【特集】

進化するプロバイダー ――コンテンツサービスを探る

 かつて、インターネットサービスプロバイダー(ISP)といえば、読んで字の如く単にユーザーに対してインターネットへの接続手段を提供する事業者だった。その後、獲得した会員の囲い込みなどを目的に、自社ユーザーに対してさまざまなオプションサービスやコンテンツを提供し始めた。その結果、大手と呼ばれるISPのサイトは、ポータルサイトにも引けをとらないコンテンツを揃え、地域ISPもニッチな地域情報を提供しているところが増えてきている。

 しかしながら、最近では、次のステップとして自社の会員だけでなく、他社のユーザーに対しても有料でコンテンツを提供するISPが目立ちはじめた。この事業形態を仮に「コンテンツコース」と名付けるならば、これらサービスの提供はISPにどのような未来をもたらすのだろうか?

 今回の特集では、特にコンテンツ事業が顕著な、日本の大手プロバイダーである「@nifty」「BIGLOBE」「So-net」の担当者にお話をうかがった。また、実際に人気のあるコンテンツのほか、担当者お薦めのコンテンツについても語ってもらった。ぜひコンテンツコース選びの指標にしていただきたい。なお、オンラインサインアップで3社のコンテンツコースを登録してみたところ、いずれも数分以内に登録が完了した。

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● ユーザーの自発的なコミュニティや利便性の向上を提供する@nifty

◆ コンテンツコース名称「Combo」 ◆
http://www.nifty.com/cs/

「iREGi」を使い、コーヒーをキロ単位で購入するという金石さん

 ニフティ株式会社が運営する「@nifty」は、10月末の時点で会員数410万人を誇る日本最大のISPだ。月額利用料金なしで@niftyの有料コンテンツが利用できるのが「Combo」。会員数は非公開だが、プロモーションの弱さなどもあり、多いとはいえないという。現在、Comboで使えるサービスは約400種類(@niftyの総コンテンツ数は1,026)。サービス開始時期は2000年2月(当時の名称は「C's」)。登録料は500円だが、12月1日より無料になる。

 Comboの登録はオンラインから行なう。登録には本人名義のクレジットカードと連絡用のメールアドレスが必要。後者は、登録したメールアドレスにオンライン登録ページへの「登録キー」が返信されてくるからだ。登録ページでは、氏名・住所・クレジットカード情報などを入力する。これで、「Combo ID」と仮パスワードが発行される。正式なパスワードは、後日登録した住所に郵送されてくる。

 ニフティ サービス企画部の金石志乃さんと社長室広報課の長水憲行氏にお話をうかがった。

IW編:なぜ、Comboを開始されたのですか?
長水:@niftyのコンテンツには、無料で提供されるチャンネルというものがあります。例えば「~~@nifty」のようなポータルなどです。これら無料サービスを入り口にして、もっと詳しい情報が知りたい人、もっと便利なサービスを使いたいという多くのユーザーに決済機能としてComboを使ってもらおうと。
IW編:「C's」から名称を変更された意図は?
金石:C'sには、3つのC(Contents、Commerce、Communication)という意味があったのですが、富士通系のISPなどとの提携(*)があって「組み合わせる(Combination)」という意味でComboに変更になりました。
IW編:他社の同様のサービスとの差別化は?
金石:他のISPの場合、料金体系の1コースという位置付けが多いと思います。でも、ニフティの場合は、@nifty会員とCombo会員をはっきり切り分けています。むしろ、うちはコンテンツ数が多いので、多くのキャリアやISPのユーザーに使ってもらえたらいいな、という意味でCombo会員があるのだと思います。
IW編:プロバイダーの乗換は意識していない?
金石:あわよくば乗り換えていただこうかな、とは思ってますけど。でも、それは接続料金の変化なども絡みますし。やっぱり良いコンテンツを提供して、使ってもらうのがメインです。
IW編:今後の事業展開は?
金石:もっとプロモーションをやって、認知度を上げていこうと思ってます。また、PCからだけでなく、iモードやモバイル端末などからも簡単に入れるようにもしたいですね。

*) ニフティでは、富士通系列のサブプロバイダーと提携して、それら地域ISPのユーザーにComboを使った全国レベルの情報や決済機能を提供している。現在は、InfoSnow(北海道)やInfovalley(長野)、Webしずおか(静岡)などと試行錯誤をしながら、将来的には提供コンテンツが少ない、系列以外の地域ISPにも展開していくという。


