INTERNET Watch Title
Click

【特集】

ネット視聴率調査
国内主要5社におけるサービスの違い


 2000年は、国内の主要ネット視聴率調査サービスが出そろった年と言える。昨年、国内でいち早く独自の調査を開始した日本リサーチセンターや日経BP社に加え、今年に入って、テレビ視聴率調査でスタンダードとなっているビデオリサーチも参入。また、世界で調査を展開している米ネット視聴率大手のNielsen//NetRatingsとMediaMetrixもそろって日本でのサービスを開始した。

 今回の特集では、今後、より利用が増えると思われるネット視聴率調査サービスについて、国内主要5社のサービスについて概要を整理してみた。一口にネット視聴率といっても調査会社によって調査の方法や指標が異なっていることがわかるはずだ。どれが正しいかというのではなく、それぞれの特徴を踏まえたうえで、利用するサービスを選ぶようにしたい。

●Japan Access Rating(JAR)
■日本リサーチセンター(開発元)
http://www.nrc.co.jp/
■アイ・エス・ティ(発売元)
http://www.istinc.co.jp/

 1999年2月、オーディエンス測定型のネット視聴率調査サービスとして国内で初めて提供を開始。開発元は日本リサーチセンター、販売元がアイ・エス・ティとなって提供している。
 アクセス回数だけでなく、滞在時間の要素も含めウェブサイトの集客力を表わす独自の指標「Japan Access Rating(JAR)」を設定しているほか、職場からの利用者パネルを保有していること、スタートアップ企業でも利用できる低価格な料金体系などが特徴だという。

■調査パネル
パネル数2,000人(2000年10月現在)
近日中に3,000人に拡大予定(調査結果は12月初旬から提供)
抽出方法日本リサーチセンターのインターネット調査パネル(約5万名)の中から、日本のネット利用者分布をもとに性別/年齢別/接続場所別にクオータサンプリング(割り当て)法により募集。4週間に4度以上インターネットに接続することが条件。半年に1度、半分のパネルを入れ替える
接続場所家庭
職場
対応端末現在はWindowsのみ
ただしMacintoshについてもトラッキングソフトを開発済みで、次回のパネル拡大時にはMacintosh利用者も追加される

■提供データ
指標JAR(Japan Access Rating、サイトパワーを示す独自の総合指標、GARに時間の要素を加えて算出)
NAR(Net Access Rating、リーチ)
GAR(Gross Access Rating、延べアクセス率)
FOA(Frequency of Access、リピート率)
TSS(Time Staying in Site、滞在時間)
PPA(Pages per Access、1回のアクセスにおける平均ページ数)
FPS(Frequency per Session、1回のセッションにおける同一サイトにへのアクセス回数、リターン率)
集計頻度4週間単位(年間13回)
配布方法Excel形式データをCD-ROMで配布
分析ツール/メニュー属性(性別、年齢、職業、アクセス場所、時間帯、平日か週末か等)による構成比の比較およびグラフ化が可能

■料金体系
「スタンダード」版がスポット購入5万円、年間購入42万円。「プロフェッショナル」版がスポット購入15万円/年間購入120万円。スタンダードとプロフェッショナルの違いは、提供されるデータの指標や分析ツールの種類による。

■備考
 パネル数については、特に外資系2社と比較すると小規模だが、対象となるトップ1,000サイトのデータを収集するには、この規模でも十分だとしている。
 CD-ROMによるパッケージ形態での提供は、サービス開始時点でのセキュリティ面を考慮した結果。今後、1週間単位での集計・データ提供が行なわれるようになれば、ウェブ上での提供もあり得るという。
 携帯電話をはじめとしたPC以外のネット端末への対応についても技術的にはできており、来年以降サービスを検討する。また、ストリーミングメディアについても開発中で、こちらも来年度中にも対応する見込みだ。

