポータルサイト「sportsnavi.com」だ。24時間対応したスポーツ情報速報や日本代表情報などの「ニュース」系にとどまらず、「マッチング」というキーワードのもと、さまざまなコンテンツを提供している。運営元の株式会社スポーツ・ナビゲーションCOO・広瀬一郎氏にスポーツビジネスという視点で話をうかがった。

 広瀬氏によると、ページビューを稼いでいるサイトを分析してみると1つの傾向があるという。種目別に見ると圧倒的に野球が強く、また、ある一定の法則・傾向が見えるという。それは巨人戦をやっている日の午後7時半から9時半に集中しているという点だ。どういうことかというと、「巨人が勝っているか」「松井が打ったのか」「桑田で勝っているのか」ということを知りたいだけで、知りたい情報を得たユーザーはすぐにサイトから去ってしまう。確かに、情報の速報性はインターネットは強いが、それは「ただ便利にすぎないだけの話でビジネスはまったく見えない」と広瀬氏は指摘する。つまり前出の天野氏の指摘していたようにこれは既存のメディアでできることなのだ。

 では既存のメディアでなくインターネットだからこそできることは何か。広瀬氏は「情報のマッチング機能」を挙げた。広瀬氏の言う情報のマッチングとは、例えば自分が「何かをしたい」という欲求を持ったとき、それを「こんな情報が欲しい」という情報のデマンドサイド(需要)と情報をもっているサプライサイド(供給)が「出会う」ことだ。この点はいわゆるファンサイトと大きく違うところだ。

 この「マッチング」機能を最大限に生かしているコンテンツが「フットサルワン」だ。これは「場所」「時間」「金」「仲間」の4要素をマッチングするもの。例えば「仲間」という点に注目してみよう。「フットサルワン」では、チームに参加したい人の年代・地域・レベルに合わせたチーム探しのほかチームの強さにあわせた対戦相手探しができる。また、今後、料金や空き状況がリアルタイムで分かる施設のデータベースも作っていくという。

 「sportsnavi.com」のPVは、オリンピック開催時には2、3回30万PVを記録したが、オリンピックが終わってからは1日平均10万PVだという。現時点でのPVは「予想以下」というのが広瀬氏の正直な気持ちだ。PVが伸びなかった最大の理由は、スポーツ新聞サイトのブランドスイッチがどれくらい進むかという思惑が外れたためだという。つまり現時点では、インターネットの「スポーツポータルサイト」としての比較段階まで行っていないことになる。結局、「雑誌や新聞に対する信頼感をインターネットに求めることがまだ早い」と広瀬氏は指摘する。

 しかし、インターネットだからこその強みもある。「sportsnavi.com」では9月2日と5日に行なわれたサッカーの五輪壮行試合においてトルシエ監督の試合後のインタビューをノーカットで掲載した。スピードだけでなくスペースというインターネットの利点をうまく使った形だ。インターネットにおいてスペースは「他メディアに対して絶対的な優位性を持っている」と広瀬氏は語る。つまりインターネットは既存メディアにはない新たなオプションを提示できるということだ。

●スポーツサイトの未来の鍵は“マーケットの創出”

 ある調査によるとインターネット人口の中でスポーツに関心がある、もしくはスポーツをやっているという人が少なくとも30%は存在するという。単純に数値だけみてもかなりの数だ。故にスポーツサイトは次々と登場してくる。スポーツサイト戦国時代を生き抜くためには、ユーザーが必ず欲する速報系コンテンツ以外の部分でどれだけ差別化を図り、独自ブランドを確立していくかが鍵となるに違いない。
 しかし、「スポーツ」というジャンルにおいてインターネットの可能性はまだ未知数な部分も多い。というのもまだ日本において「マーケット」が確立されていないからだ。広瀬氏は「マーケットができあがるとインターネットは威力を発揮する」とし、スポーツ・ビジネスという点で考えた場合、「マーケットを作りながらマーケットのシェアをどうやって作るかという2つのベクトルを考える必要がある」としている。また、天野氏も同様に「マーケットの動向」を今後のスポーツ・ビジネスにおける1つの鍵と位置付けている。マーケットを創出しようとしているスポーツ産業。スポーツサイトはある意味創生期に入ったばかりなのかもしれない。

●その他スポーツポータルサイト

 最近ではこのほか続々と個性的なスポーツポータルサイトが登場している。それぞれが各々違うコンセプトを掲げ挑戦し続けている。まだ、スポーツサイトの戦いは始まったばかりだ。

■e-players
http://www.e-players.co.jp/
 スポーツ界のさまざまなスタープレイヤーのサイトを中心として、選手とファンやファン同士の交流を実現する“スポーツ・コミュニティ・テーマパーク”を目指している。

■sportspace
http://www.sportspace.co.jp/
 スポーツファン向けのファンサイトのみにとどまらず、スポーツビジネス業界やスポンサー企業にスポーツビジネス情報を提供するなど、BtoB的側面も併せ持つサイト。本格稼動は来春。

■SPORTS-J
http://www.sports-j.net/
 プロ野球やサッカーなどメジャースポーツのニュースが満載。プロ野球、Jリーグの各チームやセリエAなどについて、ファンのが発言できるフォーラムなどコミュニティ系も充実。

■S-area
http://s-area.net/
 「スポーツ好きなの為のサイト」と名づけられたコミュニティサイト。メールアドレスだけで自分のチームのページが作れる「eSchedule」機能が注目コンテンツ。

(2000/10/23)

[Reported by moriyama@impress.co.jp]


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