■「Combo」人気のコンテンツ紹介

「InterPot 2」
http://interpot.nifty.com/
 インターネット上で樹木を育てる箱庭ゲーム型コミュニティ。マシンに依存する部分があるものの、ハマるコンテンツとしてお薦め。ガーデニングコンテストを実施したところ、たくさん投資して、お城のような箱庭を作った人もいるという。
 さまざまなイベントが実施されていて、現在進行中のイベントは、InterPotの世界のどこかにUFOが墜落したというもの。調査団による墜落原因レポートが日記形式で更新されており、ユーザーは談話室などで情報収集をしながら墜落したUFOを捜索している。
 デザインなどを本誌連載「今日の気分」の「うるまでるび」が担当している。土地代は1区画あたり300円、タネ代は1粒200円。

「デリポップ」
http://www.nifty.com/delipop/
 イラストカードを使ってメッセージ交換を行なう無料のインスタントメッセンジャー。月に2回程度の割合で新しいカードが登場する。12月には、大物イラストレーターのカードが登場する予定らしい。時期的にクリスマス仕様か?
 カード以外にも1対1のプライベートチャット機能や簡単なお絵描きツールなどが実装されている。なお、本誌連載「文字の海、ビットの舟」のイラストでおなじみの漫画家の青木光恵さんによるコラムカードも。

「iREGi」
http://iregi.com/
 採用店舗数347店のインターネット決済サービス。クレジットカード番号を入力することなく、Combo IDとパスワードで支払いができる。不正利用があった場合、10万円まで補償される「まもるくん」制度もあり、安全で簡単なオンラインショッピングを楽しめる。
 今後出店する店舗は基本的にiREGiに対応する予定。ジャンルはPC・家電から書籍・CD、食品、ブランド品を含めたファッションと多岐にわたる。利用1,000円につき1点ずつ、景品や@niftyの使用権などと交換できる「アット・ニフティクラブポイント」が溜まる。


■金石さんのお薦めコンテンツ

「ギリシャ神話占い・プシュケー」
http://www.nifty.ne.jp/psyche/
「マドモアゼル・愛の恋愛パーフェクトウェイ」
http://www.nifty.ne.jp/mrenai/

金石:私、占いマニアなんです。「プシュケー」「マドモアゼル・愛の恋愛パーフェクトウェイ」というのがあるんですけど、これがよく当るんですよ。昔、別れた人の生年月日をいれてみたら、「うわー、なるほど」って感じで当ったんですよ。経緯とか、別れの原因とか。それ以来、私は「マドモアゼル・愛の恋愛パーフェクトウェイ」は必ずやります。もう、信者ですね。

■長水氏のお薦めコンテンツ

「@nifty保険」
http://www.nifty.com/insurance/

長水:手軽にオンラインで保険に入れちゃう「@nifty保険」ですね。例えば、今のシーズンですとスキー・スノーボードとかですね。旅行に行く前に、オンラインで申し込むとスキー事故などの災害を補償します。旅行やゴルフなどでも使えます。
IW編: パソコン修理保険もありましたね。

長水:あれは画期的な保険だと思います。購入してから何年以内という期間的な制約はありますけど、オンラインでパソコンの状況を調べますし、メーカー補償期間よりも長く補償します。


■@niftyこぼれ話

 12月1日より登録無料になるComboが「Comboご入会キャンペーン」を実施する。2000年12月1日~2001年1月31日までのCombo入会者の中から抽選でデジタルカメラ「SONY DSC-P1」(5名)、「JCBギフトカード」(10名)、「@niftyオリジナルタオル」(50名)をプレゼントする。

☆ ★ ☆

● ユーザーのニーズを汲み上げ、支援サービスを展開するBIGLOBE

◆ コンテンツコース名称「るんるんコース」 ◆
http://www.biglobe.ne.jp/

 日本電気株式会社(NEC)が運営する「BIGLOBE」の会員数は、10月末時点で331万人。このうち、他のISPからの接続でBIGLOBEの有料コンテンツが利用できる「るんるんコース」の会員数は非公開ながら、かなりの数にのぼるという。るんるんコースの開始時期は、BIGLOBE発足当初の1996年6月。コンテンツ数は約350で、9割が有料だ。