●日経BP社インターネット視聴率調査
■日経BP社インターネット視聴率センター
http://audit2.nikkeibp.co.jp/

 1999年6月にサービスを開始。全国からRDD(ランダム・ディジット・ダイアリング、電話による無作為抽出)方式により集めた「一般」パネルのほか、同社発行の雑誌「日経ビジネス」「日経ベンチャー」などの読者からRDD方式で募集した「先端ビジネスマン」パネルという2種類のパネルを構成。それぞれ、家庭と職場という接続場所からのデータ(計4種類)を提供しているのが特徴だ。
 さらに、近日中に「電気・電子系の技術者パネル」を、年内に「通信系技術者パネル」を新たに設ける予定だとしており、「ネット利用者全体の傾向というより、特定カテゴリーの利用者についてのデータを提供できるのが強み」だ。

■調査パネル
パネル数1,750人(2000年10月現在)
年内に3,250人に拡大予定
抽出方法RDD方式。15歳以上で1カ月以内にインターネットを利用したこと、週1回程度以上インターネットを利用することが条件。パネルは1年で契約更新し、期間は最長2年間
接続場所家庭
職場
対応端末Windows
Macintosh

■提供データ
指標リーチ
実視聴者1人あたりセッション回数
実視聴者1人あたり視聴ページ数
1セッションあたり視聴ページ
実視聴者1人あたり視聴時間
1セッションあたり視聴時間
1ページあたり視聴時間
集計頻度リーチランキング上位200位まで週単位
リーチランキング上位500位まで月単位
配布方法Excel形式のデータをウェブ上でダウンロード配布
その他のデータ形式は個別対応
分析ツール/メニュー第3レベルドメイン、第4レベルドメイン、ページごとに期間別(週次、月次)、属性別(性別、年齢、職業、居住地、ネット利用歴)にデータ集計可能。時間帯別のデータは個別対応により提供可能

■料金体系
利用するにはID登録が必要(登録自体は無料)。データをダウンロードすると同時に課金され、最新データは1ファイル4,000円、前週または前月以前のデータは2,000円。利用が多い顧客については個別の月間契約により対応。

■備考
 iモードの非公式サイトについての調査も現在200人規模で実験中で、12月にも調査報告をまとめる予定。
 日経BP社インターネット視聴率センターのウェブサイトでは現在、10月中旬に視聴率が急増したユニクロのECサイトに関するインタビュー記事が掲載中。こういった記事についても、「出版社として特徴を出したい点」だとしており、「話題があれば随時掲載していきたい」としている。

●Nielsen//NetRatings「オーディエンス・メジャーメント・サービス(AMS)」
■ネットレイティングス株式会社
http://www.netratings.co.jp/

 世界17カ国で提供しているネット視聴率調査サービスで、国内では2000年3月よりサービスを開始している。今回紹介する5社の中では、飛び抜けて大きい3万人規模の調査パネルを抱えているのが特徴。ページ単位のデータや、あまりメジャーでないサイトまで含めたデータまで集計するためには、この程度の規模のパネルが必要になるという。また、現時点でバナー広告のトラッキングサービスも唯一提供していることも強みだとしている。

■調査パネル
パネル数3万人(2000年10月現在)
抽出方法RDD方式により、インターネットに接続できるPCの所有世帯をリクルート。6カ月後に非利用者と退会希望者を選別するとともに、毎月パネルをリクルートし補充。期間は最長3年
接続場所家庭
対応端末Windows
Macintosh

■提供データ
指標ユニークオーディエンス
リーチ
ページビュー
1人あたりの閲覧ページ数
1人あたりの滞在時間
集計頻度月単位
週単位
配布方法ウェブ
分析ツール/メニュー属性(性別、年齢、世帯、年収、最終学歴、職業、未既婚、住居形態)、時間帯、曜日による集計が可能

■料金体系
年間契約。業種や契約形態により個別で見積もり

■備考
 春ごろをめどに、2001年には職場からの利用についても調査を開始したいとしている。ただし、職場におけるネット利用については制限している企業が多いため、家庭ユーザーと同様の万単位のパネル確保は難しく、5,000人程度の規模になる見込み。
 PC以外のプラットフォームについては、携帯電話を検討中だが、時期等の詳細は未定。また、ストリーミングについても、予定はしているが時期は未定だという。

●ビデオリサーチネットコム「Internet Audience Measurement」
■ビデオリサーチネットコム
http://www.vrnetcom.co.jp/