 登録は無料だが、18歳以上で、本人名義のクレジットカードが必要。登録ページでは、氏名・住所・クレジットカード番号などを入力するが、メールアドレスを持っていない人は入力しなくてよい。登録完了画面が表示されると、仮パスワードが発行される。正式なパスワードは、後日郵送される。BIGLOBEの登録ページは、初心者用なのか過多とも思えるほど説明が細かい。また、会員専用の情報誌(月額300円)や利用マニュアル(1,000円)の購入もあわせてできる。

「ちゃんとした格好してくれば良かった」とボヤきつつ、キッチリ、ポーズを決める白木氏

 NEC パーソナルサービス事業部販売促進部課長の白木淳氏、コンテンツビジネスグループ主任の荒川邦彦氏にお話をうかがった。

IW編:るんるんコースの位置付けとは?
白木:BIGLOBEのサービスにおいて、ISPビジネスとASPビジネスという想定をした場合、その2つが両輪となって事業を構成しています。こういう構造の中で、るんるんコース会員はASPのユーザーです。
IW編:ASPのユーザーがISPのユーザーにかわるということは有り得る?
白木:るんるんコースユーザーのニーズからして、ISPを乗り換えさせようとしても上手くいきませんよ。我々としては、ISPとASPのバランスをとりながら、相乗効果を発揮させてビジネスの総体を大きくしていくのが方針ですね。
IW編:他社との差別化については?
白木:あまり、他社との競合がどうだ、ということは気にしていないです。インターネット人口を2,000万人として、そのうち331万人がBIGLOBE会員ということを考えれば、彼らのニーズにどう応えていくかという部分は社会的責任かな(笑)
IW編:BIGLOBE開始当初から、るんるんコースを用意していた意図は?
白木:インターネットが次世代社会の大きなインフラになるならば、BIGLOBEは、そこを担っていこうと思って事業をはじめました。そして、インターネットを楽しんで活用していただくということをNECとして提供することは、今でも使命だと思っています。
IW編:BIGLOBEの今後は?
白木:ユーザーの新しいニーズにどんどん応えていきます。他社が違う言い方をしていても、結果的には同じものを目指していると思いますよ。だから、傍から見ると「みんな同じようなことをやってるんじゃないの?」と思われるでしょう。それは、市場の中のポジションがそんなに変わらない上に、おのおの背負っているものが似たようなものだからですよ。
普段は3台のモニターをマルチディスプレイにして使っている荒川氏

 コンテンツの開発を主に行なっている荒川氏は、特にタレント・アーティスト関連を手がける。最近では、ブロードバンド時代を睨んだストリームライブなどを仕掛けている。

荒川:一昔前だと、PCのスペックやインフラが弱く、やりたくてもできないことが多かった。でも、半年以内に動画を含んださまざまなコンテンツが提供できると思います。Webにしても、Flashなどを利用した「重い」サイトが増えてきた。もはや「動き」と「音」がなければタレントさんのサイトとはいえないですね。
IW編:タレント関連事業にBIGLOBEはどのようにコミットするのですか?
荒川:BIGLOBEでは、インフラの支援などを行ないます。むしろ、「BIGLOBEのサービスですよ」ということを全面に押し出さないことが多い。ユーザーにとって、BIGLOBEのサービスかどうかは、必須事項じゃないから。好きなものを選んでもらって、たまたまBIGLOBEのサービスだったという形でかまわないのです。ISPからASPへの変化という段階で、その中間形態としてISPに付加価値を付けようとしています。
IW編:付加価値の部分は、やはりコンテンツですか?
白木:100%コンテンツというよりも、コミュニティー造りを意識しています。ある程度ユーザーを囲ってもそれだけじゃだめで、ユーザーに応えられるインフラとコンテンツをキッチリ提供していかないと。まだまだ広げていかないとだめなんですけど、BIGLOBEの1つのやり方ですね。
荒川:昔は、インターネットそのものが目的だったんですけど、今では道具・手段に過ぎないのです。手段としてCSなどもありますが、双方向で通信ができるのは現時点でインターネットだけですので、コミュニティ造りには最適なものじゃないかなと思います。
IW編:コミュニティ作りのビジネスモデルは?
白木:BIGLOBEは、IMやコミュニケーションツールを提供して自発的なコミュニティの創造を提供するというよりは、趣味・興味などですでに存在するグループに対して、場の提供という黒子に徹し、そこにコンテンツを仕掛けていきます。
紙面の都合で割愛してしまったが、取材に応じてくださった岡田コンテンツビジネスグループ担当課長(中)、井上主任(右)、販売促進部の植松氏

 BIGLOBEユーザーは、他のISPのユーザーに比べて、有料コンテンツを楽しんでいる割合が高いという。これは、コンテンツサービスを他社に先駆けてやってきたという実績、またそこから蓄積された豊富なノウハウに負うところが大きい。例えば、会員限定の月刊情報誌「サーイ・イサラ」(月額300円・発行部数25万部)は、あえて紙媒体でサービスメニューを提供しているだけでなく、ユーザーのニーズを掘り起こすマーケティング手法としてコンテンツ提供者などから高く評価されている。

 今後、BIGLOBEは「ISPとしてのビジネスを成立させながらも、自社・他社のユーザーを問わずコンテンツプロバイダーとしてのビジネスも成立させる」(白木氏)という。


■「るんるんコース」人気のコンテンツ紹介

「スポーツ」関連コンテンツ

BIGLOBE野球コミュニティ
http://yakyu.cplaza.ne.jp/
「中日ドラゴンズオンラインクラブ」
http://yakyu.cplaza.ne.jp/dragons/club/
「よみうり & GIANTSパーク」
http://www.biglobe.ne.jp/yomiuri/
「競馬道 OnLine」
http://keibado.cplaza.ne.jp/
 BIGLOBEは、横浜ベイスターズ、中日ドラゴンズ、読売ジャイアンツと3年連続で1球団ずつアライアンスを組んできた。不思議なことに、組んだところがその年のセ・リーグ覇者になっている。サービス内容は、情報のダウンロード販売、グッズ通販、ファンクラブ支援、インターネット中継と多岐にわたる。
 また、古くから競馬コンテンツにも力を入れている。とくに雑誌「競馬ブック」と共同で展開している「競馬道 OnLine」がお薦め。データのダウンロードや分析などPCやインターネットに相性の良いコンテンツ。単純に馬が好きな人にも都合がよい。

「レインガルド」
http://raynegard.cplaza.ne.jp/
 カプコンと宝島ワンダーネットが共同で開発した現在最も注目のネットワークゲーム。正式開始は12月30日で、ゲーム本体価格4,980円、月額利用料金980円。物語自体は、3ヶ月で1ターンとなっており、6つの国で同時にさまざまなイベントが発生する。特徴はチャットによる会話を中心としたコミュニケーション。世界観やデザインなどが女の子にも使いやすいように設計されている。もちろん、TAISENもあり、ゲーム通も満足の内容だ。BIGLOBE会員はソフトの送料と登録月の利用料金が無料に。

「ドラネット」
http://www.doranet.ne.jp/
 小学館と提携して小学生向け学習コンテンツを提供。「家族会員サービス」やコミュニケーション機能などを充実させ、学習だけでなく家族全体でインターネットを楽しめる。親からは、学習だけでなく子供のパソコンやインターネットのスキルを磨かせる場としての期待も。子供たちは、チャットなどを使って、自主的にコミュニティを作り「〇〇係は、XX時から、~~のテーマで会議をやるよ」といった活動を行なっているという。


■荒川氏のお薦めコンテンツ

「Mr.Children Concert Tour Q ALTERNATIVE」
http://mr-children.biglobe.ne.jp/

荒川:Mr.Childrenのスペシャルサイトですね。これは、BIGLOBEの入会キットCD-ROMと連動していて、それを使って会員になったユーザーは「mr-children.org」ドメインのメールアドレスが貰えます。
 また、このサイトは、BIGLOBEの会員だと、より「お得」な情報をみられますよという作りなっていて、15秒くらいのメンバー出演の動画のほか、コンサートチケットの先行予約などができます。
 さらに、CD-ROMのパッケージには、2001年度のカレンダーが入っていて、メンバーの誕生日などが記されています。わざわざスペースを少し空けるようにしていますので、サイトでコンサートスケジュールなどを調べてもらって、記入してもらおうかなと(笑)