 ビデオリサーチネットコムは、テレビ視聴率調査のビデオリサーチ、電通、博報堂などが出資するネット視聴率調査を手がける会社で、1999年12月に設立された。テレビ視聴率調査のノウハウを活用しながら、2000年4月よりネット視聴率調査サービスを提供している。

■調査パネル
パネル数3,000世帯/約4,000名(2000年10月現在)
11月末に4,800世帯/約7,000人に拡大予定
抽出方法エリア別のインターネット利用率を基にRDD方式により無作為抽出。「インターネットを利用している」と答えた世帯について、インターネット利用者全員を登録。パネル登録期間は2年間で、ネット利用率および利用者の構成比の変化を踏まえながら、最長でも1年、可能であれば半年ごとにパネルを更新する
接続場所家庭
対応端末Windows
Macintosh

■提供データ
指標接触者率(リーチ)
推定接触者数(推計人口を元に算出)
1人あたりの平均接触回数
延べ視聴ページ数
1人あたりの平均視聴ページ数
接触者1人あたりの平均滞在時間
接触者構成割合(性年代別、職業別、居住地別)
集計頻度週単位(翌々週の月曜日に更新)
配布方法ウェブ
分析ツール/メニュー性/年代別区分、職業、居住地、曜日/時間帯別によるデータ集計、流入/流出経路分析、重複分析、指定した複数のドメインの中でリーチやフリークエンシーを最大化する組み合わせを集計する「MAX分析」などが可能

■料金体系
個別見積もり。標準的な使用で月額30~40万円程度。

■備考
 10月に日経BP社とネット視聴率調査事業で提携することを発表。今後、ビデオリサーチネットコムが家庭ユーザーのパネルを、日経BP社がビジネスマンおよび専門家のパネルを充実。これらのパネルをもとに、両社が協力して「ワークパネル」による調査を2001年春にも開始する予定。
 携帯電話への対応は、12月登場のJava対応端末の動向を踏まえながら、開始時期や対応機種を検討していくとしている。

●MediaMetrix「ドメイン&デジタルメディアアプリケーション・レポート」
■メディアメトリックスジャパン
http://www.mediametrix.com/

 現在世界13カ国で展開、ネット人口の90%をカバーするという視聴率調査サービスを提供している。国内でのサービス開始は2000年6月と、5社の中では最後発となるが、比較的規模の大きい調査パネルを保有している。
 また、インターネットに限定しない「人の動きを追っている」調査が特徴で、ウェブブラウザーだけでなく、その他のアプリケーションの利用についてもトラッキングできる。これにより、例えば「ビジネス用ソフトと同時に閲覧されるサイト」といった傾向も把握できるようになる。

■調査パネル
パネル数9,000人(2000年10月現在)
抽出方法RDD方式により抽出し、随時パネルの拡大/更新を行なう
接続場所家庭
来年はじめにも職場からの利用についても調査に追加する予定
対応端末Windows
ただしMacintoshも開発済みで、来年にも対応を検討

■提供データ
指標ユニークビジター数
リーチ
1日あたりの平均ユニークビジター数
ビジター1人あたりの月間平均利用日数
ビジター1人1日あたりの平均ユニークページ数
ビジター1人あたりの月間平均ユニークページ数
総利用時間
利用日あたりの平均時間
利用月あたりの平均時間
ユニークページあたりの平均時間
集計頻度月単位(第3週に提供)
配布方法ウェブ
分析ツール/メニュー属性(年齢、性別、世帯年収、エリア、子供有無、世帯サイズ)によるデータ抽出が可能。また、クロスビジテーション(相互利用)、ページ単位の利用分析、フリークエンシー分析、時間帯/曜日別分析なども顧客のニーズにあわせてカスタムレポートとして提供可能

■料金体系
個別見積もり。

■備考
 PC以外のプラットフォームとして、2001年第1四半期には携帯電話への対応を予定。ストリーミングについては、米国ではすでに提供しており、日本でも来年には提供する予定。
 MediaMetrix社では1999年10月、バナー広告トラッキングのAdRelevance社を買収しているが、国内でのバナー広告視聴率調査サービスは2001年以降開始の見込み。

(2000/11/6)

[Reported by nagasawa@impress.co.jp]


INTERNET Watchホームページ

ウォッチ編集部INTERNET Watch担当internet-watch-info@impress.co.jp