■BIGLOBEこぼれ話

 Mr.Childrenのサイトでは来年2月にコンサートのライブ中継(有料)を予定。また、年末までに大物アーティスト2組のストリームライブも予定しているそうだ。

☆ ★ ☆

● はじめに魅力的なコンテンツありきのSo-net

◆ コンテンツコース名称「こんてんつコース」 ◆
http://www.so-net.ne.jp/cc/

 ソニーコミュニケーションネットワーク株式会社が運営する「So-net」は、前述の2社と少々毛色が違っている。多くのISPが、「接続」から「コンテンツ」の提供にシフトしてきている中で、So-netは「まずコンテンツありき」なのだ。今年で5周年を向かえるSo-netの会員数は10月末時点で149万人。提供コンテンツ数は237で、その半数が有料だ。

 So-netの場合、コンテンツだけを利用する会員には「こんてんつコース」を料金体系の1つとして提供している。これは、So-net設立当時から「情報会員」という名前で提供されていたが、同じSo-net会員なのに「接続会員」と「情報会員」を区別しているようで混乱したことから、「こんてんつコース」に改称された。

 こんてんつコースの登録には、18歳以上で本人名義のクレジットカードとメールアドレスが必要。オンラインサインアップ画面は、入力フォームやラジオボタンの使い方やクレジットカードの画像を使った説明など、非常に初心者向けに作られている。So-netの場合、自分の好きなユーザーIDとパスワードを申請できる。登録完了後、通知のメールが送られてくる。なお、オンライン決済機能「Smash」を利用するには、後日郵送されてくる「Shopping Access Key」を最初に入力しなければならない。

広報の馬渕さん(左)とSo-net立ち上げからずっとコンテンツ事業を見てきた仲西氏

 So-net 経営戦略セクション広報担当チーフの馬渕孝子さんとマーケティング&プロモーションプラッツ メディア編成プロモーション担当チーフの仲西康裕氏にお話をうかがった。

IW編:So-netの生い立ちについて教えてください。
馬渕:So-netは、インターネットにつなぐだけの入り口ではなくて、そこでユーザーに楽しんでもらえる場を提供するというところから出発しています。コンテンツとして中身を非常に重要視するのが設立当初からのやり方です。
仲西:我々が始めた頃は、パソコン通信という既存のものがあって、インターネットは「これから」の「わけのわからない」ものでした。ユーザーにとって「つなぐ」というのはイメージしにくい。じゃあ、楽しいものを見せなきゃ。インターネットならではで、かつソニーらしいものを出さなきゃなりませんでした。
馬渕:私達は常に、1998年までのキャッチフレーズ「それは楽しいインターネット」の通り、コンテンツを重視して、ユーザーの満足を高める。そしてすべての人に使ってもらおうと思っています。
IW編:これからの展開は?
馬渕:今は、コンテンツ提供者およびユーザーの満足できるコンテンツがほぼ出揃ったかなという感じです。今後は、やたらに数を増やしていくよりは、既存のコンテンツを一層充実させていく方向です。
仲西:開始当初、「PostPet」をはじめ、自分達がやりたいもの、楽しいものに特に力を入れてきたことが結果的に良かったと思います。このやり方は正しかったと思いますし、今後もこの部分は忘れずにやっていきたいと思っています。
IW編:「プロデューサー制」ですね?
仲西:はい。自分が面白いものじゃなきゃ、だめだと思います。
馬渕:今後もSo-netならではの楽しいコンテンツ、So-netでなきゃできないコンテンツを独自に提供していきましょう、というスタンスですね。
IW編:ところでSo-netのコンテンツは全て独自制作ですか?
仲西:全てではないです。IP(Infomation Provider)と呼んでいる企業などと提携して、課金の仕組みを提供しているものもあります。とはいえ、占いなどは同じ占いが複数のISPで提供されていることが多く、まったく同じだとつまらないので、プロデューサーが画面のデザインやメニュー構成などをアレンジして独自色を出しています。

■「こんてんつコース」人気のコンテンツ紹介
So-net社内のフロアの一角を埋め尽くすPostPetグッズ

「PostPetPark」
http://www.postpet.so-net.ne.jp/park.html
 愛玩メールソフト「PostPet」と連携した会員制サービス。毎月期間限定のイベントが開催されたり、「おやつ」や各種プラグインなどのダウンロード、ゲームなどが楽しめる。ユーザーの交流の場として掲示板などが提供されている。月額300円

「Party Crew」
http://www.so-net.ne.jp/partycrew/
 オンラインゲームのポータルサイト。「インターネットゲームをもっとみんなのものに」を合言葉に1999年3月より開始。麻雀ゲームには1万人以上の会員がいる。この夏、ユーザー主導で雀荘を借りて「100人オフ会」を実施。井手洋介名人がゲストで登場したらしい。

モバイルコンテンツ
http://www.so-net.ne.jp/guide/mobile/
 NTTドコモのiモード公式メニューでゲーム「養殖中華屋さん」や「ポストペット情報」などを展開。携帯電話からもSo-netに入会できる。月に1コンテンツ程度の割合で次々と新コンテンツが発表されるほか、EZWeb・J-SKYにも対応予定(一部対応済み)。最近のお薦めは「芸能トッてだし!」。芸能関連の記者会見などの様子を独自に収録した音声で配信している。


5周年。So-netはヤル気です!
■馬渕さんのお薦めコンテンツ

「養殖中華屋さん」
http://www.so-net.ne.jp/chuka/

馬渕:Webとiモードに対応した中華育成ゲームで、ライチからシュウマイ、ワンタンと育てていきます。店主と雇われ人が協力して遊べるのですが、コンセプトとしては恋人同士で「ラブラブで作りましょう」というものです(*)。
 育て方によって、いろいろな中華に変化していきます。もちろん「隠し中華」も存在しますし、クリスマスには限定中華も登場する予定です。また、iモード版とWeb版は連携しています。

(*) 店主1人でも遊べる。店主は月額300円(雇われ人は無料)。


■仲西氏のお薦めコンテンツ

「SHEEPDOG」
http://www.so-net.ne.jp/sheepdog/
「Sledge Blow」
http://www.so-net.ne.jp/sledgeblow/

仲西:開始当初、採算が取れるのか不安視されたParty Crewですが、最近では軌道に乗っています。その中でお薦めは、現在βテスト中の「SHEEPDOG」ですね。12月中にβテストが終了する予定で、1月にはパッケージで売り出されると思います。私はMacintoshユーザーで遊べないのですが(*1) 、So-net社内でも密かなブームになっているオンライン羊放牧ゲームです。
IW編:他にもたくさんゲームがありますよね?
仲西:11月15日に正式サービス開始になった対戦ゲームの「Sledge Blow」(*2)もお薦めですね。これはアスキーと共同で制作したターン制ネットワーク対戦です。ネットワークゲームというとコアなファンを対象にしているものが多いですが、これは一般受けを考えた造りになっています。

(*1) 現時点ではWindows版のみ
(*2) 月額利用料金300円


■So-netこぼれ話

 So-netでは、12月4日から来年1月15日まで、Web上にバーチャルホテル「Hotel So-net」を開設し、クリスマスプレゼント企画やグリーティングカード、無料ゲームなどを提供する。100円のチャリティ募金に賛同したユーザーは、ミニホームページ「Hotel So-net客室」に宿泊できる。最初はガランとした内装だが、ほかの部屋に出かけていったり人を呼んだりすると、ボーイがさまざまな「飾り付け」を持ってくるという。年末年始には、スペシャルイベントも用意されているらしい。
http://www.so-net.ne.jp/hotel/



 今回取材を行なったISPは、単なる接続事業プロバイダーとしてだけでなく、コンテンツプロバイダーとしての「厚み」を持ち始めている。しかし、アプローチはそれぞれ特徴的だ。パソコン通信「NIFTY-Serve」時代から続く「フォーラム」、インスタントメッセンジャー「デリポップ」などの「足廻り」を提供し、ユーザーの手による自発的なコミュニティや利便性の向上を提供する@nifty。趣味・興味などによって既に存在しているコミュニティに対して、ニーズを汲み上げ、さまざまな支援サービスを展開するBIGLOBE。はじめに魅力的なコンテンツありきでユーザーを集めるSo-net。

 事業形態の地平の両端にISPとASPをとるならば、ISPよりの@nifty、中道のBIGLOBE、ASPよりのSo-netという図式は、ユーザーが抱く企業イメージとそれほどかけ離れたものではないだろう。

 しかしながら、3者3様のアプローチをしていても、目指すところは一緒だ。新しいワインは穴のあいていない皮袋に入れるように、また新しい皮袋には美味しいワインが似合うように、コミュニケーションインフラとコンテンツは、どちらか一方だけが立派でもユーザーは満足しない。これから生き残っていくプロバイダーとは、自社・他社といった枠に捕らわれず、広くユーザーの声に応えるべく進化を続けていくところだろう。

(2000/11/20)

[Reported by okada-d@impress.co.jp]


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